続続・次世代エコカー・本命は?(46)

中国ではNEV規制と言う物が2018年から適用されると言う。同規制は、EVプラグインハイブリッド車PHV)など環境負荷が小さい車を相当な量を売らなければ通常のガソリン車の販売は認めない厳しい内容だ。この件は2017.4.21の当ブログNO.15で言及しているが、中国で車を売るのであれば、エコカーでなければ売れなくなると言う状況になりそうだ。

 

加州のZEV規制と同じように、エコカー即ちEVFCV)かPHVを相当数売らなければ、いわゆる普通のクルマ・ガソリンで走るクルマは売れなくなるようだ。まだその比率がどれほどになるのかわからないが、大気汚染が深刻で環境対策が待ったなしの中国では、それでも遅きに失した政策である。遅かれ早かれそんな政策が打たれるものと、判断して企業経営に勤しむ必要があったわけである。

 

とすれば、トヨタは尚のことEVに注力していなければならなかった、ということになる。と言うのも中国では、いくら究極のエコカーなどとふんぞり返っても、燃料電池が売れる下地は今のところない、皆無と言ってもよいのではないのかな。ということはトヨタは中国での販売増の秘策が見当たらないということではないのかな。だから今年2017年も来年も世界販売台数はやはりVWがトップをとるということになりそうだ。

 

中国では構造が簡単な電気自動車が大流行りとなっているようで、2016年にはエコカー40万台以上が販売されたのではないか、と言われている。これは世界のエコカー50%を占め、その大半は電気自動車である。中国での車の販売は3,000万台に迫り、世界一となっている。その中国でクルマを売るとなったら、当然エコカーが話題に上がると思わなければならないのである。しかもそれはEV・電気自動車でなければならなかったのである。だからトヨタも、早々にHVではダメだと決断しなればならなかったのである。

 

だからHVばかりにかじりついていては、今のご時世では、時代遅れとなってしまうのである。EVも売っていて更にHVもありますよ、と言うのであれば、御の字であろう。

 

中国では既に2012に「新エネルギー車産業発展計画(2012~2020」を発表している。そして2015年には、「中国製造2025」を打ち出しエコカー比率が20%を目標としたのである(ZEV22%)。(2017.4.24NO.16参照のこと)。だから当然中国でクルマを売るのであれば、エコカー即ち電気自動車に注力しなければいけなかったのである。

 

週刊東洋経済20174/29~5/6合併号には、「トヨタの中ではHVの存在感が圧倒的で、EV開発に携わっていたエンジニアが「細々と開発していたが、肩身が狭かった」と言うほど。」と書かれているように、明らかにトヨタ先を見誤っていた様だ。

 

トヨタはサイオン系列にiQEV版、iQEV=eQ100台程度販売したようだが、その後もEVの販売を継続して貰いたかったものだがその後EVの話はそれほど聞かなくなった。

ここら辺がトヨタHVに溺れていた証拠で、先見の明がなかったということであろう。

 

iQEVについては2012.3.29の「番外編・プリウス急加速問題(88)」でほんの少し触れているが、今更EV事業企画室」なんぞを作っても遅いっていうこと。但しやらないよりかはヤッタほうが余程良いので、しっかりとやってもらいたいものである。

 

またその東洋経済には、自動運転でも次のような言葉が並んでいる。「トヨタは今でこそ自動運転と言う言葉を使うが、昔は社内のエンジニアの間では禁句。代わりに「運転支援」という言い方がされていた(トヨタOB

 

これなども豊田章男社長の言う「もっといいクルマを作ろうよ」と言うスローガン(?)の「もっといいクルマ」の定義を世の中の変革の中で、「操る歓び」からしっかりと変えていかなかったことに問題があると小生はにらんでいる。なまじっか豊田章男社長がC級ライセンスなんぞを持っているから、周りが余計な忖度をしてしまっているかもしれない。C級ライセンスを持つことが悪いと言っているのではない。社長が車を高度に運転することは非常に良いことであるが、そのことを忖度させないようにしなければならないのであろう。ましてや180度否360度もクルマに対する要求が変革している時に、旧態依然とした価値観だけでは、世の中はやってはゆけないである。

