岡田監督に物申す。(11)

Yoree Kohという記者が書く「目上の人の命令に無条件に従うべしという日本の

文化的規範」という日本人に対するステレオタイプが、ちょっと気になるところで

はありますが、まあ、日本人は外国からはそう見られているし、確かにそういう

傾向が全体として強い国民ではあるだろうと私も言葉を濁しながらも思うし、こ

れ以上、日本人論を展開するべき場でもないので、WSJの記者がそう書いてい

ると指摘するだけにとどめておきます。


そしてやはり同紙も、岡田監督が思い切ってスタメンを入れ替えて、「人気者だ

が負傷している」中村俊輔選手を外したのが奏功したと指摘。ただし日本の場

合は「選手たちの性格も、成功の大きな要素だ。フランスやイタリアといった強

豪勢の敗退につながった、スーパースターたちのエゴがない日本代表は、内部

対立を免れてきた。今大会でこれまで4得点を決めている本田選手は間違いな

く、新しいヒーローとして台頭したが、先輩選手たちをきちんと立てている」のだと。


確かに、イングランド敗退(あああああ……)の後にも一部の英メディアは、

「スーパースター軍団」のエゴがチームの団結を妨げていた、今こそ本当のチー

ム作りを始める時だなどと批判していました(いやはや、本当に……)。


一人一人が誇りや気概をもつことは大事だけれども、サッカーがチームスポーツ

である以上、その誇りや気概やチームのためでなくてはならない——ということ

でしょうか。FIFAサイトの「日本のサムライはブルーな気持ちをぬぐい去る」とい

う記事が、日本の躍進について次のようにまとめています。


「南ア入りの時点では不安だらけだった日本代表は、大会の進行と共に、新しい

アイデンティティーの構築に成功した。端的に言えば、サムライ・ブルーは戦士

の魂は手放さずに、ブルーな気持ちだけをぬぐい去ったのだ。日本代表が武器

庫に備える新しい刀は、戦術的な規律 (tactical discipline) だ。その資質は普

段は欧州や南米のチームについて言われるものだが、日本は、これまであった

かもしれない甘さ (naivety) を全て捨て去った。おかげで、バックは実に強固だ

し、それと同じくらいフォワードはエキサイティングだ。絶え間なく動き続ける

日本のパス・サッカーに、中立的な第三者も夢中にさせられている」。


すごい賛辞です。規律あるバックが強靱にしてフォワードはエキサイティングな、

動きまわる、戦うサッカー集団になったというのです。日本が。ダークホースの躍

進にこの記者がワクワクしている様子が伝わってきます。


FIFAサイトが、ESPNが、『ニューヨーク・タイムズ』が、『ウォール・ストリート

ジャーナル』が……。実に世界的な 「岡ちゃん、ごめんね」です。パラグアイ

戦に勝っても負けても、この偉業は消えるものではありません。


◇筆者について…

加藤祐子 東京生まれ。シブがき隊や爆笑問題と同い年。実は奥田民生とも。

8歳からニューヨーク英語を話すも、「ビートルズ」と「モンティ・パイソン」の洗礼で

イギリス英語も体得。オックスフォード大学修士課程修了。全国紙社会部と経済

部、国際機関本部を経て、CNN日本語版サイトで米大統領選の日本語報道を

担当。2006年2月よりgooニュース編集者。フィナンシャル・タイムズ翻訳も担当。

英語屋のニュース屋。

http://news.goo.ne.jp/article/newsengw/world/newsengw-20100629-01.html

             

しかし、本当に「岡ちゃん、ごめんね」だけでよいのか。「予選突破は見事だっ

た。
しかし、パラグアイ戦ではなぜ点が入らなかったのか。点を入れるため

には、何が欠けていたのか
監督として、やり残したことは何か。
」と、続け

なければならないのではないか。このままま「岡ちゃん、ごめんね。」「すばらしい

チームだった。」だけで終わってしまっては、「サムライJAPAN」は永久に「ベスト

16」止まりで、それから上には進出は出来ないのではないか。その点本田は

冷静だ。

              

25本田「グループリーグ敗退も16強も一緒」

2010年6月30日(水)14:57  読売新聞

 日本のサッカーファンの多くが、南アフリカ大会を「本田のW杯」として記憶に

刻み込むのではないか。


 4試合ともフル出場した金髪のレフティーは、豪快な30メートルFKを決めた

デンマーク戦を含む3試合で、国際サッカー連盟から「マン・オブ・ザ・マッチ」の

表彰を受けた。


 パラグアイ戦も、本田は黄金の左足でゴールに迫った。40分には松井のパス

を1タッチで狙い、延長前半には得意と反対の左サイドからのFKで強烈なシュー

トを放った。最前線で120分間、攻守に体を張り続け、体力をすり減らした末の

PK戦でも4人目で難なく決めた。


 従来のMFではなく、不慣れな1トップのFWとして起用されたが、その位置で

も十分に世界に通用することを示した。


 だが、チームは初の8強入りに届かず。そのことを人一倍悔しがった。サポー

ターへの一礼を済ませ、うつむき加減で足早にピッチを去ってゆく。その肩は、

小刻みにふるえているように見えた。数十分後、こう言った。


 「オレの中では、グループリーグ敗退も16強も一緒という感じ。きょうは何が

なんでも勝ちたかった。もっと攻めに行く姿勢を世界に見せるべきだったとも思

う。オレが日本人かパラグアイ人じゃなければ、この試合は見ていない」。向上

心と本音を、悪ぶった言葉で巧みに隠した。


 アクの強い個性を備えたスターは、日本サッカー界にあって、2006年に引退

した中田英寿氏以来と言っていいだろう。4年後のブラジル大会の頃には、

28歳。果たしてどれほどの大物になっていることか。(込山駿)

http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/sports/20100630-567-OYT1T00509.html
(続く)