さてオバマのプラハ演説から広島に話が飛んでしまったが、「米中戦略経済対
話」に戻そう。オバマは大統領就任演説で、オバマの三本柱、すなわち、核の
脅威、地球温暖化対策、テロ対策、の三つには、強固な自由主義陣営の同
盟とかつての敵の中国やロシアなどとともに、毅然と対応してゆくと宣言して
いる。就任演説でのかっての敵とは中国やロシアとは言っていないが、現在日
本やドイツはアメリカと同盟関係にあり強固な自由主義陣営の同盟に属してい
る。ベトナム戦争ではアメリカは、ソビエト連邦、中華人民共和国、北ベトナムの
共産主義勢力と戦っている。かっての敵は、中国やロシアと見立てるのが妥
当なことであろう。その中国との戦略経済対話なのである。
この米中戦略経済対話では、経済のほかには、中国にも核兵器の削減を求め、
ウイグルとチベットでの暴力と不正義に対しても自由主義陣営の盟主として、中
国に是正を求めなければならない。オバマは、プラハで、伊達に演説を打(ぶ)っ
たわけでもないだろう。演説を読む限りにおいては、核兵器と人権問題がプラ
ハ演説のテーマだった筈だ。
米中戦略経済対話では、どうだったのであろうか。中身の無い「シャンシャン」会
議だったようだ。次の記事を見て頂きたい。
158.6,均衡した成長促進で協調 米中戦略経済対話が閉幕200907291002
2009.7.29 10:02 このニュースのトピックス:米国
(Photo)
28日、米ワシントンで「戦略・経済対話」を終えた、中国の戴秉国国務委員(左)とクリントン国務長官(ロイター)
【ワシントン=渡辺浩生】米中間の経済・安全保障問題を幅広く話し合う米中
戦略経済対話が28日、2日間の討議を終えて閉幕した。両国は国際的な金融
危機克服のために「均衡し、持続可能な経済成長」を促進することで一致。
金融システムの安定と貿易・投資の一段の開放に向けて協力し、国際通貨基金
(IMF)など国際金融機関における中国など新興国の発言権強化で協調するこ
とで一致した。
共同声明によると、米国が自国消費に、中国が米国への輸出にそれぞれ過
度に依存した経済成長の在り方を転換するため、具体的には米国が貯蓄率を、
中国は消費の対国内総生産(GDP)比率をそれぞれ引き上げる措置を取ること
で合意した。
また、米国は危機脱却後、大型景気対策や米連邦準備制度理事会(FRB)に
よる量的緩和政策など危機対応策を元に戻し、2013年までに財政赤字の対G
DP比率を「持続可能な水準」に引き下げると表明。中国はサービス産業の発展
や社会保障改革に取り組むとしている。
さらに、金融システム強化に向けて米国は金融規制監督制度改革、中国は金
利の自由化や外資系銀行の参入業務の拡大などの促進を継続。ただし、ドル
基軸体制の見直しや中国当局による為替市場への介入など米中間の利害が
対立する問題について、突っ込んだ議論は回避されたとみられる。
一方、エネルギー消費で世界2大大国でもある米中は温暖化問題の対処に共
通の役割と利益を有しているとして、地球気候変動とエネルギー・環境の協
力強化に関する覚書を結んだ。
環境技術の共同研究や開発を促進するほか、温室効果ガス排出削減の次期
枠組み(ポスト京都議定書)の合意期限である12月の国連気候変動枠組み条
約第15回締約国会議(COP15)の成功に向けた協調で一致したとしているが、
2050年までの排出削減目標など米中の意見が対立する中身には踏み込ま
なかった。
クリントン国務長官とともに米側の代表を務めたガイトナー財務長官は終了後
の会見で「われわれは両国のみならず世界経済のバランスのとれた成長に向
け、広範囲な協力の枠組みで合意した」と強調した。
http://sankei.jp.msn.com/world/america/090729/amr0907291004002-n1.htm
「均衡し、持続可能な経済成長」を目指そうと言う共同声明を発表しただけに終
わっている、と言うことであろう。これでは電話会談でも出来ることであり、こんな
ことであればどこの誰でも言える事ではないのか。オバマの三本柱、すなわち、
核の脅威、地球温暖化対策、テロ対策、の三つについては、めぼしい成果が見
られない。CO2の排出削減と言う重要課題に対しては、それこそ何にも議論さ
れていない。何の成果も無い。世界のトップの排出国と第2位の排出国である。
削減目標についても真摯な議論を展開して欲しかったものだが、なんとも言及さ
れていない。あるのは、今後2国で頑張っていこう、何ぞと言う覚書だけだ(地球
気候変動とエネルギー・環境の協力強化に関する覚書)。三本柱より上位の憲
法に該当するくらいに重要であり、プラハ演説のテーマである「人権問題」の解
決については、一言も触れられていない。結局、オバマはおバカである、と言うこ
とか。自分の都合の良いときだけ「きれい事」を言い、都合が悪くなると、そのき
れい事は「消去」してしまう。こういう口先だまし、のことをおバカというのであり、
一種の詐欺師なのである。シカゴでは、オバマは「タフな政治家」として鳴らして
いたと言うではないか。それに米民主党は中国に、金で篭絡されてしまってい
る、との見方もまことしやかに流れている。したがって、「オバマも中国とつるん
でいる」かも知れないのだ。
(小生ブログ・2009.2.8、バラク・フセイン・オバマ大統領(NO.10)および同年、2.9、同(NO.11) 参照のこと。)
それにCOP15が今年の12月に開かれて、京都議定書の期限が切れる2013
年以降の新たな枠組みとしていわゆる『ポスト京都』として、国際温暖化対策の
中期削減目標が決定されなければならないのである。したがって当然この米中
戦略経済対話で、討議されてしかるべきものなのである。それなのに細部にわ
たって議論された形跡がない。(小生ブログ・2009.7.31、尖閣諸島問題(NO.96)) 参照のこと。)
(続く)