尖閣諸島問題(126)

ここら辺の事情は、小生のブログで既に言及している。2008年3月11日

中国毒餃子事件(4/5)」や2008年6月9日以降の「中国覇権主義(5)

」を参照願う。
             

日本政府は、2004年6月9日に中国政府に対して、「国連海洋法条約に違

反している」
と抗議したが、中国は馬耳東風として日本の抗議に対しては相手

にしていない。この東シナ海の大陸棚の開発の権利はどこが持っているのかは

この海洋法条約に準拠するものだが、中国はこの大陸棚は中国のものだとして

譲らない。1958年の「大陸棚に関するジュネーブ条約」では、「境界線は合意

が成立しない場合は等距離原則を適用する」とされていたものが、1973年

新海洋法条約」ではこの等距離原則が明確には記述されていないのである。

ここにも強い国の意思がこの法律に反映されたものと、日本としては僻(ひが)

みたくなるものである。将に世界は無政府状態なのである、法律も強い国の都

合次第となるのである。ここでは、等距離原則ではなく「関係国の合意による

としか記述されていないのである。これては強い国の言い分が通ってしまう事に

なるのである。だから世界は無政府なのである。このことを前提に日本は物事

を考えてゆかなければ、痛い目の合う。


しかも2000年以降、特に2001年からは小笠原、硫黄島、南西諸島方面

も中国の海洋調査船が頻繁に出没し始めたのである。そしてね2004年頃

西太平洋、グアム海域までの調査が完了したのである。これこそ機雷設置

などで米第七艦隊の行動を阻止し、更には自国の潜水艦の行動を助けるため

なのである。中国はいよいよ対米戦の準備を固めたのである。そして日本に対

しては、2004年4月11日には沖ノ鳥島は単なる岩礁だと主張して、無断で

日本の排他的経済水域の海洋調査をしたのである。このように恫喝しながら翌

月の5月28日に春暁ガス田」の建設に着手している。


さて、(財)DRCとは、Defence Research Center(ディフェンス リサーチ セ

ンター)の略であるが、そのホームページの冒頭の活動概要を下記しておく。
http://www.drc-jpn.org/


なお、小生が紹介、引用させてもらっている五味睦佳氏による『中国の海洋進

』は、DRC年報2004度版に掲載されたものである。


活動概要

ディフェンス・リサーチ・センター(DRC)は、わが国の新しい防衛戦略、防衛政

策等につき、世界的に大きく変化する安全保障環境、技術進歩に即応して、幅

広い見地から調査・研究と提言を行う公益法人シンクタンクとして1991年に設立

されました。

研究活動は、防衛を直接担当してきた実務経験豊かな陸、海、空、シビリアン等

防衛OBを主体に、産業界、大学等で安全保障問題にかかわってきた者を含む

研究委員34名の奉仕的な参画により、国際データの把握、新しい戦略の創造、

具体的な国防政策の追究を産業界、一般市民を含む幅広い階層との意見交流

等を重視して推進しています。また日米安保体制を堅持しつつ技術協力を含む

具体的な国際貢献策等につき新たな見地から鋭意検討を進めています。具体

的研究活動として毎年数次にわたりチームを編成し海外研究調査を行い、これ

までに米国、アジア、欧州等21ヶ国の国防省、戦略研究所、技術研究機関、大

学等140ヶ所を訪ねて研究討議、防衛交流を重ね、信頼の醸成に寄与してい

ます。

             
さて本論に戻ろう。中国は西太平洋の小笠原、硫黄島近海、そして九州の大隅

半島から種子島、沖縄、尖閣諸島と延びる南西諸島の何れも日本国の領土の

近海を、傍若無人に跳梁跋扈している。政府、マスコミはもちろんのこと我々国

民もこの日中大陸棚論争にはしっかりと関心を示して、日本の主権と国益

護り
、日本の主権や権利を侵す国に対しては国家としてきちんと対抗してゆか

なければならない。


この論文では、東シナ海の日中大陸棚問題をどのように論じているのであろう

か。この論文では、平松茂雄氏の「続中国の海洋戦略」の「沖縄トラフ地質構」と

言う図を載せて説明しているが、尖閣諸島沖縄諸島の間に沖縄トラフと言う、

深さ1~2km、長さ1000km、幅50km程度の溝が存在する。トラフとは、海底

を走る長くやや幅の広い溝のうち、最大水深が6km を超えないものを言うが、

海溝のように極めて深いものではない物らしい。海溝はそこで大陸棚がいった

ん途切れることとなるのだが、この沖縄トラフは大陸棚に出来た溝であり、大陸

棚は引き続き外洋に伸びているものである。日本列島もこのユーラシア大陸

延びた大陸棚に乗っているのである。これは、杏林大学の平松教授や琉球

学の木村正昭助教授('04年当時)の実施した沖縄トラフの地質調査から「日本

と中国は同じ大陸の上に位置しており、東シナ海の大陸棚は中国が主張するよ

うに沖縄トラフで終わっていない」のである。


これに対して中国は、中国大陸から沖縄トラフまでを一つの大陸棚であり、沖縄

トラフまでが中国大陸から自然に張り出したものであると主張し、東シナ海

陸棚全体に対する権利を主張
している。言ってみれば、これは中国という無

法の大国のエゴ
なのである。そうであるかないかは、地質学的に調査してみれ

ば明らかになることであるが、中国は応じていない。


1973年
に成立した新海洋法条約では、先に述べたように、大陸棚の境界線

の確定は「国際法に基いて、合意により行う」となっており、中間線とするよう

な等距離原則の適用を明確にうたっていない。そのため大国のエゴが働くので

ある。日本は「公平な解決策として等距離原則の適用を粘り強く主張してゆくこ

とが肝要である。」と、この論文は言っている。


(続く)