【正論】初代内閣安全保障室長・佐々淳行 正視に耐えぬ現政権「朝貢の図」200912170348
2009.12.17 03:48
≪天皇陛下にも非礼な会見≫
15日付の朝刊各紙は、第1面で大々的に≪小沢-羽毛田≫論争をとりあげていた。
天皇陛下の習近平中国国家副主席との「特例」会見が、「天皇の政治利用」に
つながるかどうかが論点である。筆者は、これは民主党の小沢一郎幹事長と鳩
山由紀夫内閣の「天皇の政治利用」だと断ずる。羽毛田信吾宮内庁長官は、国
家行政組織法で授権された国家公務員としての任務、すなわち、天皇陛下のご
健康を気遣い、一視同仁、政治外交上の中立性を守るべき天皇をお守りする任
務を遂行した人物で、記者会見で一党の幹事長に、怒りに任せて公然と辞表を
出せといわれる筋合いはない。
以下、政治利用と断ずる、その理由を列挙したい。
1、まず一政党の幹事長に宮内庁長官の罷免権はない。いかに役人嫌いで
あるからといって、天皇の信任を受けている同長官への悪口雑言は、天皇に対
しても非礼である。宮内庁長官の任免は、天皇と内閣総理大臣のなすべきこと
であり、一政党の幹事長が記者会見でいうことではない。
≪「国事行為」の理解に誤り≫
2、小沢幹事長は記者団に「憲法、読んだこと、あるのか」と礼を失する発言
をした。確かに、日本国憲法第7条「天皇の国事行為」の項には、「天皇は内閣
の助言と承認により、国民のため左の国事に関する行為を行う」とあり、憲法改
正、国会の召集、衆議院解散など10項目が限定列挙されている。外交に関して
は第8項「批准書や外交文書の認証」と第9項「外国の大使及び公使の接受」
だが、要人との会見は明記されていない。
今回の習副主席はもとよりオバマ米大統領をはじめ外国の元首、首相などと
天皇との会見は「国事行為」ではなく皇室外交の国際礼譲であり、さらにその助
言役は宮内庁の羽毛田長官である。今回の会談を「内閣の方針」による「国事
行為」ということこそ、不勉強による誤りである。
3、「1カ月ルールは誰が決めた。法律に書いてあるか」「内閣の決定したこと
に反対なら辞表を出してから、ものを言え」という小沢幹事長の羽毛田氏非難も
多分、国民はその傲慢(ごうまん)で高圧的なもの言いぶりに反感を抱いたと思
う。宮内庁への全国各地からの羽毛田氏支持の声はFAX、電話など1日で1千
件を超したという。
4、最も妥当性を欠くのは、「天皇の体調がすぐれないなら、優位性の低い行
事はお休みになればよい」という発言だが、鳩山総理もこれを支持したという。
その大小の決定をするのも内閣なのか。では問うが、中国は大国だからルール
に反してもよいが、小国なら接受しなくてもよいのか。身体障害者施設や老人・
児童施設への行幸(ぎょうこう)は、大きいことなのか、小さいことなのか。
両陛下の国民をおもいやる優しい心からみれば、また皇室のため、内閣のた
めにも「大きなこと」ではないのか。この発言も、大小、強弱を問わず何事も公平
にという両陛下の大御心(みこころ)にそわぬものと心得る。この点、国会開会式
に「もっと思いが入ったお言葉を」といった岡田克也外相の発言にも、天皇の政
治利用の下心を感じさせられた。
≪対米関係にも悪影響≫
5、習副主席が天皇に会うことは東アジアの平和と繁栄のために良いこと、と
筆者も思う。だが、そんな大きな外交日程がなぜルール通り1カ月前に決められ
なかったのか。そこに、600人を率いて行われた小沢訪中とのパッケージ・バー
ター外交ではないかとの疑念を禁じ得ない。
中国が天皇を政治外交に利用したいと考えていることは、江沢民前政権以
来、明々白々である。そこへ大訪中団を率いて訪れ、国賓並みの歓迎を受け、
このパッケージ外交で迎合したのではないだろうか。報道によれば、小沢幹事
長は「解放軍の総司令官だ」と自己紹介したという。自民党から「解放」したとい
うつもりなのだろうが、アメリカはそうは思わない。アメリカの占領からの解放と
とり、不快感を強めるだろう。
143人の現役議員全員に、1人1秒足らず、胡錦濤主席と握手させ、写真を撮
らせる演出は、まさに宗主国に恭順する近隣国の“朝貢の図”で、誇りある日本
人の正視に耐えない。そうすると、先月中旬、学習院大学ホールで上演された
中国人民解放軍総政治部歌舞団のオペラを、お忍びで皇太子殿下が観劇した
のも、このパッケージの一部だったのかとかんぐりたくなる。総監督の人気オペ
ラ歌手は習副主席の妻だからだ。
小沢氏の記者会見は、いい気分で凱旋(がいせん)した日本で小役人が反抗
したことへの怒りの表れと思うが、天皇を戴(いただ)くのは日本の2千年の政治
の知恵であり、世界に比類のない国体である。平時は「権威」として政治に関与
せず、民族の存亡にかかわる重大な時に、国民統合の象徴としてお力を発揮し
ていただくというのが筆者の見解だ。ゆめゆめ一内閣の外交、ましてや党利党
略に乱用することは許してはならない。(さっさ あつゆき)
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091217/plc0912170349002-n1.htm
さてコペンハーゲンではCOP15が、もめにもめている。こんな事は、言わずもがなの事である。その元凶は中国である。やっぱり中国は、ChinaHIVだ。中国は、自分で「大国だ」と先進国振りをしながら、途上国なのでCO2の削減義務なんぞは負いたくない、とすごんでいる。中国は世界のCO2排出量の21.1%を占める世界最大のCO2排出国なのである。中国のごり押しで、COP15はまとまらなくなっている。その点、鳩山は世間知らずだ。25%削減と吹いておけば、自然と世界が付いて来るとでも思っていたのか、何の手も打っていない。これではリーダーシップなんぞは取れないよ、と言っても詮なしか。既に国内でもリーダーシップは取れていないのだから。
(続く)