ヨーロッパと日本(43)

恵隆之介(めぐみりゅうのすけ)氏著の「敵兵を救助せよ!」(草思社)には、次

のような話も記載されている。それを紹介して、今回の「ヨーロッパと日本」につ

いての筆を置こう。

1943年(昭和18年)11月27日、ニュー・アイルランド島(パプア島の東隣

小さな島)カビエン(島の北端に位置している)西方チンオン島沖で、ラバ

ウル野戦病院からの病兵1,129名を乗せた病院船ぶえのすあいれす丸

(9,25トン)は、米軍のB24爆撃機に爆撃されて沈没する。患者、看護婦、乗

は16隻の救命ボートと発動機艇2隻で漂流するが、12月1日、同じくB24

発見される。そのとき、漂流中の乗員はB24に対してオーニング(キャンバス

などで出来た日よけや雨よけ用のテント様のもの)上に赤十を表示したが、

それを無視して容赦なく機銃掃射が加えられ、看護婦を含む158名が戦死

ている。

小生は、傷病兵1,129名の大半が船と運命を共にして沈み、辛うじて救命ボー

に避難できた人員が158名で、その全員が機銃掃射で亡くなられたと想像す

る。

そのときの無念を想像すると胸が張り裂ける思いである。

多分に一神教徒は、異教徒には容赦しないものである。このケースでは漂流者

キリスト教徒であれば、ここまではしなかったであろう、と想像する。騎士道

いってもそれはキリスト教徒同士の話であり、武士道とは全く異質なものであろ

う。

平成20年10月12日、日本政府は中曽根外務大臣談話を発表している。

2008年(平成20年)10月11日(米国時間)、米国は、北朝鮮が一連の検

措置に合意したとして、北朝鮮テロ支援国家指定解除を発表した。

・・・その際、ブッシュ大統領からは拉致問題については強い気持ちを抱いて

いる。また、日本国民が強い懸念と不安をもたれていることを理解している。

被害者家族への深い同情と、この問題を解決するための誠実な気持ちをお伝え

したい。

との発言があった。我国としては、核問題と同時に、拉致問題を含む日朝関係も

前進するよう、米国を始めとする関係国と緊密に連携しつつ、最大限の努力を

行っていく。

日本政府はこのブッシュの発言の理解の仕方を間違えている。次のように理解

するのが正しい。

「・・・理解はしている。同情も感ずる。しかしそれ以上に米国の国益が優先する

のである。日本は何の牙も持たないポチである。黙ってついてくれば良いので

ある」と。

北朝鮮は核を破棄することはない。日本が一番危ない状況に置かれている。

この現状を打破するにはどうすればよいのか。それはそれ程難しいことではな

いが、政治的には頗る難しいことである。

(続く)