中国の厚顔無恥(7)

第七 は、いわずと知れた四川大地震の発生である。

胡錦濤が帰国した5月10日の2日後の5月12日午後2時半ごろ、四川省ブン川

県の地下10kmを震源としたマグニチュード8.0とする大地震だ。

前回のテーマ「中国覇権主義」でも紹介したように、(唐山地震のときは全くの情

報閉鎖を行った中国であるが、)よほど困ったのか、または、この混乱を中国共産

党の政治宣伝に使えると見たのか、今まで受け入れてもいなかった外国からの

救援や医療援助をすばやく受け入れることとなった。しかも実現はしなかったが、

日本には自衛隊の輸送機で至急にテントや毛布などを送ってほしいとまで泣き

ついてきた。

四川大地震については新聞、テレビなどで盛んに報道されているので細部はそ

ちらに譲るが、WiLL8月号の論文を中心に2、3注目記事を紹介したい。

(1)  救援よりも宣伝報道

中国共産党政府が真っ先にやったことは、救援よりも宣伝会議だった、と石平氏

WiLL8月号のペマ・ギャルポ氏との対談胡錦濤北京五輪なんかやるん

じゃなかった」で紹介している。救助活動が始ったのは翌日の13日の朝からで

あったが、宣伝会議は救援開始に先立つ5/12の夜に開催されている。そして

報道関係者を集めて次の報道方針に従え、と命じている。

「わが党と人民解放軍が、いかに、人民の命を優先し、勇敢に救ったかを

中心に報道せよ」と。救援よりもまず宣伝を優先したのである。これによってチ

ベット問題はもみ消せる、と考え「共産党賛美」・「人民解放軍賛美」の報道を大

々的に流した。そしてチベット問題の関心は世界から薄れていってしまった。

中国当局はカメラやマスコミがいるところでは一生懸命救援活動をするが、カメラ

が行っていないところは放置されていると言う。そして救援物資なども幹部などが

横取りしてしまうと言う。

(2) 壊滅した核関連施設

さらに石平氏は次のことも指摘している。

温家宝首相は地震発生後、数時間で現地入りしマスコミの目を一身に集めた

が、胡錦濤5/12から5/15間での3日間は姿を消していた温家宝

の耳目の集中は、もちろんチベット問題から全世界の目をそらす事にもその目

的があったが、もっと重要な事実がそこには隠されていると、指摘している。

これは明らかに陽動作戦である、とペマ・ギャルポ氏は言う。世間の目が温家宝

に向けられている内に、胡錦濤核関連施設などの事後対策、メディア対策を

協議し、取りまとめたのではなかろうか。

ペマ・ギャルポ氏は1953年チベットに生まれ、ダライ・ラマ法王に従いインドに

亡命。少年期を難民キャンプで過ごした後、1965年の12月に来日し2005年

11月に日本に帰化桐蔭横浜大学大学院教授や石平氏と同じく拓殖大学客員

教授ほか。石平氏は1962年生、2007年11月に日本に帰化している。

日本のマスコミではあまり報道されていなかったが、四川省には核兵器関連施設

が相当数建設されている。毛沢東は60年代に核兵器の大量製造を命じるが、

中国沿岸部にあったそれらの施設を防衛上、機密上の理由で四川省の山間部

へ移動させた。それらの軍事施設、とりわけ核兵器製造工場やミサイル基地が、

今回の地震で壊滅的な打撃を受けたと言う。四川省に秘匿されてきた核兵器

造所や研究施設がほぼ壊滅して、軍の首脳等が真っ青になっている。したがっ

て、地震直後震源地・ブン川から北東方向の山々に通ずる道路は、軍の特殊部

隊によって完全に封鎖され、厳戒態勢がとられた。そこを『被爆防止作業着』を来

た兵士を乗せたトラックが、頻繁に通っていったと言う。

「中国核工業建設集団公司」は、広元県西北部(綿陽市の北東)にある。そこの

「821」工場はプルトニウムと核弾頭を生産する主力工場であるが、ここも甚大

な被害を受けていると言う。救助隊は工場の核施設にセメントを流し込む補強作

業を行っていたと言う。このプルトニウムを製造する主力工場は、従業員が3万

以上もいると言う。一説によると地震後施工現場で6人の作業員が死亡したと

うが、こんなものではなかったであろう。相当数の被害と犠牲者が発生してい

る筈である。

胡錦濤が姿を消していた3日間では、どんな対策が練られていたのであろうか。

3カ月後に開催される北京オリンピックを控え、犠牲も厭わず総力を挙げて放射

能漏れや被害の拡大を防ぐ対策に没頭されていることであろう。ソ連の「チェルノ

ブイリ原発事故」以上の危機的状況なのであろう。しかし中国は、それを黙して

語っていない。日本は放射能汚染の被害に怯えなくてはならない。政府は万全

体制で放射能監視を継続する必要がある。この点でも、福田政権は何かを

隠しているような気がしてならない。

これら中枢戦力の被災が、中国の核戦力にどれほどの被害を与えたのか、米国

はすべて把握しながらも機密にしており、同盟国・日本にさえ一切の情報を供与

していない。

とwiLL8月号で宮崎正弘は述べている。日本政府は当然の権利として米国

にこれらの情報の提供を求めるべきである。機密情報は公表する必要はさらさ

らないが、国民に危険があれば、情報源は機密にしても、それとなく危険を避け

るべく誘導する必要がある。毒餃子どころの騒ぎではない、大事(おおごと)なの

である。

(続く)