国慶節に思う。(18)

 まず、種類別だが、温室効果ガスは現在6種類を対象にしている。CO2、メタン

(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、それに3種のフロン類、すなわち、HFC、PFC、

SF6である。

 フロン類の温室効果への寄与率は、1990年の基準年には4.46%もあった

ものが、2006年度には1.35%まで低下している。CO2換算では、5110万ト

ン相当から1730万トン相当まで減少している。この削減は非常に効果的だった。

             

■エネルギー起源CO2と自家用車・家庭部門の取り組みがカギ
                    
 増えているのは、CO2である。基準年の11億4400万トンから12億7500万

トンへと11.5%も増加している。メタン、一酸化二窒素は、余り変化していない。

この2種のガスは、農業起源が多く、対策が難しいからである。


 CO2には、エネルギー起源のものと、非エネルギー起源のものがある。非エ

ネルギー起源とは、廃棄物の燃焼や石灰石の分解で出るCO2を意味する。石

灰石からの排出は、セメントの生産量が減っているために減少気味である。


 結局のところ、エネルギー起源のCO2の対策を取ることが唯一の方法である

という結論に至る。すなわち、省エネが決定的な対策法だということになる。


 次の検討は、どの部門からの削減に可能性が残っているか、である。

 排出絶対量の増減を検討してみる。
          
産業部門:2006年度で4億5500万トンで、基準年4億8200万トン比で
        
5.6%の減少。前年比では0.6%増加。

→製造業はかなり努力をしてきたが、前年比増の理由は景気回復。
           
運輸部門:2006年度で2億5400万トンで、基準年2億1700万トン比で
        
17.0%の増加。前年比では0.9%減少。

→基準年からの増加要因では、自家用車の排出量が45.0%と激増。前年比

減の理由:自家用車からの排出量が2%減。ガソリン価格上昇が原因か。

      
業務部門:2006年度で2億3300万トンで、基準年1億6400万トン比で
                     
41.7%の激増。前年比では2.6%減少。

→基準年比での増加理由は、延床面積の増加、空調・証明設備、OA化など。

前年比減の理由は暖冬による暖房エネルギーの減少。
                 
家庭部門:2006年度で1億6600万トンで、基準年1億2700万トン比で30.4
   
%の大増加。前年比で4.4%減少。

→家庭用機器のエネルギー消費量が機器の大型化・台数の増加などの理由で

増加。世帯数の増加も要因。前年比減の理由は暖冬による暖房エネルギーの減少。

 次に、基準年から2006年度までの寄与率の変化を検討する。

全排出量への寄与率
  
産業部門:基準年には42.1%だったものが、2006年度には35.7%に減少。
  
運輸部門:基準年には19.0%だったものが、2006年度には20.0%と微増。
  
業務部門:基準年には14.4%だったものが、2006年度には18.3%と急増。
  
家庭部門:基準年には11.1%だったものが、2006年度には13.0%と増加。
  
 このように見れば、これまでの排出削減対策は産業部門、特に製造業に全面

的に依存している状況だったことが分かる。業務部門、家庭部門に対するなん

らかの対策が無い限り、目標達成が困難であることが分かる。製造業以外の産

部門の努力も必要である。


 このような状況の中で、昨年の暮れに、京都議定書目標達成計画の評価・見

直しに関する最終報告書(案)が決まった。


 現在、パブリックコメントを募集中(締め切り1月25日)である。

 この文書が1つの根拠としている数値に、2010年における排出予測値という

ものがある。12億7300万トン~12億8700万トンとなっており、目標値に対

して、2000万トン~3400万トン不足ということになっている。
         

(Photo)
新潟県中越沖地震による火災で煙が上がる東京電力柏崎刈羽原発=07年7月16日(第九管区海上保安本部提供)〔共同〕
                

■検証されていない排出予測値の実現可能性
              
 ところが、この2010年の排出予測値というものそのものの実現可能性に関す

る検討がほとんど行われていない。最終報告書でも、「一般電気事業者の販売

する電力については、二酸化炭素排出原単位は現在0.423kg-CO2/kWh

(2005年実績)と基準年度比横ばいであるが、目標達成計画においては、電気

事業連合会の環境行動計画目標として2008年~2012年度の平均で0.34

kg-CO2/kWh程度まで20%低減するとしている」、といった記述はあるが、

中越沖地震による刈羽原発の運転停止などの状況を見ると、そもそも20%低


減は無理である。


 それはそれとして、追加的な対策ということが提案されているので、大きなもの

を整理してみると、次のようになる。

事業者の自主的な取組み:1800万トン

住宅・建築物の省エネ性能の向上:200万トン

国民運動:678万トンから1050万トン

機器対策:150万トンから200万トン

産業・業務部門の省エネ対策・排出削減対策:300万トンから400万トン

自動車単体への対策:300万トン~350万トン

交通流対策:60万トン

新エネルギー対策の推進:129万トン

中小企業の対策推進:182万トン

上下水道廃棄物処理:144万トン

非エネルギー起源対策:90万トン

代替フロン対策:120万トン

その他、細かい対策:60万トン

(Photo)
1人1キロのCO2排出削減を呼びかける環境省のホームページ

 以上合計で4500万トン程度になるが、問題は、その実現性である。事業者の

自主的な取組みによる削減では、化学、石油、セメント産業が主たる対象にされ

ているが、日本のバイオエタノールの普及が石油業界の造反で旨く行かない例

があるように、残念ながら、まだら模様の状況である。

 国民運動による約1000万トンの削減も、具体的な道筋は見えない。
(続く