国慶節に思う。(17)

さて話を元に戻そう。テーマは、「京都議定書の失敗」である。この論文では京都

議定書は、日本、欧州、ロシアしか参加していない失敗作である、と冒頭で結論

付けている。欧州は、自己の置かれている立場を研究し、1990年を基準にする

と欧州にとっては都合の良いことが判っていた。議長国であった日本は京都で

開いた手前、この議定書を批准せざるを得なかった。目標値の設定には、各国

が納得できる基準が必要であった。ただ単に削減する程度をパーセントで議論

するのが間違いである。日本は省エネ等の環境技術を発達させて、相当効率的

なエネルギーの使い方を修得している。2009年10月21日のブログにそのデー

タを掲載しておいた。今一度それを示す。
           

GDP単位当りのエネルギーの消費量(2005年)

日本    1.0
EU    1.9
米国    2.0
中国    8.7
インド   9.2
ロシア 18.0

            

これはWiLLの11月号の櫻井よしこ氏の「鳩山CO2・25%削減で日本経済は

沈没する」に掲載されているデータである。同様の数字は、日本経済新聞にも出

ているので、まず間違いないデータである。このブログを参照願いたい。

中国は、「中国には発展する権利がある。それにはエネルギーが必要となる。

従って相当数のCO2の排出は避けられない。そのため削減目標なんぞは守っ

ていられない。それよりも先進国は今まで散々CO2を排出してきたであろう。だ

から先進国こそもっと削減せよ。」と、まことに非常識なわがままな主張をして

いる。しかもエネルギーの消費量は上記の数字に見られるように、まことに効率

が悪い。

CO2を無制限にモクモクと排出している、と見られる。このことは(中国は発展の

ために自分が排出する大量のCO2を)棚に上げている。そして返す刀で、先進

国が今までに排出したCO2が問題である、と息巻いている。これって、理論が成

り立たないのではないかい。


先進国が発展のために排出したCO2は悪で、中国が発展のために排出す

るCO2は善である
と主張しているのである。一般に筋の通らないことを、人間

の世の中で主張すれば、袋叩きに遭うのが、常である。なぜ中国は袋叩きに遭

わないのか。中国は巨大な市場なのである。欧米諸国は、中国にかなりの投資

をしている。その上中国は共産党一党独裁の国であり、欧米諸国の企業は文

句を言えば、共産党政府に必ずや嫌がらせを仕掛けられる。法に触れようが触

れまいが、構っていない。共産党政府が気に食わないと思えば、何でもやるので

ある。その上、中国人民解放軍は相当数の核爆弾を装備した近距離から、中

距離、長距離、更に大陸間弾道弾まで配備している。武力を背景とした、経済

侵略を厭わない国なのである
。だから、中国の排出するCO2は善で、誰も

文句を言えないのである


鳩山なんぞは「友愛」なんぞと呟き、中国のこの横暴に対して、一言も文句を言

わない。これでは日本は、世の中をうまく渡れない。将に世界は、「無政府、無

規律」
なのである。中国が単なる経済大国だけだったとしたら、このような理不

尽に対して世界は相当文句を言い続けるであろう。なんと言っても核の先制使

用はしないなんぞと言い触らしている様だが、誰もそんなことは信じていない。

経済と安全保障は表裏一体なのである。日本はこの安全保障に欠陥がある。

だから、25%削減なんぞと言っても各国は口では褒めるが、世界を巻き込むほ

どのインパクトは無いのである。いささか極論のように聞こえるかもしれないが、

自分の国は自分で守ると言うごく自然な営みをを具備してこそ、25%削減も世

界に対して意味を成すのである(各国が従ってくれるという意味で)。

日本は京都議定書のこの第一約束期間での6%削減に失敗し、世界中から

「お金をむしりとられる」
と言う惨めな構図になりそうだとする論文がある。

次にそれを示す。

4次元エコウォッチング(安井至)
京都議定書第一約束期間突入――どうなる日本――(08/01/16)

(Photo)
安井至(やすい・いたる)
独立行政法人 製品評価技術基盤機構 理事長、東京大学名誉教授。1945年東京都生まれ。東大工学部卒。環境科学(環境負荷総合評価、ライフサイクルアセスメント、環境材料、グリーンケミストリー評価尺度)を専門分野とし、日本LCA学会副会長などを務める

 1997年に決まった京都議定書であるが、本年1月1日をもって、とうとう第一

約束期間に突入した。これから2012年までの5年間の平均排出量を削減し、

各国がそれぞれの目標を達成する必要がある。日本の場合、特例で、年度での

データを使用することが同意されており、マイナス6%が目標値である。


 果たして、それが可能かどうか、もしも不可能だったらどうなるのか、再度検討

をしてみたい。


 使用するデータは、まず2006年度の排出量の速報値。そして、現在、パブリッ

クコメントを募集している京都議定書目標達成計画の評価・見直しに関する最

終報告書(案)。さらに、2015年燃費基準や原子力発電所の設備利用率などで

ある。


 まず、排出量の全般的状況、特に、2006年度の排出量速報値と1990年(基

準年)の排出量の相違を検討してみたい。


 2006年度の排出量は13億4100万トンと、2005年度の13億5900万トン

との比較で1.3%ほど減った。その理由は、かなり温暖な冬季であったことと、

比較的低温だった東日本の夏のお陰であった。


 しかしながら、この減少傾向が2007年度に継続するかどうか、予断を許さな

い。2007年度の冬、すなわち、今年の冬は、昨年の冬ほど温暖ではない。

さらに、中越沖地震のために、刈羽原発が停止したままである。

■天気・原発だのみの温室効果ガス排出削減

 原発の運転状況は、実に大きな影響力を持っている。設備利用率というが、大

体75~80%程度である。1998年度には、この設備利用率が84.2%に達し

て、そのため、1998年の温室効果ガスの排出量はかなり低い。最近の状況

は、かなり悪い。2005年度、2006年度では、それぞれ71.9%、69.9%に

過ぎない。2007年度は果たして何%になるのだろう。


 いずれにしても、お天気だのみ、原発だのみの状況にあるというのが結論であ
る。


 どのような対策が取りうるのか。それには、温室効果ガスの種類別の動向と部

門別の動向を調べる必要がある。

(続く)