番外編・プリウス急加速問題(41)

しかし豊田章男社長も手をこまねいてはいなかった。傍から見ていると、トヨタとし

てはハイブリッドだけしか無いようにも見える。まあ肝心のリチウムイオン電池

燃料電池にも相当注力しているとは思うが、ハイブリッドに傾注するあまりバッテ

リーで遅れをとってはどうしようもない。ニッケル水素電池(充電池)はメモリー効

果があり自然放電もあるがかなり改良され小型化が進み、 現在のハイブリッド

車のバッテリーにはすべてこのニッケル水素電池が採用されている。しかしより

大容量で長持ちする(充放電しても劣化が少ない)リチウムイオン電池が、次世

代のプラグインハイブリッド車に使われ始めているが、かなり改良が必要なよう

だ。日産が「リーフ」、GMが「ボルト」を発売すると言う、トヨタもこの電池技術で

は、何らかの焦りがあったのではないかと思われる。

      

p84トヨタ、米テスラと包括提携 電気自動車を共同開発へ

2010年5月21日11時15分

(Photo)  会場にはテスラのEVスポーツ「テスラ・モデルS」も登場=AP
(Photo)  談笑するトヨタの豊田社長とカリフォルニア州のアーノルド・シュワルツネッガー知事=AP

 【ニューヨーク=山川一基】トヨタ自動車と米電気自動車ベンチャーテスラ・モ

ーターズは20日電気自動車事業を巡り包括提携すると発表した。トヨタはテ

スラに出資し、テスラは、トヨタが米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)と共

同生産していた米工場「NUMMI」(ヌーミー、カリフォルニア州フリーモント)の

跡地で、電気自動車を生産する。両社は生産技術や電気自動車の技術でも協

力する。


 トヨタ豊田章男社長とテスライーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が、

テスラ本社のあるカリフォルニア州パロアルトで共同会見を開いた。豊田社長は

「NUMMIで培われたものづくりのDNAが、未来の産業に引き継がれていくこと

をうれしく思う」と述べた。


 トヨタは、近く実施されるテスラの株式公開に合わせ、5千万ドル(約45億円)

を出資し、数%を保有する株主になる。テスラは、NUMMIの一部を買い取り、

2012年から量販型の電気自動車の生産を始める。数千人を新規雇用し、

1年後には生産台数を年約2万台に引き上げる。


 トヨタハイブリッド車で世界最大のメーカー。しかし次世代車として有力な充

電型の電気自動車では、日産自動車が今年末から「リーフ」を発売、GMも「

ルト
」の発売を控えるなど、主導権を握る激しい争いが待ちかまえている。トヨタ

も12年に独自で充電型の電気自動車を発売する方針だが、自前の技術にテス

ラの技術を取り込み、開発競争を有利に進める狙いがありそうだ。


 NUMMIは1984年の設立。トヨタとGMの合弁工場として26年の歴史をもつ

が、GM倒産を機に提携解消と閉鎖が決定し、今年4月に生産を終えた。トヨタ

にとって、米国進出の記念碑的工場が、最先端技術を活用した新車生産拠点

に生まれ変わることになる。


 豊田社長によると、提携のきっかけはテスラNUMMIの跡地利用に関心を

持ったこと。テスラスポーツカーに興味があった豊田氏が1カ月前にマスク氏

を訪ね、短期間で提携合意に至った。
http://www.asahi.com/car/news/TKY201005210100.html

   

しかしテスラモーターでも特別に本体を改良したリチウムイオン電池を使ってい

るわけではない。パナソニックグループなどからパソコンなどに使われる汎用の

リチウムイオン電池を購入して、それを大量につないだものである。この電池の

つなぎ方などに独特の発想があると言う。


そのベンチャー的な発想に、豊田章男社長は注目したのだという。トヨタ自動車

も元はと言えばベンチャーだった。世界で始めて自動織機を発明した豊田佐吉

ベンチャーの中のベンチャーで、その子の豊田喜一郎はその自動織機から飛

び出してベンチャーとしてクルマ作りに没頭したのである。そして一寸豊田家は

間はあくが、喜一郎の甥の豊田英二となり、息子の豊田章一郎、章一郎の弟の

達郎、そして奥田、張、渡辺と非創業家が続き、章一郎の息子の章男へとトヨタ

自動車は引き継がれているのである。


そして豊田章男社長は、新しい車の技術革新に取り組みたいのである。それが

電気自動車へ向けた取り組みなのである。素人的に見るとその電気自動車

の革新は、蓄電池の性能だけなのである。その基本は充放電を繰り返す蓄電池

(第2次電池)の機能をいかに高めるか、なのである。1回の充電で何百キロ走

れるか、なのである。しかもコストと重量と大きさと耐久性と安全性なのである。

自動車本体での革新は車体そのものをプラスチックなどの軽量素材で作るかど

かだけなので、とりあえずはあまり革新は期待されない。問題はその動力なので

ある。もっともクルマが空を飛ぶようになれば、車体の革新も必要なのだが。

そんな意味では、これらのニュースを読む限りテスラ・モーターズの第2次電池

にはそれほど革新的な技術は無いのではないかと、素人としては推察するので

ある。豊田章男社長もテスラベンチャー的な雰囲気に期待しているだけのよう

だ。

(続く)