尖閣諸島問題(87)

138,ウイグル暴動】私はこうみる 「チベット騒動」時とは異なる国際社会の反応 上海社会科学院・趙国軍研究員200907110139

2009.7.11 01:39 このニュースのトピックス:金融危機
(Photo)
インタビューに応じる趙国軍研究員

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 新疆ウイグル自治区で5日発生した暴動は在外組織「世界ウイグル会議」のラビア・カ

ーディル(議長)
によるテロ組織がしかけた。この「分裂分子」は6月に広東省で偶然起き

ウイグル族と漢族の乱闘事件を利用し、同自治区で過去最大級の厳重な事件を引き起

こした。

 今回の暴動は宗教問題を主張してはいない。新疆ウイグル自治区に近接する(キルギス

タンなど中央アジア)地域から入り込んだ組織も、今回は目立たなかった。もっぱらカーディ

ルの扇動による暴動だ。

 漢族はウイグル族など55の少数民族との融和と団結を求めており、差別などはない。

一人っ子政策の適用除外など少数民族はむしろ優遇されている。改革開放政策で(経済

的な)格差が生まれていることが不満を生んだが、例えば(漢族の)私の四川省の両親の

生活レベルよりもウイグル族の方が高い。

 昨年3月のチベット騒乱で中国を非難した国際社会だが、今回のウイグル暴動では反応

が違う。今回は発生当初から内外のメディアに広く情報を公開してきた。しかもチベット

乱の後に中国は「北京五輪」を成功させ、金融危機の発生でも世界経済に貢献した。中国

は世界の中で重要な存在になってきた。

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 世界の平和と発展に、中国の安定はもはや欠かせない。米国のヒラリー国務長官が訪中

した際も「人権問題」は大きく提起しなかった。オバマ政権にとって、北朝鮮やイランの核問

題などで中国との協力が必要だ。

 暴動のリーダーは厳重に処罰しなければならない。扇動されて暴動に加わった大衆にも

教訓を与える必要がある。(国外メディアなどは)武力投入というが、「鎮圧」などではなく社

会秩序の維持だ。日本でも米国でも暴動を抑えるのは当然だ。新疆ウイグル自治区の安

定を維持し、暴動再発を予防すべきだ。

 国外メディアは「色眼鏡」をかけて中国を見る報道をやめねければならない。歪(わい)

曲(きよく)した先入観ではなく、客観的に中国の事実を報道してほしい。さもなければ事態

を一段と複雑化させる。(談)

 ■ちょう・こくぐん 1970年、中国四川省生まれ。上海の復旦大学で博士号を取得。専門

新疆ウイグル自治区など東トルキスタン情勢と中央アジア周辺国との国際関係。

http://sankei.jp.msn.com/world/china/090711/chn0907110139004-n1.htm
         

さすがに中国政府側の要員の言うことで、「色眼鏡」をかけた発言である。情報を公開して

いると言うが、中国側の都合のよいものだけを提供しているだけで、情報収集は制限され

ているし、情報統制されている。取材規制もされているし、なんといっても外国の取材記者

が相次いで拘束されている。中国政府の提供するそんな情報が正しいものだとは、世界中

では誰も思ってはいない。
               

NO.134, 中国 異例の「積極公開」 ウイグル暴動激化 現地で会見、取材ツアー 国際世論誘導か』では、次のように述べられている。

【しかし、世界の亡命ウイグル人組織を束ねる「世界ウイグル会議」が暴動を扇動したと断

定した証拠や、暴動の死者のうちウイグル族が何人いるか、などの質問にはあいまいな

回答
に終始した。】

肝心な質問に対しては、なんら答えていない。さすが中国共産党政権側の、趙国軍研究員

様である。核心は見事に外している。次の台湾大学教授の張亜中先生の見方のほうが的

を得ている。ウイグル暴動の背景を三つの要因で説明している。

一つ目は、辺境・民族政策の矛盾だ。

石油開発等ではウイグルは搾取されているし、新疆は安全対策なしの核実験場として使用

されている。

二つ目は、ソ連崩壊によるトルコ系民族の独立である。

独立を果たしたタジキスタンウズベキスタンはトルコ系民族国家である。

三つ目は、民族間所得格差の拡大だ。

そしてその結果、ウイグル族は差別され続け、経済発展の恩恵に与(あずか)っていない。
   

139,【私はこうみる ウイグル暴動】張亜中・台湾大学教授200907111824

2009.7.11 18:24 このニュースのトピックス:テロ

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 ウイグル暴動発生の背景に三つの要因を指摘できる。まず新中国成立以来の共産党

権の辺境政策、民族政策の矛盾だ。

 共産党政権は新疆の石油を極めて低価格で買い上げる一方、工業製品を高価格で売り

つけ(辺境を搾取し)た。政治犯収容所や核実験場も設けた。さらに漢族の入植を大々的

に進めた。1949年には新疆ウイグル自治区の漢族人口は全体の4%だったのにいまは

41%に増えている。これらが新疆のウイグル族の不満や不安を拡大した。

 次に91年のソ連崩壊でタジキスタンウズベキスタンなど(トルコ系民族国家)が独立し

たことが、同じトルコ系ウイグル族の独立心を鼓舞した。

 さらにグローバル経済の進展が中国の民族間所得格差を拡大し、矛盾を増幅している。

西部大開発で漢族は大きな利益を得たが、ウイグル族はそれほどでもないからだ。9・11

米中枢同時テロ以降は(イスラム教徒の)ウイグル族に対する内外の警戒・差別が強ま

り、彼らの孤立感・喪失感を強めた。

 今回の暴動のきっかけは広東省広州の玩具工場における漢族とウイグル族のトラブル

だった。工場経営者は政府の少数民族政策に沿って、1万人の工員中600~800人のウ

イグル人を雇用していた。しかし南方の広東人とウイグル人では考え方や生活習慣に差が

ありすぎた。

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 しかしウイグル暴動が再拡大することはないだろう。欧米諸国政府は暴動の当事者双方

の自制を呼びかけるのみで、イスラム諸国も強い反応を示していない。中国外交はかなり

成功しているといえる。

 胡錦濤政権へのダメージもなく、むしろ政権基盤がさらに固まるのではないか。暴動発生

後すぐに帰国したことは、内政の安定を最優先する姿勢を内外に示す意味で賢明な選択

だった。中国の株価にもまったく影響を及ぼしていない。

 (関係改善が進む)両岸(中台)関係への影響もないだろう。この問題への台湾の関心は

薄い。国共論壇(年に一度の国民党と共産党のフォーラム)も予定通り11日から開催さ

れた。 (談)


【プロフィル】ちょう・あちゅう

 1954年、台湾台中生まれ。台湾の政治大学博士、ドイツのハンブルク大学博士、現職

台湾大学政治学科教授、両岸統合学会理事長。著書に「小国崛起」、「両岸主権論」、

「両岸統合論」など。

http://sankei.jp.msn.com/world/china/090711/chn0907111825008-n1.htm

(続く)