カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(18)

今回の交渉は、ルノー側から提案...背景に、EVシフトへの出遅れ 

 

交渉には双方の都合があり、当然ながら、それぞれが納得してまとまる。資本関係見直しは日産側の悲願であり、その意味で日産の都合なのだが、今回の交渉は、意外にもルノー側がきっかけを作った。 

 

関係者によると、ルノーが2022年初め、日産に「EV新会社立ち上げ」の方針を伝えて協力を求めてきたという。 

 

この背景にあったルノー側の事情とは、欧州で急速に進む電気自動車(EV)シフトへの対応だ 

 

欧州でのルノーの販売シェアは最大手の独フォルクスワーゲンの半分にも満たず、EVでも出遅れている。巻き返すには経営資源をEVに集中する必要があると判断、そこで頼りにしたのが日産の資金と技術というわけだ。 

 

要請を受けた日産は「資本関係の見直し問題の進展」を協力の条件にし、両社の協議が本格化した。 

 

交渉にはルノー筆頭株主のフランス政府の影もちらついたが、23年1月、マクロン仏大統領岸田文雄首相と会談した際、出資比率見直しを支持すると伝えたとされる。 

 

フランス政府がルノーの日産への支配力の低下を容認した背景には、EV化競争を勝ち抜くには日産との協力が不可欠との認識がある。「3社連合が機能しなくなれば、ルノーがEV開発競争から脱落し、自動車産業に従事する国内の雇用にも響くことをフランス政府は何よりも恐れた」(業界関係者)との見方が一般的だ。 

 

交渉で最後まで障害になったのが、昨秋の記事でも指摘した知的財産の扱いだった。 

 

ルノーのEV新会社には米国の半導体大手クアルコムも出資し、ルノーは米グーグルとの協業も進める方針だ。日産は技術が第三者に流出することを警戒した。最終的にルノーが、新会社での知的財産の利用を制限する譲歩案を提示し、折り合ったという。 

 

ライバルと戦える体制は整った...日産「ルノーを気にせず事業戦略に集中できる」 

 

今回の合意により、ルノーはひとまずEV化競争で戦える体制を整えたといえる。 

 

一方、日産はどう変わるのか。 

 

内田誠社長は2月6日の会見で「新しい体制が相互の信頼を深め、モビリティーの未来に向けて我々の共通の野心を加速させられる」と語った。業界関係者は「ルノーを気にせず事業戦略に集中できる意味は大きい」とみる。 

 

ただ、EV化のほかに自動運転などを含め、自動車業界は100年に一度の転換期を迎えている。業界内の合従連衡に加え、グーグルやソニーといった異業種からの参入も相次ぎ、競争は熾烈を極める。 

 

日産は22年6月に国内で発売した軽自動車のEV「サクラ」が23年1月末時点で約3万7000台を受注する好調な出足だった。5年間でEV化に約2兆円を投じ、30年度までに世界の販売車種に占めるEVとHVの比率を計50%以上に高める目標も掲げている。 

 

ただ、トヨタ自動車やホンダと比べ稼ぐ力はなお乏しく、研究開発費でも見劣りする。日産であれ、ルノーであれ、単独で現下の競争を戦えるわけではなく、それゆえの3社連合維持でもある。 

 

資本をめぐる緊張関係は緩和されたとはいえ、3社の連携をどう再構築し、世界の強豪に伍していくのか、日産やルノーに残された時間は多くないだろう。(ジャーナリスト 済田経夫) 

https://www.j-cast.com/kaisha/2023/02/14455912.html?p=all 

 

 

ヨーロッパでのEVシフトは、思いのほか切実なものと認識されている、と小生は感じている。ルノーはBEVの新会社「アンペア」に日産の参画を、とりあえず取り付けることが出来て、EVシフトへのとっかかりが出来てほっとしていることでしょう。 

(続く)

カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(17)

先ずなんと言っても、この日産が「ルノーを気にせず事業戦略に集中できる状態」になった意味は大きい。 

 

