続・次世代エコカー・本命は?(106)

圧巻の日産自動車


 もっか、自動運転の圧巻は日産である。(2015)1029から電気自動車「リーフ」がベースの自動運転車の走行を公開した。トヨタホンダ高速道路での走行だったのに対して、より難易度の高い一般道での自動運転だ。

 私は、自動運転車両の開発責任者である日産電子技術・システム技術開発本部ADASAD開発部ADAS戦略企画・統括グループ部長飯島徹也氏自らが運転する自動運転実験車に試乗した。コースは、江東区のお台場付近の一般道の17キロだ。

 飯島氏がセンターコンソールに設置された「パイロットドライブコマンダー」というボタンを押すと、実験車は自動運転に切り替わった。自動運転とは気づかないほどスムーズな走りだ。速度メーターを見ると、49キロを示している。左車線を並走するバイクの追い抜き、さらには同車線からの割り込みも自動運転で減速しながら難なくやり過ごしていく。左折の途中で車両左側の横断歩道に人が入ると、これも認識して車はストップし、人の通過後に再発進した。
 
 周囲車両とのコミュニケーション、障害物の検知などを手動運転よりも確実にこなしながら、自動運転走行を続けるではないか。信号も黄、赤をハッキリ識別する。感動ものだ。

「ハイマウントに8つ、ローマウントに4つの12台のカメラ5つのレーザースキャナーが搭載され、車両の周囲360度の状況をリアルタイムでモニタリングしているんです」と、両手を広げたポーズで運転席に座る飯島氏は説明する。

 50メートル、80メートル、150メートルと焦点距離の異なるカメラが搭載され、障害物のほか、車線や信号、標識などを認識することが安全な自動運転につながっているのだ。もっとも先端的なのは、シリコンバレーASC製のレーザースキャナーだ、と飯島氏は続ける。

「このレーザースキャナーは、世界初の搭載です。高速であれば車間距離が広がりますから、1メートル単位でいいのですが、一般道では車との距離が詰まってきて、例えば横のバイクとの接近距離が1メートルを切ることもある。そうなると、23センチで距離を測りたい。それができるのが、このレーザースキャナーなんですね」
 
 実際、自動運転車が走行中に減速し、軽くブレーキが作動する場面があった。カメラが歩行者を認識したためである。この自動運転車両の一台の開発費用は、約1億円だという。私は、自動運転車の実用化は意外と早く実現するのではないかと感じた。

 

 日産は、自動運転車を三段階を踏んで市場に導入する計画だ。まず、16年に高速道路の同一車線上での自動運転システム、18年に危険回避や車線変更を自動的に行う、複数レーンでの自動運転技術導入。そして、20年にはドライバーの介入なしに、十字路や交差点を自動的に横断できる自動運転システムを搭載した車の発売を計画している。

日本の先端技術


 日本の自動車メーカーが自動運転の分野で世界をリードする存在なのは、いったいなぜなのか。

 第一に、日本には世界に冠たる半導体人工知能、センサー、カメラなど、最先端技術がある。それを今回の東京モーターショーで見せつけた。指摘するまでもなく、現代の車はカーナビなどの情報収集にとどまらず、安全確保に電子機器をフル活用することが求められる。いまや電機メーカー、ITメーカーなくして車そのものが成り立たない。ましてや、自動運転となれば余計にそうである。

 であるとしたならば、日本の電機メーカーの出番は、限りなく増えてゆく。それどころか、米国の自動運転をリードするグーグルに象徴されるように、日本でも1113日立が自動運転の実験車のテスト走行を行った。

 今回の東京モーターショーには、日立オートモティブシステムズ三菱電機などの電機メーカーがブースを構え、さまざまな電子車載機器を出展していたのが目を引いた。

 日立オートモティブシステムズ会長兼CEOの大沼邦彦氏は、モーターショーのプレスブリーフィングの席上、安全性に加えて、省エネ、乗り心地に配慮した「スマートADAS(先進運転支援システム)」を開発中だとして、次のように説明した。

「走行中、カメラの画像認識や地図情報をベースに必要な駆動力を予測して、エンジンを停止したり、また、ステアリング、ブレーキなどを制御して、スムーズな挙動で快適性を向上するシステムを提案していきます」

 日立グループ159月から、市街地での自動運転走行を視野に、米国ミシガン大学キャンパス内の「Mcity」において、この「SMART ADAS」の実験を行っている。「Mcity」は、信号機や標識などのほか、雪や氷などの過酷な路面を含めて、実際の市街地に近い環境が再現されるなど、自動運転車両が市街地走行時に直面するさまざまな状況のシミュレーション施設が整備されている本格的な実験場である。

 

多数のメーカーが注力


 三菱電機は、自動運転のコンセプトカー「EMIRAI3 xAUTO」を出展し、周辺監視技術、人工知能技術、高精度位置把握技術を用いた、リモコン式自動駐車、夜間対応自動ブレーキ、車線維持、車間通信合流支援など、技術の展開例を披露した。また、高度運転支援技術を紹介するコンセプトカー「EMIRAI3xDAS」では、3次元ヘッドアップディスプレイなどの表示装置、視線移動低減ヒューマンインターフェイスなどを紹介した。三菱電機専務執行役の大橋豊氏は、こう語った。

三菱電機自動車機器事業は、80年の歴史があります。高度な予防安全技術、自動運転、高度運転支援に向けて、より安全で安心なシステムを実現します」

 モーターショーにこそ出展しなかったが、パナソニックは車載事業の売上高を18年度に21000億円とする目標を掲げている。

 例えば、強みのセンシング、画像処理技術を生かして、ADAS事業の強化を打ち出している。また、車の電子制御システムをサイバー攻撃から守る技術の開発にも着手している。車載情報端末の起動時に不審な動きを1秒以内に検知する技術で、ハッキング対策に有望といっていい。さらに、149月、スペインの自動車部品大手フィコサ・インターナショナルを買収したが、これは自動運転車に搭載する電子ミラーを共同開発するためである。

 ソニーは、自動運転技術の中核部品である画像センサーの生産に乗り出した。現在の一般的な車載用センサーとくらべて10倍の感度をもつ車載カメラ用センサーを開発、半導体子会社の熊本工場15年後半から量産を開始する計画だ。

「将来の自動運転車の普及をにらみ、自動車分野を強化する」と、151月に開かれた米家電見本市「CES」で、ソニー社長の平井一夫氏は語っている。

(続く)