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続・次世代エコカー・本命は?(112)

社長室が「決裁」の場から「相談」の場に

「決裁ではなく相談だよと言い始めた瞬間に、この辺の人たちが直接社長室に来るようになった」(写真右はプリウス開発責任者の豊島さん)

:それで何が変わったかというと、今まではそれぞれの部署の肩書の高い人が私に了解を取りに来ていたんですね。例えば私にだったら、副社長とか専務とか、そういう人です。書類を持って、「社長。これお願いします」と。

F:どうしても仕組み上そうなりますよね。

:そう。「決裁」ならば仕組み上そうならざるを得ない。でも「相談」ならどうでしょう。相談だよと言い始めた瞬間に、この辺の人が直接社長室に来るようになった。

豊田社長は傍らに座るプリウスの豊島さんの肩をポンポンと叩いて、「なあ」と言った。
豊島さんは至極当然という風に元気よく「ハイ」と答える。

F:それで良いんですか。何というか、職位とか序列とか、会社にはそういうものが有るじゃないですか。特にトヨタのような大きな組織には。

:良いんじゃないですか。どんどんやって良いですよ。さっきの労使懇談会にしたって、実際に挨拶文を書いている人間が来るんですよ。書いている人が直接来る。そのほうがずっと良いじゃないですか。

F:確かに効率は良いのですが、その間の部長さんとか本部長さんとか、自分をすっ飛ばされて不快に思う人も出てくるのではないでしょうか。

:その辺が面白く無い人は居るでしょう。そうした方がスピーディーで上手くいく場合も有るし、そうで無い場合もある。多少時間は掛かりましたが、それでもやはり社長室が「決裁」の場から「相談」の場に変わったことは大きかった。

F:決裁から相談の場へ。なるほど。

「止めるのが私の仕事」

公聴会の事を覚えていますか。

F公聴会……あの、米国議会での公聴会ですか……?

:そうです。あの公聴会

これまたセンシティブな話になって来た。
豊田社長はインタビューの途中で、突然2010224米下院監視・政府改革委員会に於けるリコール問題に関する公聴会のことを話題に出した。「全てのトヨタ車には、私の名前が付いている」と述べ、居並ぶ下院議員諸侯の前で腹を括って見せた、あの公聴会だ。
(注)この公聴会については2010.3.17~の当ブログ「番外編・プリウス急加速問題」を参照の事。

:あの時にはっきりさせたことが有ります。私の役割は何なのか。社長にはどんな役割があるのか。たったの二つです。ひとつ目は「最終的に誰も決められないことを決めること」。そしてもう一つが、「その責任をとること」です。

F:誰も決められないことを決める。そしてその決めたことの責任を取る。

:そう。それがリーダーの役割です。そして「誰も決められないこと」とは、得てして「やめる」ことです。何かをやろうとすること、何かを始めることは、放っておいても誰かが決めて行くものなのです。

 しかし長年やってきたこと、続けてきた何かをやめる決断をする事は誰にも決められません。自分の決定によって、誰かが困ったり傷付いたりする。そういうことを考えると、人は決断できなくなってしまうものなのです。

F:確かにそうですね。人から恨まれたくないですし、止めるのはできれば先延ばしにしたい。

:ええ。それでも止めるのが私の役割です。NUMMIトヨタGMが合弁で設立した自動車製造会社)もやめたし、F1もやめた。全て私が社長になってからの決断です。

F:レース好きの社長からすると、F1撤退は正しく断腸の思いだったでしょうね。

NUMMIだってそうです。何しろ自分のいた会社ですから。ですが会社を生き抜かせるためには止むを得ない決断でした。自分自身が恨まれるとか、自分自身の立場がどうだとかいうことに構っている余裕もなかったのだと思いますね。当時は。

F:そういうことを積み重ねてこられて、「トヨタが変わり始めた」と社長ご自身が実感されたのはいつ頃からですか。ああ、何となくトヨタは自分がイメージする会社になってきたな、と思うようになったのはいつ頃からですか。

いや、それは今でも別に実感はしていないですけどね(笑)

F:そうですか(笑)

 と、ここまで来てボチボチ会社に行く時間……という言い訳は今回通用しませんね(笑)

