続続・次世代エコカー・本命は?(105)

原油価格低迷の意味

 国際エネルギー機関IEA)によれば、2015年の世界の石油需要の約56%は輸送用燃料であり、そのうち約8割が自動車燃料と考えられる。産油国にしてみれば、今回のフランス政府の方針表明は、市場における核心的な需要の喪失を意味する。既に、インド政府も、2030を目途にガソリン車の販売禁止の方向を打ち出しており、一部の北欧諸国も同様の検討を行っているといわれる。

 産油国としては、こうした動きが続くことを警戒していることであろう。

 しかし、OPEC産油国地球温暖化対策に対抗するための措置を、既に2014年秋の段階で講じていると見られる。

 201411月のOPEC総会におけるシェア確保戦略発動による減産見送り決議である。一般的には、シェールオイルの増産に対抗して、価格戦争を仕掛けたとされている。バレル当たり100ドルから50ドル水準への価格引き下げによって、生産コストの高いシェールオイル減産を目指したことは確かである。

 同時に、高価格を維持することによる需要減少と石油代替技術の開発の阻止を目指したものとも考えられる。OPEC産油国にとって、シェア確保戦略とは、現在の石油市場のシェアも重要であるが、将来のエネルギー市場における石油のシェアの維持も視野に入れた構想である。

 特にサウジアラビアにとっては、「石器時代が終わったのは石がなくなったからではない」(ヤマニ元石油相)。シェール革命も、技術革新による資源制約の克服であった。サウジは石油資源の枯渇よりも、石油の需要を奪う新技術の登場を一番恐れている。サウジアラムコ(国営石油会社)の新規株式上場(IPO)も、地球温暖化対策による原油資産の座礁資産Stranded Asset、資金回収できなくなる資産のことに対するリスク分散、一種の「保険」であるとする見方もある。

 現時点においてEVは、走行距離の問題バッテリー寿命などの技術的問題、給電施設などインフラの問題があって、まだまだ普及段階とは言えない。だが、将来技術開発が進めば、そうした問題点は一つずつ解決されてゆくだろう。

 EVの普及を先送りさせるには、産油国として打つ手は、財政赤字に耐えつつ、原油価格を低迷させ、技術開発のインセンティブをそぐことぐらいしか考えられない。

 おそらく、2016年の年末以降、協調減産でOPECと行動を共にしているロシア等の非加盟主要産油国にしても、同じ認識を持っているであろう。

 最大の産油国であり、最大の自動車生産国である、アメリカはどうか。エネルギーの自立(自給化)と同時に、自国の雇用の確保を目指すトランプ政権にとっては、パリ協定や地球温暖化対策など、関係ない。現状の方針を進めてゆくしかない。

 そうなると、OPECと非加盟主要産油国は、短期的にはシェールオイルとシェアを争い、中長期的には石油代替技術と需要を争いつつ、現状程度の協調減産を続けていくことになる。

 したがって、今後、相当長期にわたって、原油価格は現状程度で低迷を続けるのではないかと考える。

 

このコラムについて

石油「新三国志

 2016年末、今後のエネルギー業界を揺るがす出来事が重なった。1つはサウジアラビアが主導するOPEC石油輸出国機構)とロシアなど非加盟国が15年ぶりに協調減産で合意したこと。もう1つは米国内のエネルギー産業の活性化を目論むドナルド・トランプ氏が米国大統領に就任したことだ。サウジとロシア中心の産油国連合による需給調整は原油価格の下値を支えるが、トランプ政権の規制緩和などにより米シェール業者の価格競争力は高まり原油価格の上値は抑制されるだろう。将来の原油需要のピークアウトが予想される中、米・露・サウジの三大産油国が主導し、負担を分担する新たな国際石油市場のスキームが誕生しつつある。その石油「新三国志」を、石油業界に35年携わってきた著者が解説していく。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/022700114/072400008/?P=4

 

 

 

フランスの内燃機関自動車販売禁止方針は、ディーゼル自動車技術に対するギブアップ宣言であり、フランス自動車業界に対する「転身」要請かもしれない。」と書かれているように、フランス政府は自国の自動車業界に対して、ディーゼルから電動化への転身を促しているものと思われる。

 

ディーゼルに関しては、ルノーと言えども不正がなかったとは言えない状況であり、フランス政府もある意味早急にディーゼルからの脱却を図りたかったものと思われる。

 

何故かと言うと、今年の3月には、カルロス・ゴーンの了解の下にルノーも排ガス不正をしていたのではないかとの報道がなされており、その1年前には窒素酸化物のNOxの排出量が規制値をかなり超えていたために、ルノーは当局の取り調べを受けている。

 

この件は当ブログの2017.6.6NO.47~などを参照願いたいが、この件でゴーンは日産自動車の社長の座から退いたものと思われるのだが、そんなこともありフランス政府は自国の自動車産業を、この「モビリティ革命」から守りたいと思ったのではないのかな、などと邪推もできる。

 

 

そろそろ自動車業界でもいろいろな動きが現れてくることであろうが、排ガス不正の張本人の国の肝心なドイツの動きはどんなものであろうか。

 

先ずドイツの電源事情は、原子力発電からの撤退を宣言しているので、電動化への転身にははなはだ不都合な状態である。

 

ドイツは石炭火力が主で、「発電における石炭天然ガスへの依存度はそれぞれ4613だ。自然エネルギー21と比較的高いものの、火力比率が高いため、電化は温暖化対策にならない。」と書かれているように、ドイツの電源事情には非常に問題がある。

 

更にはドイツはフランスと違った世界第4位の自動車大国なので、いくら排ガス不正の当事国だと言っても、おいそれとは電動化へと(政府としては)舵を切るには規模がでかすぎる、と言ったところである。

 

しかも石炭からガスに火力発電の燃料を切り替えようとしても、その天然ガスは自国では算出しないので、今はロシアからの輸入に頼っている状況であるので、なおさら始末が悪い。経済制裁の対象国からの輸入は、早々には増やせないのであろう。

 

だからドイツは簡単にはディーゼル車などのICEVの禁止には、同意し難いのであるが、しかもドイツ国内では「自動車メーカーは信用できない」と言うのが、世論の大半となっているので尚更性質が悪い上に、自動車に関してはリーダーであったドイツではあるが、このところアメリカ勢に押されているからメルケルも気が気ではないのであろう。シリコンバレーしかり、テスラしかりである。

 

メルケルにしては、ディーゼル廃止の時の流れには逆らえないが、そうかといってICEVは廃止すると言って国内産業を衰退させてしまっては、労働者からの総スカンを食わないとも限らないので、自身の存立の問題ともなりかねない。9月には議会選挙もあることであるし、態度をはっきりしかねていると言うよりもはっきり言わないと言うところなのであろう。

 

もともとドイツと言う国は、自分に都合がよければ友達でも裏切ることが出来る、と言う性格の国である。対外的にはいい顔をして、自国産業の保護を優先することになろう。

 

VWの排ガス不正のその最たる例である。日本が中国で内戦に引っ張り込まれた原因は、このドイツの裏切りがあったからである。ドイツは日本と同盟関係にありながら、中国から希少金属などを買うために中国を裏で軍事援助をして武器を売り込み、日本と戦争をするように蒋介石を焚きつけていた。)

(続く)