番外編・プリウス急加速問題(25)

豊田綱領とは、トヨタのホームページによると、次の様なものである。
http://www.toyota.co.jp/jp/environmental_rep/03/rinen.html

  
創業以来受け継がれてきた「豊田綱領」の精神

  創業以来今日まで、トヨタの経営の「核」として貫かれてきたのが「豊田綱領」です。トヨタ

グループの創始者、豊田佐吉の考え方をまとめたもので、「トヨタ基本理念」の基礎となって

います。

  当初は確固たる形があったわけではありません。しかし関係会社の規模が拡大するにつ

れ、従業員に周知徹底すべく明文化する必要性が出てきました。そこで草創期の豊田利三

郎、豊田喜一郎らが佐吉の遺訓としてまとめ、世に出たのが「豊田綱領」です。佐吉の6回忌

に当たる昭和10年10月30日のことでした。

  以来、社訓として従業員の精神的支柱の役割を果たし、今日では「トヨタ基本理念」にそ

の精神が受け継がれています。

豊田綱領 豊田佐吉翁の遺志を体し

一、上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を挙ぐべし。
一、研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし。
一、華美を戒め、質実剛健たるべし。
一、温情友愛の精神を発揮し、家庭的微風を作興すべし。
一、神仏を尊崇し、報恩感謝の生活を為すべし。
 』

なおこの豊田綱領は、現在「トヨタ基本理念」の1.~7.として現代的に言い換えられている

がこの豊田綱領のほうが、よっぽど現代的ではないかと、小生には思われるのである。この

豊田綱領の一番目にある「上下一致」ということが、トヨタには少し欠けていたのではないか、

と感ずるのである。

豊田章男社長に今必要なものは、p41にも記載されているように

[ ビジネスは戦争です。社長はその最高司令官です。最高司令官が自分のところで社員や

販売店をまとめていくには、メッセージを出さなければいけない。それも末端の社員にまでわ

かるような目標を掲げなければなりません。]
ではないかと思うものである。

末端の社員にまで分かるような目標とか、そのような社員マインドをひきつける何かがどこか

欠けていってしまったのではなかろうか。それこそが「現場に一番近い」ということではないか

と思うのである。そのような意味でも

p-3.7の記事にもあるように、「 過去のリコール事例にかかわっていたトヨタの元幹部は、

「何が何でも」成長と利益を目指す同社の姿勢のせいで、品質問題が未解決のまま放置さ

れたとしている。」
と言うような状況を打破する事が、豊田章男社長の課題なのであろう。もち

ろん成長と利益は求めなくてもよい、と言うことではない。成長利益品質とを満足させる

経営が求められるのである。豊田章男社長は、そのために、常に今の進め方で問題は無い

のか、過去のトラブルはすべて解決されているのか、予想されるトラブルは何か、といって廻

ればよいのである。そして頭のよい社員達には、将来の自動車はどんな形になると思うのか

を考えさせて、そのための施策を大胆に取り入れてゆく、ということではないのか。4月27日

のブログでも指摘しておいたが、トヨタでもハイブリッド車電気自動車用のバッテリーに必要

レアメタルの確保に腐心している。5月1日のNHKの「追跡!AtoZ」でも放送していたが、

トヨタとしてもあらゆる意味で日本政府とタイアップして事業を進めてゆく必要がある。そのた

めの政府へのアプローチの仕方も検討の余地があるのではなかろうか。今話題の高速鉄道

原子力発電所の海外輸出などは、その際たるものである。大体日本の東芝が、原子力

事業で韓国企業の下請けに甘んずるなどは、鳩山政権に先見の明の無さの象徴である。

誠に嘆かわしい事である。鳩山政権下での日本の凋落もあながち絵空事でも無いかもしれな

い。


何はともあれ、トヨタとしても社内一致してこの難局に当たらなくてはならない時に、内輪もめ

などしている暇は無い。

  

