「ガソリンを10リットルだけ入れて納車してみたら?」
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金子:一方、PHVなら必要最低限のバッテリーを積んで適度に毎日EVとして走れ、長距離はガソリンを使ってエンジンとモーターのハイブリッドで走れるじゃないですか。
小沢:ある意味、効率的で無駄のないジャストサイズEVだと。
金子:最近、僕は販売店のみんなに言うんです。「『プリウスPHV』は満充電にして、ガソリンを10リットルだけ入れて納車してみたら?」と。毎日充電して使っていただければ、たった10リットルですらなかなか使い切らないはずだから。ヘタすると数カ月もつからと。
小沢:そうすれば、PHVが事実上の“使えるEV”であることが理解できる。
金子:私が言いたいのは、400キロ走れるEV車1台分の電池で、4台のPHVがつくれるんです。EV車の電池の無駄な大容量化と航続距離競争を食い止めたい……というのが本音です。
小沢:たしかに、今やドイツのフォルクスワーゲンが2025年にはEV車生産100万台を目標としていたり、中国は20年に累計500万台のEV、PHVの生産を目標に掲げていますが、じつは僕は疑問だったんです。一体どうやって、そんなに大量のリチウムイオン電池をつくり出すのかと。もちろん韓国のLGとかサムスンとか中国のBYDとか世界中に巨大電池メーカーはたくさんあって、どこも開発・量産競争の真っ只中ですけど、資源的な限界もありますからね。
金子:そう、そこなんです。ですから私は、お客さまに「68・2キロしか走れないEVでも十分」であることに気づいていただきたいんです。たとえば軽自動車オーナーで長距離走行をなさらない方なら、次にエコカーがEV化した時に、20〜30キロ走れる電池で十分だとわかっていただけるかもしれない。そうすると地球資源的にもよいはずだ……と。
電池容量は時代ごとに最適解がある
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小沢:うーん、すごくおもしろいですね。実際、昨今のEV化の流れって、みんな漠然と「よいこと」だと信じ込んでいて、「EVはエコだ」「ガソリンを使わないから素晴らしい」って感じています。
でも、そもそも大容量電池を量産し、クルマに搭載できることがはたしてそんなにいいことなのか?という根本的疑問も生じます。リチウムイオン電池は、廃棄にもエネルギーを使って大変らしいし。
金子:けっしてEVを否定するわけではありませんし、自動車の電動化はどんどん進んでいくと思うんです。ただ、電池容量については時代によっての最適解があるだろうし、大容量電池搭載のEV車は、普及をなるべく遅らせたほうが地球環境的によいのではないかと思うわけです。
小沢:ますます、おもしろいなあ。環境にとってはEVがいいのか、PHVがいいのかという、ほとんどイデオロギーの闘いになりつつありますね。当然の如く、EVこそ正義だと言う人もいますものね。
金子:話は飛びますが、やっぱりガソリンなど化石燃料の携帯性、そしてエネルギー密度の高さというのは大変価値が高いもので、昨冬、大雪の鳥取で自衛隊がガソリンと軽油を持ち運んで、動けないクルマに配っていたんです。ああいうことって電気ではできない。電池を運んでポンと補給して100キロ走るなんて。
小沢:たしかに。
金子:限りあるガソリンをいかに大切に使うかという取り組み。我々は「省石油」と呼んでいますが、その意味でもPHVは有効です。もちろん、ガソリンが本当に枯渇する事態に備えた「脱石油」も視野に入れていますけれどもね。
おざわ こーじ◎バラエティ自動車ジャーナリスト。
量産車では世界初となる大型ソーラーパネルを車両ルーフに設置(S“ナビパッケージ”、Sにメーカーオプション)。駐車中に駆動用バッテリーへ太陽光の自然エネルギーを供給。1日に最大で6.1km走行分の充電が可能だ。
ナビゲーションシステムには11.6インチの大型ディスプレイを採用。見やすいのはもちろん、タブレット感覚で操作できる。
ヘッドランプにはLED4眼プロジェクターを採用。極限まで薄く、小さく、低くすることでシャープさを演出。リアもコンビネーションランプがサブウインドウを取り囲むように赤いラインを描くなど、印象的なデザインに大きく変わった。
エクステリアのデザインを一新。艶めくアクリルグリルや先進技術を凝縮した4眼プロジェクターによって、未来を見据えた精悍な顔つきになった。
PRIUS PHVの詳しい情報・お問い合わせはtoyota.jpへ
https://harmony.ts3card.com/interview/201707-08/
(続く)