バラク・フセイン・オバマ大統領(28)

米国の国家情報会議と言うものがある。National Intelligence CouncilNIC)と

は、CIAやその他の大学や研究所などの一般機関からの情報に基づき、中・長

期の政治情勢を予測し評価して大統領と政府閣僚に報告する諮問機関である。

そのNIC '08.11.202025年の世界情勢を予測した報告書を発表した。

その中では、米国のライバルとなるのは、中国、インド、ロシアなどの新興国だと

分析し、とりわけ中国については、2025年までに「世界2番目の経済規模と主

要な軍事力を獲得する」と予測している日本については、自民党の優位が崩

れ、内政・外交とも再構築を迫られるとし、米国の国力低下を受け、「同盟の力は

今日ほど強固ではなくなる」と予測。日本の地位は米中のパワーバランスの間

で「板ばさみ状態」になるとして、日本が親米、親中に傾くなど4種類のシナリオ

を挙げている。この項は下記ニュースを引用している。

http://sankei.jp.msn.com/world/america/090118/amr0901181918005-n1.htm

そして伊藤貫氏の論文に戻りそのシナリオを説明しよう。

最初の二つ現在と同様、日本がアメリカとの同盟関係を維持して独立国とし

て存在し続けるシナリオである。

三つ目シナリオは、アメリカの「核の傘」が無効であることが明らかになり

日本が中国の勢力圏に併合されてしまうシナリオである。

四つ目シナリオは、米中両国の「合意」によって米軍が東アジアから撤退し、

アメリカに見捨てられた日本中国勢力圏に吸収されてしまうシナリオである。

つまり、今後15年ほどで(2025年までに日本は中国の属国となってしま

う確率が50%もあると、「信頼できる同盟国」の米国の情報分析官が予測して

いるのである。それだけ日本のサバイバル率は低いのである。そのためには、

どうしたらサバイバル率が上がるのか、を必死に考えなければならないのであ

る。

3.三つ目のポイント

国が生き残ってゆくためには、当然のことながら「自分の国は自分で守る」と言

うことになる。これが三つ目のポイントだ。

条約や同盟関係は、当てにならない。国家の意図は、何時変わるか予測

できない」のである。「永続する同盟関係など存在しないし、永続する敵対関

係も存在しない。永続するのは自国の国益だけだ」とは、19世紀のイギリス首

相のパーマストンの言葉。自国の国益に都合が悪くなれば同盟関係は破棄され

たり、形骸化・空洞化したりする。これは当たり前のことである、とこの筆者は結

論付けている。

ここに一つのサンプルを提示しよう。

日本は、1941年(昭和16年)4月13日に、ソ連との間で「日ソ中立条約」を締

結した。相互不可侵及び他国から攻められた場合にはお互いに守りあい、更に

満州国モンゴル人民共和国の領土の保全と相互不可侵を定めた物である。

有効期間は5年であり、廃棄する場合には満了1年まえに通告することになって

いる。

そのソ連は、1945年8月8日の深夜、「日ソ中立条約」の破棄を宣言し、8月9

日午前零時をもって突如満州国及び南樺太千島列島奇襲攻撃を開始

た。

日本大使館から日本への電話回線はすべてソ連政府により切断されていた。日

ソ中立条約は当然有効であった。ソ連は「屁理屈」をつけて踏みにじったのであ

る。1945年2月のヤルタ会談ルーズベルトチャーチルスターリンによる首

脳会談)での密約を楯に、満州南樺太千島列島を占領するために侵攻したの

である。このため数の中国残留孤児問題60万人の不法なシベリア抑留

問題と10万人近くの過酷死の発生北方領土問題が発生したのである。

この一件を見ても、如何に条約や同盟関係が当てにならないか、と言うことがわ

かるであろう。現在の日本国の基本中の基本である「日米同盟」も、いつまでも

効力を発揮する物でもないことを認識すべきである。現に北朝鮮に対しては、日

本の要求に逆らってまで、アメリカはテロ支援国家指定を解除しているではな

いか。それよりも、アメリカは「北朝鮮核武装をきっかけとして日本が核を持つ

ことを、どうしたら阻止できるか」と言う点に努力を集中していたのである。慌て

て日本に飛んできた「コンドリーザ・ライス」の血走った顔が思い浮かぶ。アメリ

カが北朝鮮に妥協的な態度を取り続けるなら、日本は核武装論に傾くかもしれ

ないと、当時の麻生外相はライス米国務長官に内々示唆したと見られている。そ

れにライスは驚愕して慌てて日本に飛んできたのである。どうして驚愕したかと

言うと、1972年に当時のニクソン大統領が北京を訪問し、周恩来との間で「日

本には核武装させない」とする密約を結んでいたからである。この密約は今で

も生きており、日本が核武装論に傾けば米中間に亀裂が生じて六カ国協議は瓦

解する。だからライス長官は血相を変えたのである。これは、正論1月号日下

公人氏の文章に書かれているものである。だからアメリカは日本を中国に売り

渡すかもしれないのである。

条約や同盟関係は、当てにならない。国家の意図は、何時変わるか予測

できないと、前述したが、もう一つその良い例がある。前章の【6】の(4)「ケサ

ン」の地名のところで、1972年に開始されたハノイなどへの北爆による脅威に

さらされた北ベトナムはやむなくアメリカと停戦協定を締結する。1973年1月2

7日に結ばれたパリ和平協定である。これにより南北ベトナム間に停戦が成立

したのであるが、1975年3月10日北ベトナムパリ協定に違反して南ベ

ナムに大攻勢をかけて、ベトナムを併合してしまう。この協定違反に対して

国際社会は何も言わなかったし、言えなかった。強い軍事力を持つ国が結局

生き残ったのである。

紙に書かれた約束なんぞは、国益の前では、反故同然なのである。

(続く)