尖閣諸島問題(122)

中国国防省は、2008年12月23日の記者会見で、「2016年までに、2隻の

中型航空母艦を完成し、大型空母「ワリヤーグ」と3隻体制で運用を始める」と

発表している。


先に中国の次の目標は「台湾併合」だと述べたが、中国の目標はこんなもので

はなかった。「台湾併合」だけなら空母の運用なんぞは、必要が無い。


中国の究極の目標
がそこには、隠されていた。


それはアメリカ、EU、についで第3の極となる覇権主義の成就なのである。そ

のためにはアジア太平洋からインド洋までを、すべて中国の海とする作戦なの

である。そして、そこではアメリカの第七艦隊よりも強力な機動部隊を保持し、

ジア・オセアニアと、あわよくばアフリカも自己の配下に
収めようとしているこ

とである。そのためにはどうしても空母の保有が必要で、そして世界の(お山の)

大将となることである。そのための軍事費の年率2桁以上の増加や、各海域で

の海洋調査は、中国原潜や機動部隊の活動や、更には、アメリカ海軍の原潜の

行動を阻止するために必要だからである。


その記者会見で報道官は、空母は国家の総合力の体現である」と述べてい

る。空母機動部隊による制海権を確保し、アリューシャンからインド洋、アラビア

海までも中国の海とするための宣言なのである。3隻体制とは、北海艦隊

島チンタオ
)、東海艦隊寧波ニンポー)、南海艦隊湛江ジンコウ)の夫々に空母

配属されることとなるのである。この3隻体制で、中国は世界に覇を唱えることと

なる。


湛江市
は、広東省の南部、海南島の対面の大陸部にある。フランスの租界地

であったが今は中国海軍の軍港として繁栄している。寧波市浙江省杭州

湾の南岸にあり、東シナ海に面しその沿岸は入り組み深水良港となっている。

寧波市の対岸即ち杭州湾北岸には上海市がある。青島市山東半島の南・黄

海沿岸部に位置し、膠州湾を囲む半島の先端に位置する軍港である。山東

島の対岸は遼東半島でその先端には旅順がある。山東半島遼東半島で囲む

渤海湾の奥には、北京がある。山東半島黄海を隔てた対岸は朝鮮半島で、

青島市には韓国とフェリーが通っている。


尖閣諸島
は台湾に近く、そして寧波市に近いことになるため、中国東海艦隊に

所属する駆逐艦が度々尖閣近海に出没することとなる。そして今度は東海艦隊

に所属する航空母艦に、日本の尖閣諸島どころか沖縄までもが威嚇され、更に

は青島市の北海艦隊の空母にも日本全体が威嚇されることとなる。中国はアメ

リカの機動部隊に散々威嚇されたため、その仇討ちに航空母艦で日本を脅かす

ことになる。


1950年6月
朝鮮戦争が勃発すると、米国は台湾が中国に攻められること

を恐れて、「台湾海峡の中立化」を宣言し、第七艦隊の空母機動部隊を台湾海

峡に派遣した。中国は1949年の建国当初より台湾の武力開放を計画していた

から、米国は度々機動部隊を台湾海峡に派遣して、中国を牽制した。1955

年、1958年
の2回にわたる台湾蒋介石軍と中共軍との金門島などの島嶼

巡る戦争など、ことあるたびにアメリカは核ミサイルと空母機動部隊を派遣

て軍事威嚇を加えて、台湾を守った。中国の「台湾併合」と言う国家目標は、そ

のため、現在でも阻止されている。そのため「毛沢東」は、核兵器航空母艦

は早い時期から強い関心を持っていた。しかし貧乏だった中国は、まず核爆弾

の開発を最優先
することを決断した。1950年の朝鮮戦争で米軍の近代戦争を

初めて体験し、軍事力の近代化を痛感したが、時代は待ってくれずに核兵器

の時代に入っていった。そしてアメリカから何度も核攻撃の威嚇を受けていたた

め、1955年~1956年に核開発の決断を下している。

(続く)