年央雑感(29)

「今回の民主党の「狡(こす)い」ところは、消費税を前面に出して「小沢問題」

や「政治と金」とか、日本のもっとも大切な「安全保障問題」や「普天間問題」から

目を逸(そ)らせようとしたことである」

と述べたが、その前に菅直人は「脱小沢宣言」をしている。

以下は、WiLL8月号の「菅政権は偽装政権だ!」(京都大学教授・中西輝政氏)を参考にしている。

「国民の不信を招いた。(小沢氏には)しばらく静かにしていただいた方が、本人

のためにも、民主党にも、日本の政治のためにも良いと思う。」と言っていた。菅

政権の人材はすべて反小沢陣営の人材で固めたのである。更に6月7日の両

院議員総会では、テレビカメラで小沢氏を探す手立てを、施していた。この総会

には小沢氏は出席していなかった。「菅政権は小沢氏と完全に手を切っている」

と言った演出なのである。しかし本当にそうであろうか。


この鳩山、小沢のダブル辞任も、菅直人のパフォーマンスもすべて小沢の演出

ではなかったか、と疑ってみる必要がある。小沢の「政治と金」問題は、菅の消

費税発言ですっかり影を潜めてしまった。消費税に対する拒否反応が少なくなっ

ていることを知らされていたとはいえ、実に絶妙な(と言ってよいほどの)演出で

はなかったか。これで小沢の「政治と金」問題は、一旦は表面からは消えていっ

た。まあ国民もそれに騙されるほどバカではなかったのだが。民主党はそれほ

どまでして小沢を守ろうとしたのである。事実小沢は、、岩手県に向けたビデ

オメッセージでは「今後は将に私自身が先頭に立つ」と宣言していたではない

か。これこそ民主党の真意なのである。菅直人は「脱小沢宣言」をして国民を一

旦は騙しておいて、参院選に臨んだのであるが国民はおいそれとその手には

乗ってこなかったのである。しかし民主党の中心は、あくまでも小沢一郎であ

る。民主党の当座の考えは、民主党から小沢を隠しておけば民主党に対する国

民の評価はそれほど極端には落ちないだろうと踏んでいたのである。しかし、世

の中そんなに甘くは無かったのであるが、国民は「反小沢」の役者を揃えた菅政

権に、なぜか非常に期待を掛けてしまっているのである。



今年の9月には民主党の代表選びが始まる。そして向こう3年間は衆院の解

散は無い、と思われる。衆院民主党が過半数を持っている。だから嫌われ小

沢が国政の前面に出てきても、何も気にする必要は無い、と民主党は思ってい

るのである。代表選はどんな様相になっているのでしょうね。意外と、消費税問

題の責任をとって菅は立候補せずに、小沢一郎の無投票当選となっているか

も。本当にどうなるでしょうかねえ。今の民主党政権も問題だが、そうなったら、

本当に日本が心配だ。その理由を次に述べよう。


先ずは「普天間基地」の移設問題である。鳩山は今年の5月23日に沖縄入りし

ている。そしてほぼ現行案通りに「辺野古沖に移設する」と決着した普天間基地

の移設問題を、「学べば学ぶほど、沖縄の米軍基地が不可欠な抑止力であ

ると分かった
」などと、口にしている。いまさら何を言うのか、と口が開きっぱな

しになってしまうほど、あっけらかんとした無責任な言葉を発している。こんなこ

とは国民誰もが理解していることなのである。それを日本国の首相ともあろう人

物が、口にしたのである。


2010年1月5日の当ブログでこの件は言及しているからそちらを参照願いた

いが、5月の日米共同声明によって「8月末までには、移設先の具体的な位置

と工法を決めなければならない」のである。しかし現在はすでに7月の末に差し

掛かっている。あと一ヶ月で内容を詰められるか疑問である。と言うことは、民

主党・管政権はこの問題に真剣に取り組んでゆく気はさらさら持ち合わせてい

ない、のではないかと思われることである。形の上では「移設合意」となってい

るが、実際には「あーでもない、こーでもない」と言う形で、いつまでたっても工事

に着工しない状態を続けてゆくのではないか、と危惧するのである。


沖縄は確実に大反対である。鳩山が突きつけられた「怒」のプラカードを見れば

よく分かる。そして11月には沖縄県知事選がある。民主党は仲井間知事より

も、更に過激な人物を立候補させるであろう。辺野古のある名護市の市長は、

稲嶺進(64)である。彼は今年の1月24日の市長選で当選した「辺野古の海

に基地を造らせないと約束した
」市長である。民主党は着々と市長も県知事も

反対派で固めて、移設反対の構図を作り上げるであろう。こうなると「普天間

設問題」はニッチもサッチも行かなくなる。管政権はこういう構図を作りたかった

のである。そうすれば、普天間移設は頓挫する。すなわち普天間の固定化であ

る。そして沖縄全土に普天間の基地の危険性を触れ回り、米軍基地反対運動

を盛り上げてゆくのである。そうするとどうなるか。

(続く)