またルノーとしても、EVで出遅れていたものを立て直すことのできる状態に戻すことが出来たと言える。日産の技術と資金を、潤沢にとは言わないが使えることになったのであるから。 

 

だが日産はICE車開発関連の新会社「ホース」へは、共同知財の利用を認めないと返答している。BEV関連の新会社「アンペア」へは、日産は最大で15%出資するとしているが、EVなどの共同知財についても、ルノーの譲歩を引き出したことにより、日産の知財が守られたのであろう、だから出資に同意したものと思われるのである。 

 

アンペア」でのメリットを日産は期待するよりも、独自の事業戦略に精を出すのではないのかな。その方が、ルノーとチマチマやるよりも成長性が期待できるのと言うものではないのかな。日産は軽EVで好調を博しているので、これを機に特色あるBEV化に邁進してほしいものである。 

 

その点どんな経営戦略をとるのか、内田誠社長の腕の見せ所となろう。 

 

 

 

日産とルノー、いびつな「不平等」ようやく解消...仏政府も支持 熾烈なEV化競争の渦中、勝ち残り容易でなく 

2023年02月14日18時45分 

 

日産自動車に対するフランス自動車大手ルノーの出資比率に関する交渉がようやく決着した。合意に至る過程はなかなか複雑だった。 

 


日産とルノー、いびつな「不平等」ようやく解消...仏政府も支持 熾烈なEV化競争の渦中、勝ち残り容易でなく
       

 

三菱自動車を含む3社連合は維持されるが、自動車業界は大きな転換期にあり、勝ち残るのは容易ではない 

 

フランス会社法の規定で議決権がなかった日産 

 

J-CAST会社ウォッチ「日産とルノー、資本関係見直し...日産が求める『不平等解消』へ、協議進んだ『2つの要因』と『今後の交渉ポイント』」(2022年10月28日付 https://www.j-cast.com/kaisha/2022/10/28449012.html)でも報じたとおり、2022年秋に入り、日産とルノーの交渉は大詰めを迎え、11月にも合意すると見られていた。だが、予定より3か月ほど遅れて合意に達し、23年2月6日、3社首脳がロンドンでそろって記者会見して発表した。 

 

合意は、仏ルノーから日産への出資比率を、現在の43%から、日産が保有するルノー株の比率と同じ15%に引き下げ、互いに対等な資本関係にする。そのほか、ルノーが設立するEV新会社「アンペア(アンペール)」日産が最大15%出資。さらに、中南米やインド、欧州で新型車やEV投入の検討など、共同プロジェクトを進めることなどが盛り込まれた。 

 

最大の眼目である出資比率の「平等化」には、昨秋の記事でも取り上げたように、「歴史」がある。 

 

2兆円超の有利子負債を抱え経営危機に陥った日産は1999年ルノーから約6000億円の資本支援を受け、カルロス・ゴーン元会長が最高執行責任者として送り込まれた。ゴーン氏は、大リストラを断行して経営を立て直し、2016年には燃費不正問題で経営が悪化した三菱自動車に日産が出資し、3社連合となった。 

 

両社の株の持ち分は、ルノーが日産の43%、日産がルノーの15%を、それぞれ持ち合う形になったが、日産はフランスの会社法の規定で議決権がなかった。ところが、業績面では22年の世界販売台数が日産322万台、ルノーグループ205万台というように、日産が上回るいびつな関係が続き、日産には「不平等条約」との不満が強かった。 

 

日産とルノーのトップを兼ねるようになったゴーン氏が2018年に東京地検特捜部に金融商品取引法違反疑いで逮捕(日本からレバノンに逃亡し、刑事訴追は停止中)され、両社の関係は混乱する。 

 

19年にはルノー株を15%保有する仏政府の意向を受けたルノーが日産に経営統合を提案、日産の強い反発で白紙に戻るなど、ぎくしゃくした関係が続いていた。 

(続く)

カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(16)

車産業、モノのグローバル化は限界 サービスで合従連衡 

激動モビリティー 日産・ルノー再出発の未来(下) 

