トヨタは敵(VW)に塩を送ってしまったことになったわけだ。2011年のVWのトップも、東日本大震災の影響によるものであり、丁度2016年の原因と一部似通っている。
「敵(VW)に塩を送った」と言うことは、2007年VWの社長となったマルティン・ヴィンターコーン社長が、その翌年の2008年に中期経営計画「ストラテジー2018」を発表して、2018年までに一千万台を達成してトヨタを抜く、と拡大路線を宣言していたからである。結局この目標はトヨタサイドの躓きで2年早く達成したことになるのだが、しかしマルティン・ヴィンターコーン社長は、2015.9.25に、排ガス不正の責任をとって辞任しているから、この栄誉には浴することはなかった訳だ。2016.5.5の「続・次世代エコカー・本命は?(24)」を参照のこと。
VWと言えば、2015/1~6月の世界販売台数で、初めてトヨタを抜きトップに立った矢先に、ディーゼルエンジン車に排ガス規制を逃れるために、違法ソフトを搭載していたことがばれてしまい販売が減少しトップにはたてなかった。この件については、2016.4.29~の「続・次世代エコカー・本命は?(20~)」を参照願うが、両社の世界販売は次のようになっている。
The Smallest digital TV station in the world.ポール神田敏晶
自動車メーカー世界ランキング 2016
by Toshiaki Kanda · 2016年05月05日 木曜日
https://4knn.tv/world-car-maker-ranking/
によると、
2014年 2015年 2016年
トヨタ 1023万台 1015万1千台 1017万5千台
VW 1014万台 993万0千台 1031万2千台
差 + 9万台 +22万1千台 -13万7千台
VWは2015年は排ガス不正の影響をもろに受けて、一千万台の大台も割ってしまっている。年・前半には2万台ほどトヨタを抜いていたのであるが、後半排ガス不正による販売減で大幅失速したと言った塩梅であった。
数字の上では中国での販売数の差が大きくトヨタが後れを取っているが、欧州を除く地域ではトヨタが勝っているので、必ずしも中国の差とは言い切れない。結局は事故で生産を停止した18万台の減産が直接の原因であろう。
次の記事は、自動車評論家としては早とちりの感もあるが、一般的なものの言い方を現したものである。
自動車
http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20170124-OYT8T50037.html?page_no=1
トヨタが独VWに「世界一」の座を奪われたワケ
モータージャーナリスト 御堀直嗣
2017年01月24日 12時00分
独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の2016年の世界販売台数が、グループ全体で1031万台に達し、前年まで4年連続で首位だったトヨタ自動車(1009万台の見通し★)を抜いて、同社初の世界一に立つことが確実になった。15年秋に発覚した排ガス不正問題で経営の根幹が大きく揺らいだVW。にもかかわらず、なぜ同社はトヨタを逆転することができたのか。モータージャーナリストの御堀直嗣氏が分析する。
★実際には1017万5千台となった。
不正発覚の翌年に販売台数伸ばす
VWでは15年9月、自動車業界を揺るがす重大な不正事件が発覚したことはご存じの通りだ。VWがアメリカで販売しているディーゼルエンジン車について、排出ガス検査の時には規制値をクリアするように作動し、顧客が実際に運転する時には規制値以上の有害物質が排出される装置が取り付けられていたというものだ。
この問題を巡って、VWと米環境当局が昨秋、不正車両を保有する顧客への補償などにVWが約147億ドル(約1兆5000億円)を支払うことで民事上の和解に合意した。今月11日には、VWが刑事責任も認め、罰金など約43億ドル(約5000億円)を支払うことで米司法省と和解したと発表した。
これと同じ日に、米司法省がVWの幹部6人を起訴する事態にもなっている。さらに17日には、ドイツの裁判所が、不正対象となった車両の所有者が求めていた購入代金の返還請求を認め、VW側に約2万6500ユーロ(約320万円)を支払うよう命じている。
このように、VWは排ガス不正問題で経営的に大きな打撃を受けた。だが、16年の世界販売台数を見れば、VWは前年比3.8%増の1031万台に達し、トヨタを抜いて世界一となることが確実となった。不祥事発覚の翌年にもかかわらず、VWはなぜ販売台数を伸ばすことができたのか。その理由を、自動車メーカーとしてのモノづくりと、消費者の意識の面から考えてみたいと思う。
(続く)