このロイターの記事を読んでも、メルケルのどっちつかずの考えがよくわかる。どっちつかずだと言う事はよくわかるが、メルケルがディーゼルの将来に対して何をしたいのかは、さっぱりわからない。
要はCO2やNOxなどの排気ガスをどうしたいのかと言うところが、全くぼやけていると言う事である。「パリ協定」をどのように考えて、自国の自動車産業やエネルギー政策をどのように遂行してゆこうとしているのか、と言うところである。
地球温暖化や大気汚染を防ぐためには、内燃機関エンジンを止(や)めてゆくと言う事が求められているわけであるが、政府としてその覚悟を国民に求めてゆく努力が感じられないと言う事なのである。
当然そのためには政府としては、産業界をどのように導いてゆくかと言う骨太の方針がないのである。あるのは俄か仕立ての一時しのぎの対策だけのように(実際にはそうでないかもしれないが)感じられてしまうのは、まことに残念であるとしか言いようがない。
メルケルとしては9月の議会選挙の後に、CO2問題に対する明確な方針を出すつもりのようにも感ずるが、今はあーでもない、こーでもない式に八方美人的に世間をごまかしてゆこうと言うところなのであろう。
だからディーゼル車の存続を訴えたり、禁止するようなことを言ったりしているのでしょう。
脱ディーゼル「正しい」 独首相、英仏の販売禁止に理解
- 2017/8/16 15:25
- ニュースソース
- 日本経済新聞 電子版
「方法は正しい」。ドイツのメルケル首相が欧州で広がるディーゼル車・ガソリン車の販売禁止方針を理解する考えを示し、自動車業界で話題を呼んでいる。ただ、併せて自国の雇用や産業競争力への配慮にも言及、「正確な目標年はまだ明示できない」として、英仏のような時期までは踏み込んでいない。9月に選挙を控えた自動車大国ドイツの置かれた難しい状況が浮かび上がる。
■メーカー批判の裏でにじむ配慮
メルケル首相(左から2人目)とVWのミュラー社長(中央)ら=2015年9月、フランクフルト国際自動車ショー
メルケル氏は14日付の独誌ズーパー・イルー(電子版)の単独インタビューで、独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正に端を発したディーゼル車の問題に言及した。「ディーゼルエンジンの排ガスに関し、何が不正だったのかを明確にしなくてはならない」。消費者はメーカーに欺かれていたと指摘した。
同時にディーゼル車はガソリン車に比べ二酸化炭素(CO2)排出量が少ない点を強調し、「我々は窒素酸化物(NOX)の基準を満たした、最新のディーゼルエンジンが必要だ」と訴えた。今月2日に政府と国内の自動車メーカー首脳がベルリンに集まった「ディーゼルサミット」の方針に沿い、急進的な脱ディーゼル車の方針からは距離を置く考えを示した。
電気自動車(EV)普及との両輪もにらむ。充電インフラの整備が最重要課題だと言及し、EVシフト支援の考えも示した。もっとも英仏が7月に打ち出した2040年までの内燃機関で走る車の国内販売禁止に関しては、意味があるとしながら具体的な工程表は示したくないとしている。
左からVWのミュラー社長、ダイムラーのツェッチェ社長、BMWのクリューガー社長(ベルリンで開かれたディーゼルサミット、2日)=ロイター
英仏ほど踏み込めない背景には、日本以上ともいえる官民の蜜月関係を築いてきた独自動車産業の特徴がある。仏自動車業界の関係者は「欧州連合(EU)の規制はベルリン(=独政府)がナイン(ノー)と言えば何も決まらない」とやゆする。欧州委員会が、VW本社のある地元州がVWの第2位株主として買収拒否権を持つのはEUが定める「資本の移動の自由」に反すると訴えても、独政府は馬耳東風。VWを守ってきた。
今月2日のサミットでは、メーカーがディーゼル車530万台を無償修理することで官民が合意。ミュンヘンなど一部自治体が打ち出していた中心部の乗り入れ禁止を回避し、南ドイツ新聞は「自動車グループがサミットの勝者だ」と評した。
■選挙前の「アドバルーン」
これには9月に控えた連邦議会(下院)選挙も影響している。自動車の直接雇用だけで80万人。選挙を控え、雇用減にもつながりそうな「40年にディーゼル車を販売禁止」は打ち出しにくい。逆にいえば、雇用確保を盾にしたメーカー主導で議論は進めやすかった。メルケル氏はインタビューで、雇用確保と産業競争力の確保も重要と訴えている。
もっともドイツではこの官民合意に対し、消費者や一部自治体の不満は根強い。メルケル氏に弱腰批判が及べば、選挙に不利になりかねない。メルケル氏は1990年代には環境相として京都議定書の合意にも携わり、保守政党キリスト教民主同盟(CDU)内では環境リベラル派とされる。英仏の方針について「正しい」としながら、禁止時期の明示を避けた今回の発言は、自らの思いもにじませながらアドバルーンを上げたとみることもできる。
脱内燃機関方針で先んじたフランスでは、経済紙レゼコーがメルケル発言を受け、「メルケルにとってディーゼルの終わりは避けられない」と報じた。ドイツの流儀を知る隣国は、いずれドイツが官民挙げてEV競争に本格参入してくることは覚悟済みだ。
独産業界でも準備は進む。3日には自動車部品大手コンチネンタルのウォルフガング・シェーファー最高財務責任者(CFO)がロイター通信に対し、「次世代内燃機関の開発は続くだろうが、23年ごろには経済的に正当化できなくなる」と指摘。完成車メーカーの開発はEVなど電動技術に一気にシフトすると見通した。完成車メーカーと全方位で取引があるコンチネンタル幹部の発言は重い。
旧東独の科学者であるメルケル氏は慎重に発言を選ぶことで知られる。だが11年の脱原発回帰、15年の難民受け入れ表明のように時に大胆に決断し、主にリベラル派の喝采を受けてきた。EV政策は同国の脱石炭と再生可能エネルギー推進などとあわせた総力戦になりそう。産業やエネルギー・環境問題というより政治が前面に出てくるテーマだ。
英仏が脱内燃機関方針を発表したのは総選挙の後だった。世界最大の自動車市場、中国とも親密な関係を築いてきたメルケル氏は首相4選が濃厚。9月の選挙結果を受け、「正しい方法」の具体論にどこまで踏み込むか。その発言は自動車産業の帰趨(きすう)を決めるかもしれない。
(加藤貴行)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ16HBS_W7A810C1000000/?n_cid=NMAIL002
まあそれもこれも、この9月の下院議会選挙のためなのである。
アンゲラ・ドロアテ・カスナー(メルケルは最初の結婚後の姓、現在の配偶者はヨアヒム・ザウアーと言う。Wikipediaより)も一端の科学者である。東ドイツ出身のカスナー(メルケル)は、カールマルクス・ライプチィヒ大学で物理学を専攻して、優秀な成績で学士号を取得、その後1986年に博士論文を提出して博士号を取得している。
現在の夫ザウアーはフンボルト大学ベルリンで物理と理論化学の教授を務めており、かって在籍していた物理化学中央研究所の博士研究員であったメルケルと結婚したのは1998年のことである。
その間の1989年にベルリンの壁の崩壊があり、メルケルはその時に政治活動を始めている、とはWikipediaの概略であるが、それなりに未来を見通せる頭は持ち合わせている筈なので、内燃機関の問題は十分すぎるほど解っているだけに、政治的な解決策に頭を悩ませたのであろう。
(続く)