五輪直前、中国官民衝突相次ぐ

8月4日早朝中国・新彊で国境を警備する武装警察が襲撃された。

中国新華社通信によると、新彊ウイグル自治区カシュガルで、8月4日午前7時

55分頃、朝の訓練に向かう国境警備部隊の行列に、2人組がダンプカーで突

入し、手榴弾を2発投げ込み、ナイフで警察官に切りつけた。

この結果、警察官16名が死亡し、更に16名が負傷した。

7月21日昆明市で起きた、路線バス連続爆破の記憶覚めやらぬ内の爆発事件。

北京五輪の成功を最高使命と考え、新彊ウイグルチベットの独立派勢力

重大な脅威と考えて手を打ってきた中国の公安当局に、耐え難い大きな衝撃を

与えた。

新華社通信が伝えるところによると、中国の警察当局は、今月1日から北京五

輪開会式の8日までの間に、ウイグル独立派「東トルキスタン・イスラム運動

(ETIM)」によるテロ計画の情報を掴んでいたと言う。テロ情報を事前に察知し

ながら、事件を防げなかった胡錦濤指導部は衝撃を受けている。

7月21日の昆明でのバス爆破事件は、「テロや北京五輪との関係を示す証拠は見

つかっていない」と強調したが、さすが今回の武装警察が襲撃された事件は、すぐさま

「テロの疑いが強い」と表明している。更に脅威なのは、ウイグル独立派は国際テロ組織

アルカイダなどの支援を受けていると見られるからだ。

中国政府は五輪の安全対策として事前摘発を強化していた。事実、ウイグル

治区のクレシ・マイハスティ副主席は8月1日の記者会見で、今年前半で五つの

テロ計画を未然に防ぎ82人を拘束したと説明、「敵対分子の攻撃に対応できる

十分な準備が整っている」と豪語している。それだけにこの襲撃事件は心痛の

極みであり、これ以上の失策は胡錦濤政権の求心力を弱めるだけとなる。

最近の事前摘発の事例を列挙してみる。(8/5中日新聞朝刊より)

(1) '07年1月自治区公安庁が山岳地帯にあるETIMのテロリスト訓練基地を

  破壊、18人を殺害と発表

(2) '07年11月自治区の裁判所は、ウイグル独立活動家3人に対し、テロ訓

  練基地を設けて訓練を行ったとして、国家分裂罪で死刑判決

(3) '08年1月自治区の区都ウルムチで警官隊が独立派のアジトを急襲、銃撃

  戦で2人を射殺、15人を逮捕

(4) '08年3月ウルムチ発北京行きの中国南方航空旅客機内でウイグル族

  少女によるテロ未遂事件が発生し、甘粛省内に緊急着陸。乗客乗員は無事

(5) '08年4月、中国公安省は北京五輪の破壊を目的にテロ活動を計画してい

  たとしてウイグル独立派2グループの45人を逮捕

(6) '08年6月ウルムチで厳戒態勢の中、聖火リレー

(7) '08年7月雲南省昆明で連続バス爆破事件が発生し、2人死亡。「トルキス

  タン・イスラム党(TIP)」が犯行声明

(8) '08年8月自治区カシュガルで、武装警察隊の施設に手投げ弾2発が投げ込まれ、

  警官16人死亡、16人負傷

尚、前回のテーマ「中国の厚顔無恥」のNO.14~16では関連の暴動事件などを

  説明しているので、そちらも参照願う。

また同紙によると、北京市では8月1日からすべての路線バスで乗客の手荷物

検査を行うなどテロ警戒を強化している。そして、北京市体育局・孫学才副局長

は4日、「平穏無事な五輪は前提だ。各方面の準備は十分で安全だ」と強調した

と言うが、「地下鉄に爆弾が仕掛けられた」「路線バスが爆発した」等のうわさが

毎日のように流れていると言う。

住民の間には不安と不満が充満してきているようだ。しかしこのような住民の

不満は今に始ったことでもないかも知れない。

(続く)