 

世の中は「クルマは操るもの」から「CASE」に変革していると唱えたのは、2016年のバリモーターショーでの「ダイムラー」だったのである。(同東洋経済より)

 

CASEとは、

 

C Connected(ネットと自動車の接続)

A Aoutmotive(自動運転、AI)

S Sharing(ライドシェアー、カーシェアー)

E Electric(電動化)

 

である。

 

だから日産のセレナに「プロパイロット」が初めて、搭載されてしまったのである。

 

「いいクルマ」もそのように変わるべきなのである。

 

トヨタは、199712に「21世紀に間に合いました。」のキャッチコピーで、世界初となる「量産ハイブリッド自動車」を発売したり、更には201412には「量産型燃料電池自動車ミライ」をこれまた世界初めて発売している。このようにトヨタは世界の「エコカー」の先頭を走ってきたが、このところトヨタは先頭を走っていない。2歩も3歩も遅れている、ように見える。それと言うのも「電気自動車・EV」をないがしろにしてきたからである。

 

今までのトヨタは「ハイブリッド」に胡坐をかき過ぎ、「操る歓び」に固執し過ぎたためである。

 

世界の環境は悪化の一途をたどり、もう待ったなしの状態なのだ。一刻も早くCO2の排出を減らし、否CO2の排出を無くさなければならないのだ。

 

1年前の豊田章男社長の発言に、明確には電気自動車と言う言葉が見当たらなかったことは、非常に気になるところである。

 

 

トヨタ社長「今後100年はエコカー時代」 日経・FT共同インタビュー

2016/1/12
ニュースソース
日本経済新聞 朝刊

 トヨタ自動車豊田章男社長は日本経済新聞と英フィナンシャル・タイムズ(FT)との共同取材に応じ「今後100年はエコカーの時代」とし、燃料電池プラグインハイブリッド車(PHV)など複数の技術を展開していく考えを強調した。各国の規制などに合ったエコカーを機動的に投入できるようにして世界規模で強まる環境対策に応えていく。(関連記事を日経・FT共同特集面に)

インタビューに答える豊田章男社長

インタビューに答える豊田章男社長

 豊田社長は「自動車産業は過去1世紀、ガソリンエンジンが主流だった。次の100年はさまざまなエコカーが伸びてくる」と指摘し、PHVや燃料電池車、ディーゼルエンジン車などが発展していくとした。

 他の自動車大手は日産自動車電気自動車(EV)、独ダイムラー燃料電池などとエコカー戦略の柱を定めている。これに対しトヨタは年1兆円の研究開発投資で幅広いエコカー技術に対応し「各地域の消費者の選択に応えていく」(豊田社長)との考えを示した。

 豊田社長は「目標数値に依存する経営」のリスクも強調した。販売台数などの数値目標を掲げて会社を引っ張ると、それ以外のものが目に入らなくなり組織が1つの方向に暴走しかねない。「販売台数で世界首位」をめざした独フォルクスワーゲンの排ガス不正事件や、東芝の会計操作など「数字にこだわりすぎる経営」の引き起こす不祥事は後を絶たない。

 豊田社長は「現場に近いところでそれぞれ数字の目標を決めて頑張るのはいいが、経営トップはやってはいけない」「リーマン・ショック以前のトヨタも数字経営だった」などと持論を展開した。

http://www.nikkei.com/article/DGKKASDZ05I2N_X00C16A1MM8000/

 

 

当然「各地域の消費者の選択に応えていく」ことは必須のことではあるが、それにもまして地球環境への配慮を今すぐやる必要があるのではないのかな。「トヨタFCVEV、そしてPHVも共に展開してゆく」と言ってほしかったのである。1年早くこの時にそう言ってもらいたかった。

 

2016121日付での「EV事業企画室」は、遅きに失している。だがやらないよりはしっかりやったほうがよいので、早急にEVを世に出してもらいたいものである。それこそが地球環境への配慮となろう。

(続く)