続・うつけ者・文在寅、滅びよ韓国(20)

著者は韓国の描いている近未来のシナリオを、

軍事指揮権返還→米軍撤退→南北平和条約締結」から「南北連合国家形成→南北統一国家実現」へという流れだと予想する。

そして、この流れを何としても止めなくてはならないと、かなりの危機感を抱いて書かれてい

る。

その第一段階の軍事指揮権返還には韓国軍が、

北朝鮮の核とミサイルに対する対応体系の構築

・作戦統制権を行使できる韓国軍の軍事的能力

の条件をクリアすることで米韓は合意しているという。

 

さらに、前大統領だった朴槿恵(パク・クネ)の時にはこの条件を満たすため、二〇二〇年代初めまでに、三つの軍事能力(韓国型三軸体系)を構築する計画を実行に移したとされ、現大統領の文在寅(ムン・ジェイン)もこれを引き継ぎ、「韓国自主防衛能力の構築」へと力を注いでい

る。

1
、「キルチェーン」―北朝鮮にミサイル発射の兆しがあれば、その核・ミサイル施設を先制攻撃できる能力。

2
、「韓国型ミサイル防御システム(KAMD)―北朝鮮が発射したミサイルを迎撃できる能力。

3
、「韓国型大量応酬報後(KMPR)―北朝鮮が攻撃してきた場合に指導部などへの報復攻撃ができる能力。

キルチェーンの核心にあるのが偵察衛星で、アメリカに依存している偵察衛星を独自に保有し、二〇二一~二三年に五機(レーダー搭載衛星四機、赤外線センサー搭載衛星一)打ち上げる計画も文在寅政権は公表している。

二〇一五年から、韓国政府はこの計画に膨大な予算を投入しつづけていると。

韓国では、一九九七年のアジア通貨危機以降から、アメリカ主導のグローバリズムへの反発を契機として反米民族主義の動きが高まり、その結果「民族主体の意識」がせり上がり、北朝鮮反米民族主義への評価が見直され、より親密感を深めていったとされている。

北朝鮮の「自主」なるものは、「主体(チュチェ)思想」という政治イデオロギーの独善性が招いた国際的な孤立を、「自主的であるのはよいことだ」という人々の良心に訴えかけたごまかしにすぎません」(本書)

民主化以前・冷戦体制化の韓国の国家・民族観は、「国家あっての民族」(二つの国家の下にある民族)だったが、民主化され、冷戦体制が崩壊してからの韓国は、「民族あっての国家(つの民族の下にある国家)へと転換したのも肝心だと著者は指摘する。

「南北に共通の「朝鮮民族という枠組みのなかでは、「身内の恥を外部にさらしてはならない」という、儒教的な血縁主義に基づく「身内主義」のモラルが強く働きます。南も北も、同じ血を分けた身内、拡大血縁集団という一個の民族なのです。

南北がいう国家民族の自主、自立、主体には「身内正義」、つまり身内を正義とする朝鮮伝統のモラリズムが深く浸透しています。

だからこそ、そこではおのずと人権よりも民族が大事となってしまいます」(本書)

薄々感じていたことだが、韓国出身の著者が書くと説得力が増す。

朝鮮半島は古代以来、記録されただけでも二〇〇〇年間でおよそ一〇〇〇回外部からの侵攻を受けている。

なかでも高麗時代のモンゴルの侵攻、李氏朝鮮時代の日本と清の侵攻は、朝鮮半島の産業や文化をほとんど壊滅に近い状態にまで陥れた。



戦後は日米を軸とする海洋国家寄りで保たれてきた東アジアの地政学的なバランスを、再び陸国家寄りの方向へ巻き戻していくことで、韓国が両勢力のあいだに立ってバランサーの役割を果たす、新たな東アジアの地政学的な秩序をつくり出していくこと、これが戦後立国した韓国の現在に至るまでの一貫した外交理念であり、そのためには、何としても南北統一朝鮮を実せねばならない、二度と大国に翻弄されないために、と著者は指摘している。

民主化以後の韓国歴代政権は、盧泰愚政権が打ち出した対北朝鮮政策を基本的に継承してきています。それは南北統一方案に限らず、外交政策についても経済政策についてもいえることです。いずれも、盧泰愚政権が示した「北東アジアの地政学的バランス論」に則ったものですが、ここに韓国の政治的性格の最大の特徴があります。

朝鮮半島地政学的な条件は、朝鮮半島の歴史を決定的づけてきたといえるほど大きなもので

す」(本書)

南北統一の方針案は、北朝鮮は「一民族、一国家、二制度、二政府の連邦国家」をもって統一とする案であり、異なる体制を維持したままで連邦国家を形成しようとするもの。

韓国は暫定的に「二国家、二制度、二政府の南北連合国家」を形成し、次に南北総選挙を行い、「一国家、一制度、一政府の統一国家」へと進む案であると。



さらに南北は、北の連邦制国家と、南の南北連合国家とが一致すると合意しているという。

 

そして、その「南北連合国家」の形成をめざした韓国側の考えは、


まず開城工業団地の事業を再開し、これを拡大発展させて南北経済共同体を築いていこうとい

うものであり、それは、経済的な繁栄が北朝鮮を統一の方向へ吸収するというのが、

民主化以後の韓国歴代政権の考え方であるとしている。

(続く)