自動車・機械2023年2月9日 2:00 [有料会員限定] 

 

「ノーマージャー(もう統合はない)」。1月29日、パリのセーヌ川沿いの建物。ルノーが創業地で開いた会議の席上、ルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)らが資料を取締役らに示した。合意のデメリットとして英文で書かれたものだ。日産自動車への出資の歴史はフランス政府の意向を受け経営統合の夢を追いかけた歴史でもあった。相互15%出資合意で夢は終わった。 

 

軒並み提携解消 

フランス・パリのセーヌ川沿いのルノー創業地にある建物で取締役らの会議が開かれた         

 

1990年代は巨大な自動車メーカー同士の大再編の幕開けの時代だった。象徴が世紀の大統合と称された、98年のダイムラー・クライスラー(後に独メルセデス・ベンツグループと欧州ステランティスに再編)だ。 

主導したのは海外メーカー。バブル経済の崩壊で経営難となった日本車メーカーへも次々と触手を伸ばした。日産だけでなくマツダ三菱自動車も欧米メーカーの傘下に入った。 

 

 

 

車産業は車両の大量生産でコストを下げ、標準のガソリン車を世界展開する戦略が基軸となったが、現在は90年代以降の日本車と海外メーカーとの提携は軒並み解消。今やルノーと日産、ホンダと米ゼネラル・モーターズGM)など一部を残すのみだ。

 


 

 車両などモノのグローバル化は限界を迎え、ソフトサービスを中心にした合従連衡が主体の新グローバルの時代に入った。 

 

長らく世界最大手メーカーとして君臨したGMはその象徴だ。欧州などで環境対応が求められるようになっても、大量のガソリンを消費する「ピックアップトラック」が主力の米市場に引きずられ環境技術で出遅れた。 

 

2017年には欧州から事実上撤退し中国、南米を除く世界のほとんどの地域の事業縮小に追い込まれた。 

 

フォルクスワーゲンVW)は環境対応でディーゼル車にシフトしようとしたが不正でつまずいた。トヨタ自動車をはじめ日本車メーカーはお家芸ハイブリッド車(HV)で存在感を高めたが、EVシフトでは出遅れたその間に米テスラ中国・比亜迪(BYDなど新興勢や異業種が、伝統的な車大手の間隙を突いた。 

 

 

世界初の量産ガソリン車である「T型フォード」が誕生した1900年代以降、車産業は動力が変革のカギだった。東京大学生産技術研究所の中野公彦教授は「付加価値の源泉は動力から、車が提供できる機能に変わっていく」と指摘する。 

 

EVは早くも標準化が始まり、特許やソフトウエアなど知的財産の重みが増す。それぞれの地域や国で車に求められる規制や価値はますます多様化する。日仏連合は連携の新しい形を模索するが難路だ。 

 

日産の内田誠社長兼CEOは「今までの延長線上では成長できない。カルロス・ゴーン被告時代の)古傷もある。24年分のツケが回ってきた」と話す。日産もモノのグローバル化の壁に阻まれた。欧州はルノーに任せるといった柔軟な姿勢が求められる。 

 

ドイツでは脱炭素の供給網構築のため車の原材料などのデータを共有する「カテナX」が立ち上がった。完成車や部品メーカー以外に米マイクロソフトや独SAPなど異業種が幅広く加わる連合だ。知財やソフトなどIT(情報技術)でも規模がなければ勝負の土俵に上がれない。緩やかな提携が解になる。 

 

 赤間建哉、湯前宗太郎、林英樹、北松円香、堀田隆文が担当しました。
 

 

【関連記事】 

・車300兆円、知財を軸に再編 産業秩序転換の号砲 

・日産・ルノー、車再定義へ迷走終止符 「大流動化」の一歩 

・日仏3社連合とは 資本見直し、長年の課題 


https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC303T10Q2A231C2000000/ 

 

 

 

CO2ゼロを巡るクルマ業界の動きは今のところ混沌としているが、このルノー・日産グルーブの不平等な資本関係の解消により一段落するどころか、ますますEVを巡る動きは活発になってゆくのではないのかな。 

