番外編・プリウス急加速問題(33)

このデータを見なくても今の豊田章男社長の時代に作られた車のリコールでは無

い。しかしこの問題を処理しなければならないのは、豊田章男社長なのだ。創業

家の一族なんぞと言う意識は捨てて、と言う事は夢中になって問題解決に当た

る事であろう。


今後トヨタが凋落してゆくか、はたまたこれを克服して顧客に愛されるクルマを

提供してゆく事が出来るか。環境問題がのしかかる中、これらを解決してゆくに

は、並大抵な努力だけでは無理である。しかし夢中になれば、道は開ける事で

あろう。


トヨタは、豊田綱領に回帰して再出発してもらいたいものだ。


それについては、次の3点はぜひとも考慮に入れておくことが必須だ。

(1)顧客目線で、(2)迅速に、(3)情報を開示して、処置と処理(原因系もつぶ

すこと、再発防止)をしてゆくと言うことで、それにはトップのリーダーシップが欠

かせないのである。したがってフロアマットが原因であったとわかった時には、


まず当座の処置としては、

迅速に、純正のマットだけを固定して使用するように徹底して、市販のマットは

使わないことの徹底だけに当座は集中すればよかったのであり、(事実、フォー

ドはこれだけで済ませている。)


そして原因系の処理には、

アクセルペダルを短くするなどの根本対策を実施すればよかったのである。これ

がいわゆる「リコール処理」となる。


このフロアマットの引っかかり問題に、カローラに採用されたCTS社のスティッキ

ーなアクセルペダル問題が大々的に報道され更にプリウスのブレーキが抜ける

などの報道が過熱し、しかも社長交代直後のことで更に内紛状態だったためにト

ヨタも対応が後手後手となり、報道の加熱とともにこれらの問題の処理にあわて

てしまって更に問題を大きくしてしまったのであろう、と推察しているのである。も

ちろんNHTSAとオバマ政権、更には痴呆の鳩山のおかげで更に問題は悪化し

ていったものと推察できるのである。


社長交代直後のトヨタは多分通常状態ではなかったのではないかと推察してい

るのであるが、そうでなければこれらのリコール問題は、冷静に処理されていた

のではないかと小生は考えている。リコールは正式な制度として認知されている

のであり、何も恥じるものでもないからである。しかしそんな状況なので、トヨタ

しても、社長の陣頭指揮がすばやく出来なかったのであろう。そのため最悪の状

態にまで落ち込んでしまったのである。結果として社長の責任が大々的にクロー

ズアップ゜されてしまったのである。まあ、そうであっても会社をうまく動かしてゆく

のが、社長の仕事である以上それは豊田章男社長が判断すべきであり、そうい

う意味で社長の責任は重大なのである。まあ社会的な問題では、社長が真っ先

に飛び出して陣頭指揮をする、と言うことが必要で当たり前のことではあるので

あるが。

          

