(9)世界の論調
ちなみに世界各国の北京五輪のこの聖火リレーに対する論評を調べてみると、
以下のような辛らつなものばかりだ。一寸古いが日付は3月。
(http://sankei.jp.msn.com/world/china/080321/chn0803212235015-n1.htm)
1.五輪の開催権を得るため、人権状況の改善を約束した。
(米紙ニューヨークタイムズ18日電子版)
2.人間の尊厳保持に重きを置く平和な社会を推進するとした五輪憲章に違反
している。
(米紙ワシントンポスト19日電子版)
3.中国政府はチベット問題に関し、抗議活動を弾圧し、報道管制を敷き、北京五
輪の威信を保つと言うみっつの目標を同時に達成することはできない。チベッ
ト仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世と対話の席につき、チベットの新しい地
位について交渉するときが来た。
(英紙タイムズ21日付け)
4.北京がこれを受け入れられないときは五輪開催が危機にひんする。
(英紙タイムズ21日)
5.中国政府がチベットに中国の統治を押しつけ、自治を与えないのは間違い
だ。チベットで起こっている出来事とチベット族文化の見解を隠蔽することも誤
りだ。
(英紙フィナンシャルタイムズ17日アジア版)
6.中国政府は18日、チベットが秩序下にあると発表したが、19日に強硬措置
をとるなど言動が一致していない。
(独紙フランクフルターアルゲマイネ20日)
7.もし北京政府が融和の態度を取らなかったらチベット危機は五輪の良好な
運営を危うくしよう。ダライ・ラマが反乱を指導したとはダレも信じていない。
(仏フィガロ19日付け)
8.騒乱が発生した場合、まず最も厳格な手段で人々の生命と財産を守り、無秩
序に歯止めを掛けるのがあらゆる政府の義務だ。注目に値するのは、世
界的な規模で攻撃的な、少なくとも政治的に活発な仏教が現れていることだ。
(国営ロシア通信の評論員の論評17日)
9.「ダライ集団」による組織的陰謀的扇動的な破壊活動は、党の指導のもとチ
ベット政軍警民一致団結で完全制御した。…独立分子を待つのは、歴史上最
も厳しい審判だろう。
(中国紙チベット日報20日)
なお、北京オリンピックについては、当ブログの'07/9~'07/10の同名のブログ
を参照願いたい。いかに毛沢東がチベットを侵略したかが、そこには述べられ
ている。
(10)第112回IOC委員会総会 in モスクワ
1.モスクワIOC委員会総会
2001年7月13日、モスクワで第112回のIOC委員会総会が開かれていた。
2008年のオリンピック開催地を決定する投票が行われていたのだ。
立候補都市は、大阪、北京、トロント、パリ、イスタンブールの五つの都市。
第1回投票で、大阪は落選、6票しか得られなかった。手練手管を必要とする
候補地選定活動。大阪は準備不足に加えて、実弾が不足していた。
中国はサマランチを始め、大勢の関係者に濃密なコンタクトをしたと想像できる。
アメリカ議会は、2001年7月10日、中国の人権侵害を理由に北京での五輪開催
に対して「反対しない」ことを決めた。サマランチも五輪開催地に中国を固執して
いた。江沢民の手紙を見れば、サマランチは中国と相当ねんごろな関係になっ
ている、と思われる。サマランチはこれを置き土産に引退する、五輪の利権を
握ってだ。しかも、ローザンヌの五輪博物館は「サマランチ・オリンピック博物館」
と改名されてしまった。
アメリカもアメリカで、13億人の人口を抱え、急速に経済成長している中国市
場に、五輪ビジネスの巨大マーケットを見、アメリカ資本の投資先として、人権に
対する目先が暗んでしまったものである。それだから、ブッシュは全世界から総
スカンを食っている北京五輪の開会式に出席すると息巻いているのである。
ブッシュにも相当カネが渡っているのかも知れない、だから欠席と言えないのだ。
投票結果は次の通り。
第1回 44 20 15 17 6
第2回 66 22 18 9 -
サマランチの「シティ オブ ベイジン」で、第29回夏季オリンピックは、北京と
決まった。2008年8月8日から8月24日までの17日間だ。
1964年(昭和39年)の東京大会、1988年のソウル大会、東京から45年、
ソウルから20年目にして3回目のアジアでの夏季オリピックの開催である。
(続く)