(続く)

カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(15)

知財は企業の生死を握る。後では取り返しがつかない」。日産の内田誠社長兼CEOはルノーとの交渉が続く中、周辺にこう繰り返した。「『ゴーン時代』の四半世紀で共同特許などの運用ルールは曖昧になっていた」(日産関係者)という反省があった。 

 

 

日産株43%を持ち優位な立場にあるルノーが対等な資本関係を認めたのは、日産のEVや自動運転車などの特許技術が今後の競争に欠かせず、EV新会社への出資も引き出したかったからだ。ルノーが譲歩し合意に至った6日、内田氏は「議論を尽くした」と述べた。 

 

 

次世代車の成否は知財にかかり、今後の再編は知財の競争力をいかに強化できるかがカギになる。特許調査会社のパテント・リザルト(東京・文京)によると主要分野の特許数はトヨタ自動車が軒並み首位。モーターなどEV関連は7738件、全固体電池は1431件もある。 

 

日産・ルノーをみるとEVは2542件で4位。全固体は177件でトップ5位圏外だ。つながる車は3634件で3位。先進運転支援システム(ADAS)は定評がある。車シェアといった移動関連サービス「MaaS(マース)」などで498件と3位だ。 

 

独調査会社のスタティスタによると世界車市場(トラックなどを除く)は2027年に2兆1800億ドル(約300兆円)に達する。そのうち30%超をEVが占める見通しだ。 

 

米調査会社試算では車のソフトウエア市場規模は30年に今の3倍近くまで膨らむ。1960年代にはゼロだったのが、車産業全体の価値の半分をソフトが占める。富の源泉は工場や生産技術から、特許やソフトなどに移る。車は単なる乗り物ではなく関連サービスも含めた「モビリティーへ転換する。 

 

 

「X万台クラブ」――。車メーカーの再編はこれまで世界販売台数に象徴される規模が重要な意味を持った。コスト削減やブランド力の裏付けとなるからだ。 

 

1999年に始まった日産・ルノー連合も規模を追求した再編だ。400万台から1千万台クラブへの飛躍を目指し、部品や車両設計などの標準化でコストを抑えアジアなど新興国に広げた。 

 

だが、生産設備などの規模を追求した連携は国や地域ごとのマーケットの変化にうまく対応しきれず限界に来ている。 

 

今や再編は車メーカーにとどまらず、車参入が取り沙汰される米アップルやEVでホンダと組んだソニーグループなどの異業種をまき込む。 

 

「車産業は生まれ変わらなければならない」。ルノー筆頭株主であるフランス政府のマクロン大統領は強調する。かつては大統合の絵を描いていたが、ルノー・日産の新体制を支持する姿勢に転じた。乗り遅れれば国力を揺るがすとの危機感がある。日仏連合の再出発と時を同じくして産業秩序の大転換が始まる。 

 

【関連記事】 

・切迫ルノー日産自動車動かす 四半世紀で立場逆転 

トヨタの新章開く「カーガイ」 社長に就く佐藤恒治氏 

・日産、ルノーと対等出資で合意 EV新会社に15%出資 

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多様な観点からニュースを考える 

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。 

 


福井健策骨董通り法律事務所 代表パートナー/弁護士
  

 

分析・考察 

2030年には車のコストの50%はソフトウェア費になる、という記事もありましたね。まさに「軸は知的財産に移る」ということです。自動車に限らず、小資源・成熟社会の日本にとって、知財・情報産業が生命線であることは間違いないでしょう。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN011RU0R00C23A1000000/そして知財というとすぐに開発や特許が頭に浮かびますが、記事にある通り、それを守り生かすための契約交渉は同じくらい重要です。また杉本さんのおっしゃっる暗黙知も、極めて正しい視点です。これらの開発環境・権利化・その普及と契約交渉力。それらを含んだエコシステムの全体が「知財」であるということを、理解し活かせる法務部門の充実が、急がれますね 

