五輪最中、中国官民衝突相次ぐ(補足1)

8月10日午前2時半(日本時間3時半)頃、新彊ウイグル自治区のクチャ県で武

装グループがタクシーなどに乗り込み、警察施設、ホテル、スーパーマーケットな

どに手製の爆発物を投げ込んだ。グループは15人で、8人が射殺され、2人は

自爆、2人が逮捕された。3人は現在行方不明で、警察は軍を動員して行方を

追っている。

ウイグルでのウイグル人には「人権」がない。どこでも漢族が権力を握っている。

何かあると好き勝手にウイグル人を拘束して連行してゆく。派出所では暴行は

当たり前だ。そして彼等の宗教である「イスラム教」を無視するどころか、抹殺し

ようとしていると言う。断食月ラマダンでは、学校で子供に食事を強要すると言う。

このような中国自治区政府や公安当局によるウイグル人への抑圧が事件の背

景にあり、玉砕覚悟の攻撃も「起きて当然」との声が多いと言う。胡錦濤政権は

躍起になって、連行したウイグル人に残虐な拷問を繰り返し摘発や逮捕を進め

ているが、ウイグル人の怒りや憎しみはますます強くなり、このような事件はなく

ならないだろう。

オリンピック開催中の中国では、ウイグルチベットでの暴動(チベットでも同じよ

うな騒ぎが発生している筈であるが、それは秘密にされているのであろう。)や各

地区での官民衝突などが発生し、胡錦濤は苦りきっていることであろう。

6月28日貴州省で発生した5万人規模の暴動からの1週間は、北京では

「魔の一週間」と呼ばれていると言う。そして地方政府の腐敗と汚職、公安と暴

力団との癒着への怒りや不満は、その極に達していると言う。この5万人規模の

庶民の暴動がその際たる例である。

そして文芸春秋「諸君!」2008年9月号のジャーナリストの富坂聡氏「怒

れる大衆が権力中枢に襲いかかる日」と言う論文に、その背景が詳述されて

いる。

以下、それを引用しながら、事の成り行きを説明しよう。

(1)6月28日、貴州省オウ安県で住民5万人規模の暴動で警察署焼き討ち

(前々回テーマ「中国の厚顔無恥NO.15」参照)

事件は、試験のカンニングをめぐる2人の女子高校生のトラブルから始る。

地元の有力者の娘が同級生にカンニングを依頼するが、彼女はそれを断った。

これを恨んだその娘は、2人の男に同級生を襲わせた。そして15才の彼女は

性的暴行を受け、川遺棄され死体で発見されることとなる。2人の男は逮捕さ

れるがすぐ釈放され、事件は自殺と片付けられそうになったため、高校生達が

集団で警察に再捜査を求めて抗議する。しかし再捜査を強く求めた一人の遺族

に対して、警官がやくざを差し向けて重症を負わせ、やがて死亡する。そのため、

人々の怒りを誘い、5万人規模の暴動に発展する。

この背景には日ごろから警官に対する鬱積した住民の不満が存在する。この

事件を契機に、それが爆発した結果5万人規模の暴動となり、地元の公安だけ

ではどうしても手に負えなくなる。そして中央から3千人規模の武装警察が派遣

された。

指揮官として、北京の総部参謀部の副参謀長が、現地入りした。この措置に

生徒の親達がびっくりして、生徒達を宥(なだ)めて家に連れ帰り、やっと騒ぎが

収まることとなる。

事件は新華社も短く伝えたが、それ以上にネットなどで警察署が炎上する写真

などが毎日大量に流れ、ネットシチズンネチズン)だけでなく広く中国人の知る

ところとなったのである。改めて、人々が公安や権力者に対して強い憎しみ

抱いていることを感じさせた事件となった。

(続く)