続続・次世代エコカー・本命は?(53)

ホンダ、70MPa小型水素ステーションの実証実験を開始

  • 高田 隆

  • 2016/10/24 13:15

ホンダ、70MPa小型水素ステーションの実証実験を開始

 

図 実証実験施設のイメージ

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 ホンダは20161024日、充填圧力が70MPa小型水素ステーションを用いた実証実験を開始したと発表した。

 同ステーションを東京都江東区青海に設置し、同社の燃料電池車(FCV)「クラリティフューエルセル」と可搬型の外部給電装置を用いて、都市環境下におけるCO2排出量の削減効果や、緊急時における発電設備としての実用性を調べる(図)。

 充填圧力が70MPa水素ステーションは、太陽光発電システムで作った電力で水素を製造する。本体の床面積は、従来の同社の水素ステーション(充填圧力35MPa)より小さい6m2である。同社が開発した高圧水電解システムによって、圧縮機を使わずに製造圧力77MPaの水素を24時間で最大2.5kg造れる。

 造った水素は約18kg貯蔵できる。この貯蔵量は、同社のFCVを約750kmJC08モード、社内測定値)走らせることができる量に相当する。FCVへの充填条件は外気温が20℃、水素タンクの圧力が10MPaからの満充填である。

 なお今回の実証実験は、環境省の「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」に基づいて行うものである。

http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/102404664/

 

 

このパリ協定を達成するために、日本は「2030年に2013年比26.0%温室効果ガス・CO2等の削減」することを目標に定めている。運輸部門は日本のCO2排出量の実に2割を占めている。その大半が自動車だ、9割のCO2がクルマから排出されているのが現状だ。だから水素社会の実現・燃料電池車の普及は喫緊の課題となっているのだ。

 

 

持続可能なクルマ社会の実現への果敢なチャレンジ

2016.10.28 11:00

イワタニ水素ステーション芝公園 岩谷

 これまで日本経済を牽引してきた自動車産業が、排気ガスによる大気汚染や使用済み自動車の処理などの地球環境に対するマイナス要因の払拭に向けて本格的に動き始めている。地球温暖化や水不足、資源枯渇、生物多様性の損失といった地球環境の問題に対する取り組みを加速させなければ、持続可能なモータリゼーション社会の実現は困難となるからだ。年々厳格化する世界の環境規制への対応は欠かせないが、ビジネスの持続可能性からさらに一歩踏み出し、クルマが人間社会にプラスをもたらすことを目指した挑戦に乗り出している。

 2020年の東京オリンピックパラリンピックを契機に、自動車産業は今後、水素社会の進展を視野に入れている。その象徴となる場所が、東京都心にある。トヨタ自動車が世界に先駆けて販売を開始した量産型の燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」のショールームを併設した「イワタニ水素ステーション芝公園」だ。今、石油やガス業界を中心に、関東や東海、関西、九州などで、このような「水素ステーション」の設置が進んでいる。東京オリンピックでは、観客の輸送手段として、燃料電池車を導入する計画もあり、首都圏を中心に水素網の構築が加速することが予想されている。

 国・地方プロジェクトを中心に30年以上にわたり積み重ねられてきた水素・燃料電池の開発は、社会実証から本格的な運用へ向けて動き出した。水素が次世代エネルギーとして注目されているのは、地球環境問題資源エネルギー問題同時に解決できる可能性を秘めたエネルギーであるためだ。

 水素は水や化合物の状態で地球上に無尽蔵に存在し、枯渇することがない。燃焼しても水に戻り、CO2や大気汚染物質の排出もない。将来、安価で安定的にCO2フリー水素を供給することが重要だ。20146月に経済産業省が発表した「水素・燃料電池戦略ロードマップ」では、水素サプライチェーンの確立が掲げられ、岩谷産業やシェルジャパン、電源開発が水素サプライチェーンの推進機構を立ち上げている。

 2005年に発効した京都議定書の対策として、政府は1990年比でCO26%の削減を達成するため、「京都議定書目標達成計画」を策定した。この計画では、産業、民生、運輸などの部門ごとにCO2削減見込みと対策が掲げられている。運輸部門は日本のCO2排出量の約2を占め、その9割が自動車から排出されていることから、その削減対策は重要な課題だ。

 さらに、日本は2020年以降の新たな温室効果ガス削減目標として、2030年度に2013年度比26.0%削減(2005年度比25.4%削減)の水準を掲げている。エネルギーミックスと整合的なものとなるよう、技術的制約、コスト面の課題などを十分に考慮した裏付けのある対策・施策や技術の積み上げによる実現可能な削減目標として、国内の排出削減・吸収量の確保に取り組む。

 日本自動車工業会の会員企業各社は、CO2削減のため、燃費基準の早期達成を表明し、積極的に燃費基準達成車の商品展開を進めているほか、燃費の向上に寄与する車両の軽量化にも力を入れている。こうした取り組みの結果、自動車の燃費は年々向上し、乗用車の平均燃費(燃費測定方法:JC08モード)は21.3キロとなり、2015年度の燃費基準相当レベル(17.3キロ)を上回り、20年度の20.7キロも達成した(日本自動車工業会環境レポート2014)。

 さらに、次世代自動車の開発競争も進んでいる。普及期に入ったハイブリッド車をはじめ、プラグインハイブリッド車電気自動車、燃料電池天然ガス車、クリーンディーゼル車の日本市場での普及台数は約413万台に達している。政府も優遇税制などで、低燃費車へのシフトを後押ししている。

 自動車産業の地球環境保全への取り組みは、新車の開発にとどまらない。自工会会員各社の生産工場では、電力・燃料などのエネルギー使用量の低減と、それに伴うCO2の排出抑制に積極的に取り組んでいる。自工会日本自動車車体工業会2008年度からCO2排出量を合わせて、削減を推進してきた。2013年度からは「経団連低炭素社会実行計画」に参画し、2020年度には709万トン(1990年度比28%低減)、2030年度には662万トン(同33%低減)の目標を掲げた。

イワタニ水素ステーション芝公園
 トヨタ自動車201510月に発表した「トヨタ環境チャレンジ2050」では、「2050年グローバル工場でのCO2排出ゼロ」の実現に挑戦する目標だ。環境部の山戸昌子担当部長は「低CO2生産技術の開発と日常のカイゼン再生可能エネルギーと水素エネルギーの活用が柱になる」と話す。

 トヨタは、今後建設する新しい工場と生産ラインでは、生産1台あたりのCO2排出量は、2001年比で2020年に約半減、2030年には約3分の1への削減を目指す。工場のシンプル・スリム化、エネルギー利用率向上のほか、エネルギーを使わずに加工や搬送を行う「からくり仕掛け」の導入など新技術を導入し、世界各国の工場に導入する計画だ。また、工場での水素利用を目指し、水素を熱源として利用するための「燃焼技術」や、燃料電池技術のノウハウを生かした「発電技術」などの水素エネルギー活用技術の開発を推進し、2020年ごろに燃料電池車の生産ラインで導入に向けた実証を始める。

http://www.sankei.com/life/news/161028/lif1610280002-n1.html

(続く)