2023年2月8日 8:24 

 

 


山崎俊彦東京大学 大学院情報理工学系研究科  教授
 

 

別の視点 

全く違う分野ですが、みなさんが画像や映像で絶対にお使いになるJPEG/MPEGという世界標準規格があります。当然、これらも知財の塊なのですが、企業間で個別の交渉をしていては大変です。そこで、パテントプールという考え方で運用されています。知財を囲い込むのとパテントプールを採用するのは良し悪しですが、そのような運用形態もあるという参考情報としてご紹介します。パテントプールhttps://www.jpo.go.jp/news/kokusai/developing/training/textbook/document/index/patent_pools_jp_2009.pdf 

2023年2月8日 6:31 

 

 


杉本貴司編集委員論説委員
 

 

別の視点 

トヨタ自動車がHVで圧倒的な地位を築いた背景として見逃せないのが、遊星ギアや昇圧システムといった基幹技術に関する特許だけでなく、むしろ特許として公開しない暗黙知の存在です。その後、トヨタ燃料電池車では特許を他社に提供する仲間づくりの戦略を取りましたが、思いのほか反響は小さかった。トヨタ知財を活用することがすなわちトヨタの主導権の下に入ることになるという懸念に加え、そもそも特許として公開しない暗黙知が競争力を左右するという事実が認識されていたことは否めないでしょう。明文化されない暗黙知をどう育て、どう成長戦略に活かすか。知財戦略にはそんな視点も存在すると思います。 

2023年2月8日 4:31 (2023年2月8日 4:35更新) 

(続く)

カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(14)

上記の論考では、ルノー・日産グループは「FACE」と言う車載OSを開発していると書かれているが、このソフト開発はルノー主導で外部委託されているという。しかしながらこの委託先は自動車分野には素人だという。とすると、このソフトはクルマに載せた場合有効に機能するものか、若干心配が残るものとなるのかもしれない。日産の「アンペア」への投資は最大15%だというので、極力少なくするべきなのではないのかな。 

 

BEVは、日産独自でも開発出来るものと思われるし、他にも協業できる企業やベンチャーは、沢山存在するのではないのかな。日産の、と言うよりも内田誠社長の手腕が問われるところなのであろう。 

 

アンペア」は何故合弁企業などの形態をとらなかったのであろうか、と言った疑問も残るものである。ルノーITなどの異業種と組むために、合弁にはしなかったものと思われる。 

 

日産はアンペアへの15%程度の出資で、どれほど効果的な影響を自社に取り込むことが出来るものであろうか。単に、ルノーに使われるだけの存在となってしまわないかと、懸念が残るものである。 

 

なんと言っても、BEVのプラットフォームは日産主導で開発されたものだというではないか。 

 

最も問題となるものは、共同で取得した特許などの知的財産の取り扱いではなかったか。 

 

「アンペア」では、その共同知財はもとより、日産独自の特許をルノーは狙っていたのではないのかな。何とかして、日産独自の特許もこの「アンペア」では使えるように策略していたのではないのかな、とは思い過ごしか 

 

そのための日産株の放出ではなかったか。ならば日産は、知財の保護のために、この「アンペア」には深入りすべきではない、ものと思われる。 

 

この論考でも、「 むしろ課題を突き付けられているのは日産のほうだろう。日産はアンペアへの出資で、いかに実質的なメリットを引き出すかを考えなければならない。15%という低い出資比率にもかかわらず、技術面で過大な貢献を求められれば、日産にとって出資はむしろデメリットになる。開発費用の分担や、開発成果の利用について、いかにフェアな関係を構築していくかが課題になる。」と、言っているではないか。 

 

BEVの開発についてはルノーに主導権を握られ、日産の知財が思うように(ではないにしても)使われてしまい、日産にはそれほどメリットがない、と言った事態は何としても避けねばならない。 

 

だから日産は、知財にとことん拘(こだわ)ったのである。 

 

