ドーハの歓喜(8)

 恩師の思いに報いた。09年から川崎FのGKコーチに就任したイッカ氏(53)

から、PKに対して繰り返された言葉がある。「川島は気持ちが強すぎる上に動

くのが早すぎる。お前の瞬発力なら相手が蹴ってからでも止められる。だから

前まで動くな
」。川島の悪癖を言い当てていた。


 昨年6月の南アフリカW杯決勝トーナメント1回戦パラグアイ戦。PK戦では冷

静さを欠き、悪い癖が出た。キッカーより先に動き、逆を突かれシュートを決めら

れた。帰国後、イッカ氏に「早く動きすぎていたよ」と声を掛けられた。「相手のP

Kの情報は何もなかった」。W杯後にリールスに移籍した守護神は、極限まで動

かず相手のキックを読むという恩師の教えを体現した。


 1次リーグのシリア戦で退場処分を受け、準々決勝カタール戦ではFKの壁の

作り方をミス。失点の要因をつくってしまった。「壁の作り方については問題な

かったと思っているが、修正点はあった」。この日は延長戦終了間際の同点弾を

含む2失点を喫したが、前半16分に韓国MF奇誠庸のFKを美技で防ぎ、最後

のPK戦で勝利の立役者となり、ようやくチームへの恩返しができた。


 1月4日にチームに合流すると「自分は年齢的にも上になった。言葉より、プレ

ーや態度でチームを引っ張りたい」と話していた。


 まさに、その言葉通り気合とプレーで仲間を決勝進出に導いた。「まだ1つ

残っているので。また、いい形で臨めると思う。こういう試合で、みんなが成長で

きると思う。厳しい試合は続くと思いますけど、次で負けたら意味がない」。


 04年のアジア杯中国大会、準々決勝ヨルダン戦で当時正GK川口がPK戦で

伝説となったファインセーブ連発の離れ業を見せた。それから7年、日本に本物

守護神が誕生した。川島に引っ張られ、日本は2大会ぶりのアジア制覇

へ、あと1勝
。【菅家大輔】

http://news.goo.ne.jp/article/nikkan/sports/p-sc-tp3-110126-0012.html

   

この韓国戦での殊勲者は明らかにPKを止めた川島だ。しかし殊勲者はまだま

だいる。はずれ球を蹴りこんだ細貝、本田圭佑も忘れてもらっては困る。なんと

言ってもMVPだ。前半36分の長友へのスルーバスは見事だった。ゲーム内

での彼の果たした役割は非常に大きい。

  

a2何とか“持ってた”本田圭120分魅了で“MVP”
2011年1月26日(水)06:00

(スポーツニッポン)
 ◇アジア杯 準決勝 日本2―2(PK3―0)韓国(2011年1月25日 カタール

・ドーハ)


 韓国戦も“元祖・持ってる男”日本代表MF本田圭佑がいろいろ意味で目立ちま

くり、マン・オブ・ザ・マッチに輝いた。

トップ下で120分間フル出場。時には中央から、時にはサイドから攻撃を演出

した。前半36分にはスルーパスを長友につないで1度は同点弾となる前田の

ゴールの起点になった。1―1で迎えた延長前半7分にはせっかく得たPKを失

敗したが、結果的にはこぼれ球に飛び込んだ細貝の勝ち越し弾を“誘発”した。


 2―2で突入したPK戦で第1キッカーに名乗りを上げたのは「次は決めてやろ

うと思ったから」。狙い通りに見事成功させ、最後は全員で抱き合った。


 韓国戦は“挫折”を味わっている。昨年5月24日の親善試合で先発出場したも

のの、0―2の完敗。朴智星にワールドクラスの得点を決められるなど個の強さ

を実感した。スコアレスドローに終わった昨年10月の親善試合には朴智星はい

なかっただけに、今回はリベンジの舞台でもあった。


 加えて、今大会を最後に代表引退を示唆している朴智星と代表戦で戦えるの

は今回が“ラストチャンス”。スタンドではアーセナルリバプールなど欧州各国

クラブのスカウトが熱視線。アジア最高の選手を超えるべく存在感を発揮し、再

びその名を知らしめた。


 「ここまで来られたのは非常に価値がある。でも、優勝しないと意味がない

優勝して帰りたい」。23日のオフを利用して自慢のヘアを“W杯仕様”の鮮やか

な金髪にチェンジして臨んだ試合。目立たなければ、本田圭じゃない。

http://news.goo.ne.jp/article/sponichi/sports/kfuln20110126002003.html

  

ここにも似たような趣旨の解説がある。是非参照願いたい。「本田圭、全員

MVP!受賞も謙虚/アジア杯」2011.1.31 05:06

http://www.sanspo.com/soccer/news/110131/scc1101310507008-n1.htm


このように日本チームは全員がその長所を発揮して、全員が優勝に貢献して

いる。誰が一番の殊勲者だなどとは、決め付けられない。全員が殊勲者なの

だ。それが「偉大な団結力」と言うものなのだ。「あいつを抑えれば勝てる」など

と相手に的を絞らせないという意味では、相手にとっては非常に厄介なチームな

のである。誰でも殊勲者になれる働きをする。

(続く)