続続・次世代エコカー・本命は?(34)

そしてもう一つ。それは4代目プリウスの販売不振、と言うほどでもないが、2万台割れだ。

 

 

4代目プリウスは、なぜ早々に首位陥落したか

ハイブリッド車絶対王者ではなくなった

前之橋 三郎 :自動車業界ウォッチャー

20161220

 

登録車販売でプリウスが首位から陥落したのはなぜなのか(撮影:尾形文繁)

日本自動車販売協会連合会が発表した11月の新車乗用車販売台数ランキング(軽自動車除く)で、日産自動車のコンパクトカー「ノート」15784台を販売し初の1位を獲得した。13333台で次点だったトヨタ自動車の「プリウス」を抑えた

4代目プリウスが首位から陥落

日産が国内の登録車販売で月間トップを獲得したのは「サニー」以来、30年ぶり。このニュースは自動車業界内外に大きな驚きを与えたが、逆の「サプライズ」も見落としてはならない。昨年末に全面改良(フルモデルチェンジ)し、今年に入ってから単月トップを守り続けていた4代目プリウスが早々に首位から陥落したことだ。

もはや説明の必要がないかもしれないが、プリウスは車を運転する人はもちろん、そうではない多くの日本人の間でも名前が知られているハイブリッド車の代名詞的存在だ。エンジンとモーターを併用して走る世界初の量産ハイブリッド車としてトヨタ1997年に初代を世に送り出し、現行4代目はカタログ値ながら最高40kmL(ガソリン1リットル当たりの走行距離、JC08モード、以下同じ)という高い燃費性能と斬新な内外装デザイン、安全技術をはじめとする先進的な装備の数々などを引っさげて2015年末に登場した。

エネルギー環境への意識が高まる中、近年のプリウスは同じくハイブリッド専用のコンパクトカー「アクア」と並び、トヨタの国内販売の主軸。高級車ブランド「レクサス」を除くトヨタの国内販売4系列(トヨタ店、カローラ店、ネッツ店、トヨペット店)のすべてが取り扱っている。圧倒的な強さを誇るトヨタの国内乗用車販売の総力を結集して売っている、と言ってもいいほどの看板車種だ。


販売苦戦といっても1万台以上は統計上は販売しているのだが、その中身も気になるところだ

先代の3代目プリウスは商品の魅力に加えて、強力な販売網を武器に20095月のデビューから201012月まで20カ月連続で、乗用車車名別販売ランキングの首位に立ち続けた。一方、4代目プリウスその半分の期間となる10カ月しかトップを守れなかった。もちろん月販1万台超はまぎれもない大ヒット車ながら、新車効果がまだ一巡していない中で意外な展開でもある。いったいなぜなのか。

日産が行ったマイナーチェンジが影響している

まず、日産が112にマイナーチェンジ(一部改良)したノートが大きく台数を伸ばしたことが挙げられる。

東洋経済オンラインが森口将之氏執筆による「日産『ノート』が急にバカ売れし始めた理由」1214日配信http://toyokeizai.net/articles/-/149276?page=1)で詳しく解説しているが、ノートは発電用のエンジンを搭載し、モーターの電力で走行する新開発のパワーユニット「e-POWER」を導入した。これはシリーズ式と呼ばれるハイブリッド車の一種でもあり、その特性を生かした出足と燃費の良さに加え、コンパクトカーセグメントにハイブリッド車をラインナップしてこなかった日産の空白を埋める存在として、日産ファンへの訴求になっている。

ただ、「2015年度で月販平均約8000台のクルマが、改良発売した月に15000台へ登録が増えた理由を、ユーザーへの販売が好調だったということだけで説明してもいけない。別の仕掛けもあったはずだ」という業界関係者の見方もある。それは日産がレンタカーや販売店の試乗車向けにも少なくない数の新型ノートを一気に登録したとみられる動きだ。

筆者はある自動車販売業者から、「11月の統計結果が出たころに札幌ナンバーのノートのレンタカーが首都圏某所の中古車販売店のストックヤードに結構な台数が置いてあったのを目撃した」という情報を聞いている。全国の日産系新車販売ディーラーの店舗数は約2100拠点。これらの大部分の拠点で試乗車1台ずつでも自社登録すれば、結構な数にはなる。レンタカーも試乗車もどの程度の規模で登録されたのかは定かではないが、ノートの初速を上げる材料にはなっているだろう。

一方で、そもそも4代目プリウスの販売が失速気味になっていたという面がある。4代目プリウス20161月から9月の間で月販台数が2万台を割り込んだのは2月と8月だけ。2月は1.9万台なのでほぼ2万台といってもいいだろう。ところが、10月と11月は一気に1.5万台を割り込んだ。11月の販売台数は前年同月比で2.2倍を売ったが、現行プリウスの正式発表は201512月。201511月はモデルチェンジ直前で在庫もほぼなかった状況だったので、当然と言えば当然の結果で好調さを裏付けるものではない。