クルマ産業は、当時、大量生産・大量販売のために開発や生産工程の標準化を推進した。そして世界の市場を相手に、商売を拡大させていったが、近年そのマーケットの複雑な変化への対応に遅れだしてしまった。そして環境対応への適応に真っ先に迫られたのである。その変化への対応のために、ICTなどの異業種の助けが必要となってきてしまったのである。 

 

フランスのルノーは、その動きに乗り遅れそうになっていたのである。だから大統領であるマクロンは、ルノーの衰退と共にフランス自体の国力の衰退を恐れたのである。だからルノーは日産と対等な関係で、再出発せざるを得なかった、と言う訳ではないのか。 

 

 

車300兆円、知財を軸に再編 産業秩序転換の号砲 

激動モビリティー 日産・ルノー再出発の未来(上) 

2023年2月8日 2:00 [有料会員限定] 

 

(左から)内田誠日産社長、ルカ・デメオルノーCEO、加藤隆雄三菱自社長らによる6日の記者会見=ロイター     

 

【この記事のポイント】
・日産とルノーの資本関係見直し交渉は知的財産を巡り曲折
ルノーが対等の関係を受け入れたのは日産の特許が必要だから
・自動車再編は車メーカーにとどまらずIT企業なども巻き込む 

 

日産自動車と仏ルノーが15%ずつを出資し資本関係を対等にすることで合意した。世界で年間300兆円に達する自動車産業の再編は知的財産に軸が移る。電気自動車(EV)シフトやソフトウエアが重視される中、車の機能は知財が左右する。自動車産業は新たな価値創造を迫られる大変革期に入った。 

 

ふざけている。知財は絶対に守る」。詰めの協議に入ったある日、日産幹部は憤りをあらわにした。EVの共同特許などの扱いが不利になりそうだったためだ。 

 

合意は近いと踏んだルノーのルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)は日産側の思わぬ抵抗にあぜんとしたという。知財の溝は深く交渉はたびたび暗礁に乗り上げた。 

(続く)

カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(13)

CO2の排出基準は 

2021年~ 95g/km以下1990年規制)となっているが、 

 

・乗用車   2030年目標 -37.5% → -55%へ、2035年目標 -100%(排出0) 

・小型商用車 2030年目標 -31.0% → -50%へ、2035年目標 -100%(排出0) 

インセンティブ 一定のZEV車の販売目標値達成メーカーは、排出基準値 

         の5%まで緩和する措置は、2030年で打ち切る。 

・小規模生産者への適用除外措置 2030年に打ち切る。 

 (乗・千台~1万台、商・千台~2.2万台の新車販売/年 ) 

https://ecocar-policy.jp/article/20210720/ 

 

繰り返しになるが、こんな内容と言ったもののようだ。 

 

まあ、重ねて言うのだが、ICE・内燃機関の新車はEUでは、2035年には販売できなくなる、と言うことで、日本が得意のHEVやPHEVも販売が出来なくなるのである。そして、BEVへの急速充電設備の設置が急務となってくるものと思われる。思われる、ではなくて必須となってくるのである。 

 

EUの環境対策と当時に、トヨタのHEV潰しの電気自動車シフト政策である。そのとばっちり(?)を、ルノーも受けているものと思われる。慌ててかどうかは知らないが、ルノーは「アンペア」という電気自動車の新会社を作ろうとしているのである。 

 

 

日産・ルノーの資本比率見直し、EV新会社「アンペア」への出資メリットは? 

2023.3.2 

鶴原 吉郎=オートインサイト代表 

 

 日産自動車とフランスRenaultルノー)の提携の見直しが発表された。ルノーが日産への出資比率をこれまでの43.4%から15%に引き下げることや、これまで議決権が与えられていなかった日産の持つルノー株15%に、議決権が与えられることばかりに焦点が当たり、ルノーが日産に対して譲歩しているような論調が目立つ。しかし筆者は、ルノー今回の提携見直しで、欲しかったものはちゃんと手に入れたと考えている。 

 

