続続・次世代エコカー・本命は?(95)

トヨタは、ライドシェアー用にクルマを売りたいがためにUberと戦略的に提携したわけではないであろう。この戦略的と言うところに意味があるようだ。トヨタとしても、シェアリングエコノミーがどんな社会をもたらすかは、具体的には掴んではいないのではないのかな。だからどんな社会になるかを見極めるためにも、Uberと提携したのではないのかと小生は考えている。GMLyftとの提携も同じことであろう。

 

クルマはもう売れない、どうする自動車メーカー

The Economist

モビリティカンパニーへの脱皮に待つ試練

201662日(木)

The Economist

 

 自動車メーカーはずっと以前から、クルマの製造・販売ビジネスの脅威となるテクノロジーを取り込む構想について、雄弁に語ってきた。

 

乗車可能なクルマを表示するウーバーのアプリ(写真:AP/アフロ)

 1990年代、IT(情報技術)関連企業を中心とするドットコムバブル華やかなりし頃、当時の米フォード・モーターCEO最高経営責任者)のジャック・ナッサー氏は、モビリティサービスを提供する企業として生まれ変わると宣言した。インターネットの普及が可能にする新たなビジネスモデルの下で、同社は自動車の組み立てといった退屈な仕事は外注し、輸送をサービスとして販売するモビリティカンパニーに変身を遂げるとうたった。

 ナッサー氏のこの考えは、あまりにも時代を先取りし過ぎていた。大手自動車メーカーの多くが、輸送サービスを手掛けるテクノロジー企業と提携し、モビリティサービスの提供者となるべく業態転換を模索し出したのは、ようやく最近になってからだ。だが、彼らは、行動を起こすのが遅過ぎたかもしれない。

当面の舞台は配車サービス

 変身を急ぐべく従来型の自動車メーカーは、最近は配車アプリに焦点を合わせている。これらのサービスの利用者は、スマートフォンのアプリを使って車を呼び出し、次の目的地まで運んでもらうことができる。

 トヨタ自動車フォルクスワーゲンVW)は524日にそれぞれ、タクシー配車アプリと提携すると発表した。トヨタ米ウーバーに小規模な出資を行った(出資額は明らかにしていない)。ウーバーは70カ国で事業を展開する世界最大の配車サービス会社だ。

 VWイスラエルに拠点を置く配車アプリのゲット3億ドル(約330億円)出資する。ゲットの牙城は欧州だ。VWCEO、マティアス・ミューラー氏はさらに大きな野望を抱いている。2025年までに、モビリティサービスで世界最大手になると宣言した。

 この方向に進もうとしているのは、VWだけではないだろう。1月に米ゼネラル・モーターズGM)は、米国においてウーバーの最大のライバルであるリフト5億ドル(約550億円)を出資した。目的の1つは配車サービスの展開。加えて、リフトが進めるロボットタクシーの開発への参加もにらむ。

 フォードのマーク・フィールズCEOは昨年、これからの同社は自動車メーカーであると同時にモビリティカンパニーでもあるとぶち上げた(多分、先のナッサー氏の宣言は忘れてしまったのだろう)。フォードは自前の配車アプリを展開するとともに、利用者の求めに応じて配車する自動車――恐らくオンデマンド・ベースのミニバスサービス――も提供する計画だと噂されている。

カーシェアリングも収益源の1

 最近の主戦場は配車サービスだが、自動車メーカーはモビリティを収益源にする他の方法も探っている。

 これまで自分の車を所有したいと思っていた人々が、今では、必要な時だけお金を払って乗れればいいと考えているのかもしれない。都会に住む若者達は、ほとんど使う機会がないまま価値を失っていく資産を高いお金を払って所有することに、そっぽを向き始めている。

 クルマの短期利用をアプリを使って予約できるカーシェアリングサービスの会員数が急速に伸びている。この分野で世界最大手のジップカー(ZipCar)はレンタカー会社のエイビス・バジェット の傘下にある。独ダイムラー・ベンツが運営するカーツーゴー(Car2Go)や独BMWのドライブナウ(Drive Now)アプリを真似る自動車メーカーも増えている。例えばフォードは米国、英国、ドイツ、インドでカーシェアリングサービスの試験運用を始めた。

 カーシェアリングや配車サービスは、いずれは自動車メーカーの収益源となるだろう。利益率が低いのが当たり前の大衆車メーカーにとって、福音となる可能性がある。だが高い利益率に慣れている高級車メーカーは、それだけでは満足できないかもしれない。自動車メーカーはこれらのサービスから上がる利益の分け前を得ようとするだけでなく、クルマを供給することでも鎬を削るようになると思われる。実際、トヨタとウーバーの合意には、ウーバーの運転手がクルマを買うための融資プランが含まれている。GMはリフトの運転手がクルマを取得するために同様のプランを提供している。

モビリティカンパニーへの課題

 クルマを所有してもらうことではなく利用してもらうことによって、自動車メーカーが利益を確保できるかどうか――この問題を考える際、次の2つが重要になる。1に、自動車メーカーは事業の運営方法を見直さなければならない。

 クルマの製造には複雑な技術を取得する必要がある。従来はこの困難さが新たなライバルの参入を阻んできた。常に顧客への対応を迫られるサービス事業を展開しながら、大量のデータを高速処理するという新たな取り組みは、新しいSUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)を設計するのとはまるで異なる。

 自動車メーカーが競って配車アプリ分野に出資しているのは、利益を得るという直接的な目的と同じ程度に、これらの新事業の運営方法を学びたいとの意図が動機となっている。

 2は、データの処理やサービスの販売に長けた大手テクノロジー企業も成功するのは難しいということだ。グーグルは自動運転の分野で先頭を走っている。アップルは自ら自動車製造に乗り出す計画だと噂されている。最近、中国でウーバーと同様のサービスを提供する滴滴快的に出資した。グーグルとウーバー以外にも数多くの新興企業が、ある地点から別の地点に顧客を運ぶサービスを提供して利益を上げる方法を探っている。

 将来的には、自分のクルマを所有するのではなく複数の交通手段を組み合わせて、最も速く、かつ最も安く目的地に着けるようにしてくれるアプリと、月極め契約するような形態が普及するかもしれない。交通手段にはカーシェアリングからタクシー、バス、電車、クルマなど、車輪のついているあらゆる乗り物が含まれることになるだろう。

 公共交通機関が一層効率良く利用できるようになるとともに、カーシェアリングや配車サービスがさらに普及すれば、人々が今までのようにクルマを買うことはなくなる可能性がある。そうなれば、途上国の中所得層が拡大するに伴って自動車販売が伸びるという期待は消え失せる。自動車メーカーは販売台数の減少に直面する。

 その一方で、自動車製造という巨大な重荷を負っていない身軽なライバルたちは、様々な移動サービスを顧客に提供することによって、利益を上げることになるだろう。

© 2016 The Economist Newspaper Limited.
May. 28th, 2016 All rights reserved.

エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。

 

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このサービスに対しては、今注目の「国家戦略特区諮問会議」で推奨されて、「自家用有償運送」が2015年に特区内で認められるようになったが、全国自動車交通労働組合総連合会、自交総連が「違法な白タクだ」と大反対している。東京オリンピック2020を控えているのに、このような既得権益にしがみつく利権団体の動きは、百害あって一利なしなのであろう。

 

ここを参照されたし。→(http://www.jikosoren.jp/check/sirotaku/sirotaku.html

(続く)