p32【エキスパートに聞く】トヨタリコール問題で問われる日本企業の危機管理能力
2010年 3月 23日  7:46 JST

 リコール問題への対応の遅さが批判されていたトヨタも、米議会での公聴会

機にようやく積極的に動き出した。失われた信頼を取り戻すためにはどうすれば

よいのか。この問題から日本企業は何を学ぶべきか。戦略コミュニケーションを

専門とするフライシュマン・ヒラード・ジャパンの田中愼一社長に聞いた。

 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版(以下WSJ日本版):リコール問題

に関するトヨタの対応をどうみていますか。

 田中慎一氏:去年の8月、フロアマットの問題が出てきた時は適切な対応をと

る最初のチャンスでした。でも空気が読めなかった。フロアマットが引っかかった

というのは確かにあったのでしょう。しかし、ああいうことが起きた時、トヨタとして

どういう企業姿勢をみせるか、みんな期待していたわけです。

 自動車メーカーとして、部品が想定外の使われ方をし、それで事故が起きた時

に、「それは商品欠陥じゃないからトヨタの責任ではない」というのは許されませ

ん。これから新しいモデルには、それを想定するようにちゃんと構造改革をする

と同時に、今走っている車には少なくとも改善するためのアクションをすぐに取る

べきだったと思います。


 もうひとつチャンスがあったのは今年初め、アクセルペダルの問題が出てきた

時です。これは完全に構造的な問題です。あの時トップがアメリカに行くなりする

べきでした。そこもあまり積極的に対応をしなかったため、ますます後追いになっ

てしまいました。


 1回目のチャンスをミスって、2回目もミスって、3回目のチャンスは公聴会だった

のでしょう。公聴会は、少なくともトヨタ自身がイニシアチブを取り始めたというこ

とで評価しています。今後豊田章男社長が本当にイニシアチブをとり続けるだけ

のリーダーシップを発揮することができるのか。それがカギだと思います。


 WSJ日本版:
今後トヨタはどのように動けばよいのでしょうか。

 田中氏:やっと今イニシアチブをとったので、トップが先頭を切って徹底的に問

題解決のために動くしかないでしょう。途中でトップの姿が消えたらまずいと思い

ます。

 またアメリカに行くべきでしょう。販売店を回り、リコールの状況を調べるなどす

べきです。トップが陣頭指揮を執っているという姿を見せることが重要です。

 また、電子制御の部分では質問が出ているわけですから、そこを徹底的に解

明しなければいけません。本当に問題ないというのであれば、納得できる形でど

んどん究明していく。これからクラスアクション訴訟(集団訴訟)も損害賠償等々

にも直面するのでしょうけれども、なるべく誠実に答えていくような姿勢は必要だ

と思います。

 WSJ日本版:トヨタは米ABCテレビの報道を「無責任」とし、放送の取り消しと

公式の謝罪を求めています。

 田中氏:見ている側からすると、そんなことを責めるよりは、まずは対策の方

に目を向けてほしいと思います。マスコミに対して訂正しろと言うな、とは言わな

いけれども、あまり公にするのは賛成しません。それより、もっとユーザーの不安

を払拭(ふっしょく)することに一生懸命になるべきです。そういうなかで少しでも

主張してしまうと、逃げているとか、当事者意識がない、と思われてしまいます。

 WSJ日本版:問題が起きた直後、トヨタのメッセージの発信の仕方にも問題

があったと指摘されています。

 田中氏:クライシスの時のコミュニケーションの取り方は、普通の時とは違い

ます。普通の時は、「この技術はいい。この車はすばらしい」など、メッセージは

主張型です。ところが、クライシスが起きた時に主張するとbackfire(逆効果に

なって)してしまいます。主張してはいけない。受け入れる事が大事です。モード

が変わってしまうのです。

 今年2月、豊田社長が(ハイブリッド車)「プリウス」に対する最初の記者会見を

した時、ブレーキを「しっかり踏めば止まります」というような発言をしました。これ

は主張型です。これが受け入れ型のメッセージだったら、「うちのセールスマンが

行くまで乗らないでください」となります。


 「ブレーキを強く踏めば止まるんですよ」というのはまだメーカー側の視点です。

100%安全かどうか分からないのですから、「今セールスマンが必死にリコール

をやっていますから、なるべく乗らないでください」というのが相手の視点に立っ

たメッセージです。

 WSJ日本版: トヨタの問題から日本企業はどのようなことを学ぶべきでしょう

か。

 田中氏:日本のCEO(最高経営責任者)は、クライシスは自分の仕事ではない

と思っています。グローバルで活躍する企業、特に欧米の企業は、クライシスは

CEOの最も重要な専権事項だという認識があります。いくらビジネスがよくても、

いったんクライシスが起きると企業価値がドーンと下がってしまうからです。

 今回分かったことは、トヨタというあのグローバル企業のCEOでさえも、クライ

シスの対応ではリーダーシップを発揮しなかったということです。トヨタのケース

で問われることは、トップCEOの意識のあり方です。ビジネスをしっかりと大きく

することは従来通りCEOの仕事だけれども、クライシスが起きた時に企業価値

をどう守るか、そういうところも認識してもらうことが重要だと思います。

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田中愼一(たなか しんいち)フライシュマン・ヒラード・ジャパン株式会社 代表取

締役社長

 豪キャンベラ生まれ。本田技研工業デトロイト事務所長、セガエンタープライゼ

スの海外オペレーション部長等を経て、1997年フライシュマン・ヒラード(本社:

米国セントルイス)の日本法人を立上げ、代表取締役に就任。多様化するビジ

ネス課題に直面する日系外資系企業・組織にコンサルティング・サービスを提供

している。

近著に「破壊者の流儀」、「オバマ現象のカラクリ―共感の戦略コミュニケーショ

ン」(共にアスキー新書)

http://jp.wsj.com/Business-Companies/Autos/node_43991
(続く)