p4.6トヨタ社長のリーダーシップに社内から疑問の声
2010年 2月 23日  14:17 JST

 トヨタ自動車豊田章男社長が24日の米議会の公聴会に向け準備を進めるなか、一般

従業員や中間管理職の間で疑問が膨らんでいる。トヨタは長年の努力で手にした品質に関

する高い評価をリコール騒動で失いかねない状況にあるが、この危機を切り抜けるかじ取り

に適しているのは果たして同社長なのか。

(Photo)Bloomberg  トヨタ豊田章男社長

 豊田社長の経営スタイルや同社の経営体制に対して厳しい視線が注がれている。米での

リコール発表直後のダボス会議出席、米公聴会への出席を決めるまでの流れ、めったに表

に出ないことなど、危機後の豊田社長の行動が広く報道されると、同社長が果たして決断力

のある自信に満ちたリーダー
なのか否か、はたからも疑問視されるようになった。

 一部の従業員からは、何も知らされていないとの不満の声が聞かれる。豊田社長が一族に

忠実な派閥で周りを固めているため、首脳陣に厳しい意見が届かないとの批判もある。

 豊田社長は2月初め、米でのリコールについて日本の従業員に電子メールで説明。顧客の

信頼を取り戻し、いいクルマを作るためともに努力するよう呼びかけたという。しかし以来、2

週間に3回の記者会見を行った同社長から音さたはなく、従業員とのこれ以上の社内コミュ

ニケーションはない。

 同社のあるチーフエンジニアは「いったい今回の問題で何が起きているのか、外から、メデ

ィアからしか情報が入らない」と訴えた。「本当にリーダーとしての求心力あるのか疑問を

感じる
。声出しては言わないけれど、(従業員)みんながそう感じている」という。

 東京のPR会社フライシュマン・ヒラードの田中慎一社長は、今回の危機への対応が受け身

だと指摘。危機に直面したとき、トップが対処しなくてはいけないと述べた。

 豊田章一郎名誉会長をはじめ、豊田市やその周辺で関連の部品メーカーなどを経営してい

る元幹部など、トヨタの重鎮は豊田社長を全面的にサポートする態勢にあるようだ。

 ただ、こうした幹部以外はそれほど楽観していない。

 本社の中間管理職は「なぜもっと安全や品質面で具体的な施策を示し、もっと突っ込んだこ

とが言えないのか」と語り、「記者会見をやるたびに、状況は悪化する。それもこれも、どうや

ってお客様の不安をどうやって解消していくのかの具体的な方向が示せないから」だと訴え

た。

 さらに、事態は良くなるどころか、「次から次へとリコールが出てくる。お客様第一と言えば

言うほど、逆効果。本当にそうなの、と思ってしまう。まったく伝わってこない。いったいどうな

るのか、何度も記者会見をやっているけどいったいわれわれの将来はどうなるのか、という

のが一般社員の正直な気持ち」と付け加えた。

 豊田社長は昨年就任した際、従来とは違うリーダーをめざしており、前任者の多くにならっ

て部下に日々の困難な問題を任せるのではなく、自ら手を汚し問題に当たると誓った。

 たとえば、トヨタの格言「現地現物主義」を体現したいとしていた。現地現物主義は問題が

起きたときに開かれた対話を促すはずだ。しかし、豊田社長の経営スタイルに詳しいトヨタ

部によると、同社長が広範にわたる問題に深く関与するため、部下は自分を抑えていた

特に中間管理職は、同社長にとっての重要事項を邪魔しないため、黙っているか情報をふる

いにかけることが多く、トップクラス幹部の一部にすらこうした傾向がみられたという。

 豊田社長は、自身の存在が社内に不和を生じさせかねないと分かっていた。本紙が2000

に行ったインタビューでは、自身に好意的な派閥と、豊田一族からの経営者と真っ向か

ら対立している派閥
があると語っていた。

 同社長は一見「サラリーマン」の典型に見えるが、興味の対象は驚くほど多方面にわたって

いる。20代にはフィールドホッケーナショナルチーム(16人)のメンバーに選ばれた。このチ

ームは1980年のモスクワ五輪を目前にしていたがアジア予選で敗れた。カーレースも趣味

で、この1月半ばまで「モリゾウ」のハンドルネームでブログを書いていた。

 82年に経営学修士(MBA)を取得後、ニューヨークやロンドンの投資銀行などに勤務し、84

年にトヨタに入社した。当初、幹部からは甘やかされて育った跡継ぎとみられ、相手にしても

らえなかった。消息筋によると、上司の1人から激しいいじめを受け、ストレスで入院したこと

もある。同社長は入院について確認したが、理由についてのコメントは控えた。

 しかし、出世への足がかりとされることの多い工業エンジニアリング部門に移ってから次第

に評判が改善し始めた。豊田社長は今では積極的な経営スタイルのリーダーとして知られる

が、社内にはやや予測不可能なところがあるとの声もある。関係筋によると、同社長はそれ

までの経験を利用して、一段と強力な事業推進スタイルを実地テストした。中国では数年前に

欧米式の買収で合弁設立を実現させている。

 2001年に中国事業のトップに任命された同社長は、提携先の天津汽車の財務能力が限ら

れており、工場が非効率だと判断。部下の助けを借り中国第一汽車集団が天津を買収で

きると考えた。両社とも国営であり、前例がほとんどなかったが、合併は02年に完了し、中国

でのトヨタの成長加速に貢献した。

 トヨタ昨年(2009年)、初の赤字を喫している。豊田氏は社長に就任してから、収益力の

回復に照準を絞っていた。同社長に近い幹部によると、おごりや過剰を捨てさせ、つつましさ

を取り戻させる計画だったという。全社を挙げてコスト削減に取り組むなか、トップクラスの幹

部でさえ、国内外の出張にファーストクラスやビジネスクラスを使わなくなった。

 同社長は週末にワシントンに到着した。事情筋によると、公聴会で証言するという課題を引

き受ける準備ができているという。

 公聴会では通訳が入る。今月の最初の記者会見で分かったように、マサチューセッツ州に

あるボブソン・カレッジでMBAを取得したものの英語はたどたどしい。

 トヨタの元専務で05年から関連会社の社長を務める神尾隆氏は、「これを乗りきれるのは

章男さんだけ。他のだれにも乗りきれる問題ではない」と語る。

 「この危機を乗り越えられれば、ますます成長し、すばらしいリーダーとして歩むことになる。

確かに厳しい状況ではあるけれども、(豊田氏を)全面的にバックアップする」

トヨタ・リコール問題」の関連記事はこちら>> (http://jp.wsj.com/ed/toyota/

記者: Norihiko Shirouzu and Mariko Sanchanta   
http://jp.wsj.com/Business-Companies/Autos/node_35393
(続く)