 そもそも、今回の提携見直しは、ルノーの事業再編の一環としてなされた。ルノーは現在、事業を「EV(電気自動車)とソフトウエア」「エンジンとハイブリッド」「プレミアム」「ファイナンスとモビリティーサービス」「リサイクル」の5つに分割・再編しようとしている。EVとエンジン車では「稼ぎ方」が大きく変わってくる以上、EVとエンジン車の事業を分割することは利にかなっている。 

 

 今回、日産の出資が取り沙汰されているルノーの子会社「アンペア(Ampere)」は、この「EVとソフトウエア」を担当する。一方、「エンジンとハイブリッド」を担当する子会社は、中国・吉利汽車(Geely)の親会社である同・浙江吉利ホールディングス(Zhejiang Geely Holdings)と折半出資で設立する予定だ。日産にはこちらの子会社への出資はメリットがないとして見送った経緯がある。しかし、アンペアへの日産の出資に対して、ルノーは強くこだわった 

 

 それもそうだろう。ルノー・日産アライアンスのEVラインアップの中核をなす「CMF-EV」プラットフォーム(common module family)は日産主導で開発されたものだ。またルノーはこれまで主に韓国LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)からEV用バッテリーを調達してきたが、今後は日産も出資する中国Envision AESC Group(エンビジョンAESCグループ)からの調達を拡大する。さらに将来的には、日産が開発を進める全固体電池の採用も視野に入れているだろう。つまり、今後アンペアがEV事業を展開するうえで、日産は不可欠なパートナーだった。この重要さに比べれば、ルノー本体の日産への出資比率を引き下げることは、優先順位としては低かったといえる。またルノーとしては日産株の売却益も得られるわけで、出資比率を引き下げる実質的なデメリットはほとんどない 

 

 

「CMF-EV」プラットフォーム(写真:ルノー)[画像のクリックで拡大表示] 

 

 

 むしろ課題を突き付けられているのは日産のほうだろう。日産はアンペアへの出資で、いかに実質的なメリットを引き出すかを考えなければならない。15%という低い出資比率にもかかわらず、技術面で過大な貢献を求められれば、日産にとって出資はむしろデメリットになる。開発費用の分担や、開発成果の利用について、いかにフェアな関係を構築していくかが課題になる。 

 

 もう1つの懸念は、ルノーがアンペアで担当するソフトウエア開発の実効性である。ルノー・日産グループは共同で「FACE」と呼ぶビークルOS(車載ソフト基盤)の開発をルノー主導で進めている。しかし、FACEの実質的な開発はルノー社外のソフトウエア開発会社が受託して進めている。このソフトウエア開発会社は、筆者の知る限りでは自動車分野での実績に乏しく、本当に競争力のあるビークルOSを開発できるのかは未知数だ。 

 

 いずれにせよ、今回のルノーによる出資比率の引き下げと、日産がルノーに対する議決権を得たことで、日産の事業展開の自由度が増えるのは事実だ。ルノー浙江吉利ホールディングスとエンジン子会社を設立する以外に、韓国事業でも吉利と提携するなど、日産以外の企業と関係を深めている。日産もルノーとの提携にとらわれず、案件ごとに最適なパートナーを選ぶ機会が増えるだろう。 

 

アライアンスに関する声明 

https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/release-566b1e4f2eb43848021b8d60f613ff74-230130-03-j日本 

 

経済新聞の関連記事https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC083WE0Y2A101C2000000/ 

 

[日経クロステック 2023年2月1日掲載]情報は掲載時点のものです。 


https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00113/00101/?P=2 

(続く)

 

カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(12)

 一般的にe-fuelは、カーボンニュートラル燃料の一種だと解釈されおり、再生可能エネルギー由来の水素など、再生可能な資源からの電池エネルギーを化学的に蓄える燃料を指します(トヨタなど自動車メーカーの2022年6月時点での解釈)。 

 

 こうしたドイツの動きに対して、筆者(桃田健史)はさまざまな機会にその兆候を感じてきました。 

 