とあるトヨタ系ディーラーでプリウスの売れ行きを聞いた。

「極端に販売不振という印象はないですが、ただ30系(3代目)ほどの勢いがないのは確かです」。ベテランクラスの営業マンA氏はこう話した。4代目プリウスは正式発表時点の事前受注が6万台を突破。納車は34カ月待ちの状況だった。ただ、3代目プリウスの事前受注7.5万台には及んでいなかった。

気になるのは「4代目プリウスはエクステリアデザインの評判があまり芳しくない」(自動車販売業者)という評価だ。4代目プリウスのデザインはかなり先進的に見える一方、好き嫌いの好みが分かれるという見方もあった。

ハイブリッド車のニーズが分散化している

トヨタ内でもハイブリッドモデルのラインナップが増えており、需要が分散化しているのも影響していそうだ

ハイブリッド車のニーズがプリウスに集中しなくなったことだ。いまや「カローラ」「シエンタ」「ノアヴォクシー」などなど、トヨタ車の多くがハイブリッド仕様をラインナップしている。ダウンサイジングの流れもあり、ハイブリッド専用コンパクトカーのアクアに、かつては3代目プリウスを購入していた層が一部流れているという面もある。

1214日に国内で発売されたトヨタ新型コンパクトSUVC-HRHV仕様をラインナップ。プリウスと共通の基本骨格(プラットフォーム)を採用しており、世界的なSUV人気を受けて、事前受注は29000台に達した。この中にもプリウスと比較検討して買っているユーザーもいるだろう。

前出のA氏に納期を聞いてみると、ニッケル水素電池を採用するS系、リチウムイオン電池を採用するEA系どちらでも早ければ1カ月ほどで納車可能とのことなので、トヨタ車のなかでは「即納レベル」となっている。これまで納期遅延となっていたリチウムイオン電池搭載モデルのバックオーダーが解消されたことも販売台数落ち込みの要因となっているようだ。

4代目プリウスはレンタカーなどのフリートセールスも積極化しているようで、トヨタ系レンタカー会社以外のレンタカー専業店でも多く見かけるようになった。またインターネットの中古車検索サイトで見ても、未登録状態で中古車専業店へ委託販売している車両や走行距離がわずかの未使用中古車などが目立っており、前述した新車の納期が早いことからも、4代目プリウスは市場においてダブつき気味になりつつあるともいえる。


日本以外の有望市場である北米でもプリウスは苦戦している。ガソリンの安値傾向が続き、燃費のいい小排気量コンパクトカーやハイブリッドなどの次世代環境車などが軒並み販売苦戦しているなかでは知名度も抜群で健闘しているが、デザインの不評は北米でも指摘されている。


写真はロサンゼルス近郊のフリーウェイ近くのビルボード9月末のクリアランスセール時期のもので、その対象にはプリウスも含まれていた

南カリフォルニア在住の事情通によると、「米国では環境面というよりは、燃料代負担の軽減ということでハイブリッド車は注目されます。

同クラスガソリン車に比べ価格が高めとなるプリウス1ガロン(約4リットル)のガソリン価格が4ドルを超えないとなかなか買ってくれません」とのことであった。

販売台数が決して悪いものではないが……

国内販売に話を戻せば、プリウス2016暦年での登録車販売ランキングでトップがほぼ確実となっているので、11月は無理なフリート販売を避けたとの見方はできる。日本国内については、軽自動車でもないかぎり毎月のように2万台を販売すること自体が異常な状況であって、10月や11月の販売台数が決して悪いものではないが、それまでの2万台以上売っていたペースからの落ち込み方は尋常ではないので、いろいろと心配が募ってしまう

年明け早々にデビュー予定のプリウスPHVは話題作りの材料としては有効なのであろうが、販売台数の上積みについては未知数だ。それでも年明けから始まる年度末商戦では、プリウスは法人向け販売で強みも持っているので、2月や3月あたりは再び2万台近辺の販売台数を記録し、2016事業年度でも年間販売台数トップの座を獲る可能性は高いが、その先はわからない。プリウスは唯一無二なHV絶対王者ではなくなっている。

http://toyokeizai.net/articles/-/150334?page=4

 

 

ここにも指摘されているように、ハイブリッド車絶対王者ではなくなった、ということではないのかな。トヨタも早く電気自動車EVを世に出さないと、衰退してゆくことになりはしないか、心配した方がよいのではないのかな。トヨタは「プリウスから卒業」した方がよい、と言う論考もある。

(続く)