さて、中国の海はまことに危険な海である。話を元に戻そう。
57、【湯浅博の世界読解】「中国の海」で米中熾烈 200903180915
2009.3.18 09:15 このニュースのトピックス:オバマ米大統領
中国海軍はこのところ、南シナ海を「中国の海」にすべく米海軍に真っ向から挑
戦している。とりわけ、その重要な拠点となる海南島の周辺で警戒が厳しい。島
に地下要塞(ようさい)をつくって原子力潜水艦を配備し、海中から出入りさせる。
軍事専門家は今回の南シナ海を舞台にした米中小競り合いで、中国艦船の統
合運用ぶりに注目している。
米音響測定船インペッカブルが海南島の南120キロの公海上で、中国海軍の
情報船を含む5隻に「危険な操船行為を伴う妨害」(米国防総省)を受けた。
興味深いのは中国艦の巧みな連携で、最初に海軍のフリゲート艦と航空機
Y-12が出てきた。次いで国家海洋局の情報収集船、海洋漁業局のパトロー
ル船、それに海上民兵のものと思われるトロール船2隻が加わる。
これまでバラバラだった各機関がピタリと呼吸を合わせてきた。
中国艦は危険な距離を超えて8メートルまで接近し、木片をインペッカブルの進
行方向にばらまいて妨害したという。調査船に木片を見舞うとは、いかにも海上
民兵らしいやり方である。
この「海上民兵」というのがクセ者で、外見は漁船だから最初は識別が難しい。
隠した魚雷を発射してくることもあるし、いつの間にか漁船団となって敵を囲んで
しまうこともある。
これを攻撃すれば「敵は無実の漁船を攻撃した」との宣伝に使われる。いわば
海の便衣隊である。南京事件のさい、軍服を脱ぎ捨て後方撹乱(かくらん)した
便衣兵と同じ発想だ。調査船は機銃すら持たないが、放水で対抗したのは妥当
だった。
防衛大学校の太田文雄教授によると、海上民兵は地方ごとに漁民で構成さ
れ、海軍が実施する演習にも定期的に参加して海上作戦で一定の役割を担う。
中国はこの手で、ベトナムが領有していた西沙諸島の一部を1974年に海上
民兵に占領させ、フィリピンでも90年代にミスチーフ環礁を奪わせた。しかも、今
回は軍、海洋局、漁業局などの統合がとれていた。
(続く)