 例えば、2022年11月、都内で開催されたランボルギーニのイベントで、来日していた同社のステファン・ヴィンケルマンCEOに筆者が今後の電動化戦略について聞いてみると「ランボルギーニのようなハイエンドなクルマのメーカーにとって、2035年以降もe-fuelの導入を真剣に議論するべきだ」と答えています。 

 

 ランボルギーニは2028年に初のEVを市場導入し、またほかのモデルもプラグインハイブリッド車化する計画ですが、同ブランドのユーザーである富裕層のなかには、たとえプラグインハイブリッド車になっても大排気量のV型ガソリンエンジンを求める声が少なくないのでしょう。 

 

 なお、Fit for 55では、販売台数が欧州域内の年間販売台数が1000台から1万台の乗用車メーカーの場合、2035年まで段階的に引き上げられるCO2規制の対象外としていますが、2035年以降については詳細が決まっていません。 

 

 近年販売好調のランボルギーニが今後、販売台数をさらに増やしていけば、この1万台の壁を越えてしまうかもしれません。 

 

 前出のヴィンケルマンCEOはランボルギーニの親会社であるフォルクスワーゲングループ出身です。そのため、2010年代から世界に先んじてEVシフトを推進してきた同グループ全体としても、部品の共通性が今度さらに高まるという指摘から、e-fuelの必要性を示唆したとも考えられます。 

 

 例えば、EU内での社会情勢の違うさまざまな国や地域で販売されている、フォルクスワーゲン、セアト、シュコダなど、比較的販売価格が低いモデルがあるブランドでは、2035年の完全EV化の壁が高くオプションとしてe-fuelを考えざるを得ないともいえそうです。 

 

VWの新型EV「ID.Buzz(ID.バズ)」© くるまのニュース 提供     

 

VWの新型EV「ID.Buzz(ID.バズ)」 

 

 つまり、Fit for 55という大規模な規制が現実となっていく過程で、欧州域内での社会情勢の違いが改めて浮き彫りになってきたため、欧州域内での販売台数が多いメーカーを抱えるドイツがEUに対して修正案を要請したとも推測できます。 

 

 ただし、Fit for 55が可決して間もない時点でこうしたドイツ主導によるe-fuel活用が要請という形となった背景には、欧州の国や地域の思惑が交錯しているのではないでしょうか。 

 

 そこには、欧州域内だけではなく、アメリカや中国の動きを見据えた、欧州主要国間での政治的な駆け引きがあるように思えます。 

 

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 こうしたEUでの政治的な動きは、当然日本にも及ぶはずです。 

 

 とはいえ、日本では電動化の実現に向け、達成の時期を定めて義務化する規制はありません。また、メーカー各社は日本を含めたグローバルでの販売主要地域が違いますし、アライアンスなど他社との事業連携の状況でも差があります。 

 

 今回のドイツのEUに対する要請をどう捉えるかは、日本の自動車産業全体というより、日系メーカーそれぞれで捉え方が違うのではないでしょうか。 

 

https://kuruma-news.jp/post/620436 

 

 

上記論考の「 例えば、EU内での社会情勢の違うさまざまな国や地域で販売されている、フォルクスワーゲン、セアト、シュコダなど、比較的販売価格が低いモデルがあるブランドでは、2035年の完全EV化の壁が高くオプションとしてe-fuelを考えざるを得ないともいえそうです。ある様に、2035年完全EV化は「壁が高い」どころか、まったく成り立たない可能性がEUでも(特に)中東欧諸国ではあり得るのである。とするとこの「Fit for 55」と言う法律はどうなるのか、と言う疑問が生ずるのである。 

 

ルノーでさえ慌てふためいて(?)いるわけで、ましてやその他の弱小国や弱小メーカーでは、法律で決められてしまえば、その影響は計り知れないものと思われるのである。 

 

ドイツでさえ、頭が痛い状態、であったのであろう、もともとEV化の原点であった「ディーゼルゲイト事件」を起こしたVWですら対応が難しい、と言うよりも不可能に近いものであると感じていたのではないのかな(とは少し言い過ぎの感がないのでもないのだが)。 

(続く)