続続・次世代エコカー・本命は?(74)

 テスラでは、屋根型太陽光発電蓄電池を円滑に組み合わせた製品を開発し分散型電源として機能させ、1つのスマートフォンアプリで注文やアフターサービスを実施するためには、2つの会社ではなく1つの会社に統合した方がメリットを発揮できるとマスタープランの中で、主張している

 ソーラーシティは、イーロン・マスク氏のいとこであるリンドン・ライブ(Lyndon Rive)氏とピーター・ライブ(Peter Rive)氏が2006年に設立した太陽光発電ベンチャーで、マスク氏も会長として経営に参加している。今回の買収は26億ドルでテスラがソーラーシティを買収することで合意。この合意によって、設置コストの削減やハードウェアコストの削減、製造の効率化、顧客獲得コストの削減などにより、テスラとソーラーシティのシナジー効果1年間で15000万ドルに及ぶとしている。またテスラの190店舗の小売りネットワークにより国際的な展開なども可能になるという。

 ただし、今回の買収は2016914日までは、他社の買収提案を受けられる条件も入っているとしている。

総合エネルギー企業として進化するテスラ

 今回の買収が成立すれば、ソーラーで発電して家庭用の蓄電池およびEVに蓄電するという創エネから蓄エネの動きを1社で完結できる世界でも珍しい企業の1社となる。同社のEVは、ソフトウェアバージョンアップによる機能向上やスマートフォンとの連携などで従来の自動車産業を大きく変えたといわれるが、家庭においても「スマートホーム」の最有力企業になり得る可能性が生まれてきている。

http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1608/03/news029_2.html

 

 

このことは次の論考なども参照されるとよい。

蓄電・発電機器:テスラが蓄電池市場に参入、家庭用では7kWhで約36万円を実現

201505070700分 更新

http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1505/07/news012_3.html

 

 

まあ総合エネルギー企業として進化していると自慢している暇は、今のテスラにはない。何としても「モデル3」の量産化を急がなくてはならないのだ。問題は「Model 」の生産の立ち上げである。

 

バッテリーはネバタ州の「ギガファクトリー」で確保できるが、フリーモントのテスラのEV工場での生産立ち上げは、今のところてんてこ舞いであろう。

 

テスラの「Model S」は、シャシーフレームからボデーまでアルミで出来ているので、アルミのプレスや溶接にはそれなりの技術が必要となろうが、相当数のそれなりの技術者を集めたものと思う。そして相当苦労して量産をものにしたものであろうことと思われる。そして「Model 」もすべてアルミ製ではないのかな。

 

だから「Model 」の量産立ち上げもかなりの準備と訓練とそれなりの苦労が伴うものと思われる。

 

当然量産試作などの手順を踏んでの量産化ではあるが、一般のエンジン付き自動車に比べれば、EVはかなり構造が簡単になっているので、較べればその点は優しいものとなろう。

 

2年早出しをして2018年には50万台のEVを売る計画だと言うので、先ずはそれだけ量産できなければならないことになる。

 

2017.7.4のNO.67の記事では、Model 320177月より生産を開始して、2017年には5,0002018年には10,000の生産に持ってゆく、と言っている。

 

10,000/週(2,000/日)ということは、250/÷5/=50/年 となるので、これで年間50万台の生産となるわけだ。イーロン・マスクと言えどもこの台数を1shiftで生産するわけにはゆくまい、当然2shiftとなろう。場合によっては3shiftも考えられる。

 

これを2shift×8h=16h/dとすると、16h/d×60m×60s/2,000unit/d=28.8s/u となり、28.8秒に1台のEVが生産されることになる。これはとてつもない速さのラインとなろう。とても人間がついてゆけないラインスピードとなるので、品質を確保しながら確実に生産してゆくのであれば、1/台~1.5/台のラインを3つほど準備しなければならないことになろう。

 

この工場建屋・設備の手配、治工具の準備、電気配線、完成車を含む構内物流などなど、場合によってはWorker達の福利厚生なども含めて、生産準備は大変なものである。このためテスラの工場は、まったくのてんてこ舞いであろう。

 

しかも生産計画立案、それに沿った資材・パーツの手配、設備のメンテナンス、サプライヤーの育成、要員の確保と育成・訓練とハードからソフトまで、いくらEVとは言え一台の新型車を作るということは、一大プロジェクトである。

 

「モデルS」のシャシー・ボデーのレイアウトはこんな形だ。相当すっきりしている。

 

「モデルS」の主要コンポーネントのレイアウト
「モデルS」の主要コンポーネントのレイアウト(クリックで拡大) 出典:Tesla Motors

 

幸いテスラでは、組み立てラインではなくて、自動走行台車上で車両の組付け・組立を行うようになっているから相当柔軟性があり、更にはEVであるので、E/G,T/Mやプロペラシャフト、ディファレンシャルギア、ドライブシャフト、場合によってはトランスアクスル、等速ジョイント(ドライブシャフト)などと言った機械部品が必要ないので、その点はずっと楽であろう。実際のところバッテリー関係の準備が出来てしまえば、生産準備などは相当簡単なものとなろう。

 

しかし多くのサプライヤーからのParts unitsの同期的Supply、混合生産での工夫など、いくら電気自動車とは言え自動車なので、大量生産の場合にはその生産準備はそれなりに大変となろう。

(続く)