続・次世代エコカー・本命は?(97)

一般的に言って、「必要なものが必要な時に必要な量だけ」手に入れば、それに越したことはない。何も余分なものを持つ必要がないのである。これを実施するためには、色々な仕掛け・仕組みが必要となるのだが、真っ先に思い浮かぶのは、「必要なものが必要な時に必要な数だけ」供給されるように、後工程にその情報を知らせることである。

 

後工程は、その情報をもとに必要なものを必要な量だけ用意して、その時に前工程に持ってゆき、決まったところに納める。そうすれば前工程は必要なものがある訳なので、生産は滞りなく続けられることになる。

 

今回は地震によって部品工場の生産ラインが破壊されて、ものが出来なくなった。従って必要なものが作れなくなってしまったのであるから、当然必要な時に必要なだけ届けることが出来なくなる。

 

後工程・今回は車両組立工場では、組み付ける部品が届けられなくなってしまったので、当然在庫は持っていないので組み付ける部品が無くなり次第、組み立てラインは止まることになる。これは当然なことです。

 

この仕組みで動かしている以上、前工程からものが届けられなくなれば、後工程の製造ラインは停止するのはごく自然な事です。何があっても製造ラインが止まらないように、余分な部品を持っていれば、いわゆる沢山の在庫を持っていれば、それだけで在庫資金が嵩みますし、在庫場所も必要となり、その物の先入れ先出しなどの管理や、整理整頓・数量管理、または誤欠品の防止などに余分な労力が必要となる。

 

だから在庫は極力少なくして、ジャストインタイムを実行することが大切なこととなります。これはたまに起こる災害などによる生産ラインの停止による損害などと比較しても、はるかに大きい利益をもたらすものです。もちろん生産ラインの停止に対しては、出来る限り早く復旧させることは、大切である事は言うまでもありませんが、災害のために生産ラインが壊れれば、後工程の生産ラインが止まることは当たり前なのです。反対に後工程が止まらなければ、どこかにおかしいこと(ムダ)がある筈です。

 

 

鈴村道場(2):マスコミが言う「トヨタ生産方式は重大災害に弱い」は本当なのか

201605311000分 更新

トヨタ生産方式の達人・鈴村尚久氏による連載コラム「鈴村道場」。今回は、重大災害による工場停止をテーマに、製造業が重大災害に対してどう取り組むべきかについて解説する。

[エフ・ピー・エム研究所 鈴村尚久/構成:株式会社アムイ 山田浩貢MONOist]

http://www.itmedia.co.jp/author/210858/

 

 20161月の愛知製鋼工場事故による生産停止、そして同年4月に発生した熊本の震災による生産停止が記憶に新しいですが、グローバル化の進展により世界各国で重大災害が起こる頻度は年々増加しております。もはや重大災害は起こるものとしての備えが必要であり、自動車をはじめ日本の製造業が重大災害に対してどのように対応すべきかについては大変重要な事柄だと思います。

 今回は、重大災害による工場停止をテーマとして、製造業が重大災害に対してどう取り組むべきかについて解説します。

重大災害発生に対し、工場停止することはいけないのか

 トヨタ系の工場が停止するとマスコミが鬼の首を取ったかのごとく「トヨタ生産方式の弱点が露呈した」と指摘します。結論から言いますとこれは「いけないこと」ではなく、「健全性をあらわしている」のです。重大災害が起こった時に止まらないのであれば常に過剰な在庫を保有していることになります。何年に1回起こる災害に対し、生産余力の確保の目的で在庫を持つために掛かる付帯費用は莫大になります。

 ですが、普通の会社は物を倉庫にしまう。次にそこから物を払い出す。そのために自動倉庫をITで制御する。なぜ必要になるのか? それは不必要なものを買うからです。トヨタ生産方式では、例えば組み立てメーカーにタイヤを運ぶ際にはライン脇までトラックが運びます。これを同期化といい、今は当たり前のこととなっています。JIT(ジャストインタイム)1つの形態です。

 エンジン、トランスミッション、エアコン、タイヤ、シートなどは同期化しており、順序引きをしています。この方式だと倉入れ、倉出しがいらない。従って、「倉庫がいらない」→「管理費はゼロ」→「キャッシュを蓄える」ことができる。また、在庫を抱えるとシリーズの打ち切りの時に膨大な工数をかけて数を数えて在庫消費ポイントのコントロールをすることになってしまいます。

 トヨタ生産方式では余分な在庫は保有しないことを前提とした考え方にのっとっています。言い換えますと、トヨタ生産方式では「非常時はラインを止めろ」というのが正しいのです。それは原因を探って皆が認識し&必死で対策するためにやっています。非常時に現地現物を見て、真の要因を明確にして確実な対処を行うためであり、再発防止につなげることが最終目的なのです。ただし、勘違いしないでいただきたいのは「ラインが止まった」でなく、「ラインを止める」ということです。

図1
1 トヨタ生産方式の考え方(クリックで拡大)  

(続く)