 これからロスに移動しますので、そろそろ切り上げないと飛行機の時間に間に合わないのです。何しろアメリカの荷物検査はやたらと時間が掛かりますからね。早めに空港に行かないと。

 今週は速いペースで連続でお届けしようと思います。
 それではみなさまごきげんよう。

「正直に言うと、ほんとどこまでやるのって…。」

こんにちは、ADフジノです

ついに念願かなって、豊田社長のインタビューが実現できました。このような怪しげなコラムが正面きって取材の場を得られるはずもなく、いろいろとあれこれ手をつくし、尽力くださったトヨタ広報部の皆様にこの場を借りて御礼もうしあげます。

ところで、数週間前のあとがきで、日本市場にディーゼルが増え始めている現状について書いたところ、「欧州ではディーゼルによる大気汚染が問題になっているのに、ディーゼル車を勧めて良いのか?」というご意見をいただきました(詳細はこちらからhttp://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/194452/072900070/?P=5#articleReview)。

たしかにディーゼル車の割合が5割を超えるというロンドンやパリなどでは、一部車両の通行制限やロードプライシングなどを実施しています。都市部の渋滞緩和や大気汚染の減少が狙いですが、その理由の1つにはディーゼル車を普及させていくなかで、ガソリン車に比べて排ガスの規制が遅れていたという事実がありました。しかし、2000年以降、欧州の排ガス規制は以下のように変遷しています。

(単位:mgkm

近年欧州では、ディーゼルの規制が一気に進み、例えばNOx(窒素酸化物)の排出量は15年前のおよそ6分の1にまで規制され、ガソリン車とほぼ同等にまでなっています。日本でも石原都知事時代のディーゼル車の黒鉛、煤に関する問題提起を機に、ディーゼルエンジンはもとより、硫黄分を除去するなど軽油そのもののクリーン化も進み、“クリーンディーゼル”という言葉も生み出されました。

いまや日本のポスト新長期規制は、ある部分ではユーロ6以上に厳しい排ガス規制といいます。したがって、ユーロ4や5までにしか対応していない車両がまだ多く走っている欧州と、現在はポスト新長期をクリアしたディーゼル車のみが販売されている日本とを一緒くたにしてしまうのは、少し事情が異なると思います。

このタイミングでちょうどマツダアクセラをマイナーチェンジし1.5リッターのディーゼルエンジンを搭載したモデルを設定したというので取材に行ってきました。試乗インプレッションは1.5リッターディーゼルデミオオーナーであるY田さんの先週のコラムを参考にしていただくとして、マツダディーゼルエンジン開発のエンジニアにインタビューすることができたので、その模様を少しお届けします。

マイナーチェンジしたアクセラ。フロントやリアバンパーの形状が変更され、モデルチェンジ前よりも洗練された印象に。目力も強くなった

エンジン性能開発部主幹の森恒寛さん

ADフジノ(以下、F) 今度のマツダディーゼルエンジンには「ナチュラル・サウンド・スムーザー」とか「ナチュラル・サウンド・周波数コントロール」とか、あまり聞いたことない技術が取り込まれているようなのですが、そもそもこれは何なのですか?

森さん(以下、森) ディーゼルエンジンはノック音をはじめ音がうるさいという課題がありました。この問題を解消すればディーゼルエンジンの魅力はもっと高まる。でも、1分間に何千回転もまわっているエンジン内部で、何が要因で音が起きているか当初はわかりませんでした

:そりゃエンジン内部は見えませんよね。でも最近はセンサー類が発達しているから簡単に測定できると思いきや

:いえいえ、そうはいきません。たしかにいろいろと計測していく中で要因は、シリンダー内部ではなく、クランクシャフトでもないとか、おおよその想像はついていたんです。でも決定的な証拠が見つけられない

:それがどうして答えに辿りつけたのですか

:われわれの開発チームに、偶然にも計測技術のプロがやってきたんです。どうにかして、音の原因を見つけられないかと唸っていたら「それなら測れると思いますよ」って、本当にできてしまった(笑)。なんとエンジンが稼働状態でパーツの振動や伸縮を計測できる測定装置を作ってしまった。そして、音の原因がピストン付近の共振にあることを突き止めたんです。

(続く)