世界自動車大戦争(3)

中国やタイ、インドネシアと言った(中国は違うが)発展途上の国では、モーターショーは大盛況のようだ、嘗ての日本の様に。

 

 

工藤貴宏「幸せになるためのクルマ選び」
東京モーターショー、凋落が鮮明だが…規模は中国ショーの4分の1、海外メーカーが続々撤退
2019.10.27
                           文=工藤貴宏/モータージャーナリスト

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東京モーターショー2019の様子 

 お台場周辺で開催中の東京モーターショー2019。同ショーは、かつては大盛況だったが、昨今は凋落が叫ばれている。

 モーターショーの盛り上がりの目安は「来場者数」と「出展自動車メーカーのラインナップ」となるが、来場者数はバブル経済の最後のタイミングとなる1991年に2018500を動員したのをピークに減少し、リーマン・ショック直後の614400人という最低記録(商用車開催時を除く)からは上昇に転じたものの、それでも前々回となる2015年は812500人、前回の17年は771200人と、かつての勢いはない。

 出展自動車メーカーも、リーマン・ショックをきっかけに海外勢が続々と撤退。今年の海外ブランドの参加は「メルセデス・ベンツ」とその傘下の「スマート」、そして日産自動車とアライアンスを組んでいる「ルノー」とそのスポーツカーブランドの「アルピーヌ」、そしてBMWをベースにした高性能モデルを製造している玄人向けメーカーの「アルピナ」のみ。日本においてもメジャーな輸入車メーカーである「フォルクスワーゲン」や「BMW」、そして「ポルシェ」は前回は参加したものの、今回は出展見送りとなってしまった。

 東京モーターショーはかつて「世界5大モーターショーのひとつ」といわれ、欧米のメーカーがこぞって参加。自動車のトレンドを世界へ発信する場所として重要な地位があった。メルセデス・ベンツが最高級モデルの「マイバッハ」を、「ブガッティ」が販売価格2億円近い少量生産のスーパーカー「ヴェイロン」の市販版を、世界で初めて発表する場所として選んだ“光り輝いていた東京モーターショー”は過去のものとなったのだ。

モーターショー離れ”は東京だけじゃない

 しかし、その状況が東京に限ったことかといえば、決してそうではない。先月、日本と同じく自動車産業が国の基幹産業となっているドイツのフランクフルトで、かつては世界最大の規模ともいわれた「フランクフルトモーターショー(IAA」が開催されたが、来場者数は前回を3割以上も下回る56万人だった。前回の東京モーターショーよりも少ない。

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フランクフルトモーターショーの様子

 また、ドイツ国外の出展メーカーは激減し、日本からの参加はなんとホンダのみ。ドイツが誇るBMWアウディなども、今年は出展規模が大幅に縮小していた。大盛況を誇ったフランクフルトモーターショーも、状況は厳しいのだ。

 さらにいうと、昨年10月にフランスで開催された「パリモーターショー」も同様だったし、自動車大国アメリカが誇る「デトロイトモーターショー」も今年1月の開催でいったん幕を閉じ、来年からは音楽イベントなどを組み合わせた、まったく違うイベントとして新しく生まれ変わるという。
 いずれも「世界5大モーターショー」に数えられるイベントであるが、苦しんでいるのである。

なぜ先進国でモーターショー離れ?

 先進国においてモーターショーの勢いが衰えた理由はいくつか考えられるが、まず考えられるのは「クルマ離れ」だろう。東京モーターショーの来場者が多かった頃は日本でも人々のクルマ熱が高かった。しかし、今ではそこまでクルマが盛り上がっていないのは、程度の差こそあれ多くの先進国に共通することだ。

 さらには、インターネットの普及も大きく影響しているだろう。かつては実際に会場へ足を運んで自分の目で見ないとステージ上のコンセプトカーなどを実感できなかったが、今ではパソコンどころか、スマートフォンによってどこにいても情報を得ることができる。ネットにより、モーターショー情報の量は媒体が紙しかなかった頃と比べて格段に増えている。

 それらの複合的な要因が混ざり合って、先進国のモーターショー離れが引き起こされていると考えられる。

中国をも上回るバンコクのモーターショー熱

 とはいえ、モーターショーの地盤沈下が世界のどこでも起きているかといえば、そうではない。

 たとえば、中国では毎年、北京上海で交互に国際モーターショーが開かれているが、驚くほどの大盛況だ。今や中国が世界最大の自動車マーケットであり、さらなる拡大が見込めるとあって、世界中のメーカーが鼻息を荒くしながら出展している。会場規模も東京の約4と信じられない広さで、間違いなく世界最大の自動車ショーである。

 また、タイの「バンコクモーターショー」やインドネシアの「ジャカルタモーターショー」なども、一般公開日は会場の混雑ぶりに驚くばかり。それらの国は中国と同じく、今後さらに市場規模の拡大が予測されるので、世界の自動車メーカーが積極的に参加し、自国の自動車メーカーがないとはいえ、国際色は東京をはるかに上回る。

 そして、公式発表値で比べると、バンコクモーターショーを訪れた人の数は160万人と東京モーターショー2倍以上で、中国で開催されるモーターショーをも超えて世界最多だ。人々のクルマ熱が高く、クルマが憧れの対象であることも、中国や東南アジア地域におけるモーターショーが大盛況となっている大きな理由だろう。

 今年の東京モーターショーは、イベントのあり方を従来とは大幅に転換し、「見るショー」から「体感するショー」へと変化している。はたして、その変化がイベントの盛り上がりにどう影響を与えるのか、実に興味深いところだ。

 そして言えるのは、かつて会場内のあまりの混雑ぶりに「クルマではなく人を見に行くようだった」と言われていた頃に比べると、来場者が少なくなったことで、展示がかなり見やすくなった。クルマを見に行く人にとっては、来場者数減はむしろ好都合なのである。

(文=工藤貴宏/モータージャーナリスト)

https://biz-journal.jp/2019/10/post_124993_2.html

 

 

まあ、「世界自動車大戦争」と題名の割には内容は貧弱だし、モーターショーに行ってもいないのに大きな顔はするなと言われそうだが、東京モーターショーではその展示の内容は、CASEの方向に向かっているようだ。

(続く)