続続・次世代エコカー・本命は?(83)

JAIA設立50周年 特別シリーズ企画 INTERVIEW TOPインタビュー

テスラモーターズディレクター
カート・ケルティ

http://www.jaia-jp.org/50th/interview/018/index2.html

2015.9.11

 

テスラモーターズ2003年、アメリカのシリコンバレーに設立されたEV(電気自動車)専業メーカーである。2008年には初の量産車であるテスラ ロードスターが登場。2010年には日本法人であるテスラモーターズジャパンが設立され、東京・青山に日本1号店となるショールームを構える。また同年、トヨタEVの共同開発を目的にテスラモーターズへ出資、パナソニックも電池の共同開発を開始するなど日本メーカーとの提携もはじまる。年々、存在感を増しているEVの急先鋒、テスラモーターズのカート・ケルティー氏にこれからの日本市場の戦略について話を伺う。

 

テスラモーターズ ディレクター
カート・ケルティー
1991
松下電器産業(現・パナソニック)に入社。同社で15年間勤務し、そのほとんどを電池の開発に従事する。2006テスラモーターズに入社松下電器産業時代も7年を日本で過ごした経験があり、大変な日本通である。



インタビュアー:フェルディナント・ヤマグチ

テスラが選ばれる理由は2つ。環境を大事にしていること、そして高性能であること。


フェルディナント・ヤマグチ(以下F) テスラは世界でも稀なEV専業メーカーだと思いますが、競合車はどういったモデルになるのでしょうか?

ケルティー そうですね。われわれの競合は、EVではなく、メルセデスBMWアウディといったプレミアムブランドです。例えばメルセデスであればSクラスを所有しているような顧客をターゲットにしています。

F
 テスラはなぜガソリン車ではなく電気自動車を作るのですか?

ケルティー 会社としてのそもそものミッションは、石油依存の社会から再生可能エネルギー主導の世界への移行です。自動車以外にも、今年の4月には家庭用蓄電池パワーウォールを発表しましたが、家庭用だけではなく、電力会社向けの蓄電ビジネスも展開しています。いずれも目指すところは同じで、蓄電すれば太陽光発電風力発電をもっと有効活用できるようになります。

F
 ケルティーさんはもともとパナソニックにいたと伺っています。そこでテスラと仕事を始めて移籍されたのですか?

ケルティー 実はそういうわけではないのです。パナソニックにいた頃にこのテスラができたわけですが、最初は全然興味がありませんでした。理由はリチウムイオン電池を使っていたからです。リチウムイオンを使うEVメーカーはたくさんありましたが、どれも成功していなかった。電池メーカーとしては危ないから売りたくない。リチウムイオン電池をクルマに搭載することは、パナソニックだけではなくて、サムスンLGソニーもすべての電池メーカーが反対していました。トラブルが起きれば、自動車ではなく電池メーカーの名前が取り沙汰されてしまう。私自身、アメリカの企業から何度もヘッドハンティングのアプローチを受けましたが、全部断っていました。そうした中で、テスラから話が来た時にあらためて具体的な話をいろいろ聞いて、これならいけるんじゃないかと思ったんです。テスラに移るときは、パナソニックのみんなはとても心配しました。15年間勤めてまるで家族みたいな関係でしたから。最終的には理解して送り出してもらいました。そして今度は立場が変わって、テスラからパナソニックに電池を買いに行ったんです。でも何年間も断られ続けました。
(続く)