番外編・プリウス急加速問題(66)

先の'10/8/26(58)ブログでは、オバマは雇用を増加させなかったから支持が急

降下したと説明している。オバマの苦戦は、その経済政策にあったことは確かで

あろう。そしてオバマの政治や経済運営のやり方が、結果的に伝統的なアメリカ

の開拓者魂にはマッチしていなかったのではないかと、いささか大胆な小生の感

じ方なのであるが、と述べているものもあるので是非参照願いたい。

まあ何はともあれ、トヨタのリコール問題をGMの再生と自身の政治的な思惑を

絡ませてしまったところに、オバマの間違いがあったのであろう。

  

マル激トーク・オン・ディマンド 第499回(2010年11月06日)
オバマ民主党は何に敗れたのか
ゲスト:中山俊宏氏
青山学院大学国際政治経済学部教授)

 Yes, we can!を合言葉に、2年前、あれだけ人々を熱狂させたオバマ大統領

率いる民主党が、2日に投開票が行われたアメリカの中間選挙で、大敗を喫し

た。4000万人とも言われる無保険者を救う医療保険制度改革や、金融の暴走

を防ぐための金融規制改革などの大きな成果を上げたにもかかわらず、オバマ

の支持率は下落し続け、民主党は議会下院の過半数をも失ってしまった。なぜ

オバマの言葉はここまで輝きを失ってしまったのか。

 青山学院大学の中山俊宏教授は民主党大敗の最たる原因を、10%に届こう

かという高い失業率の下で、オバマ政権が雇用状況を改善できなかったこと

にあると指摘する。雇用不安を抱える多くのアメリカ人にとっては、オバマ政権

が取り組んだ国民皆保険制度や核なき世界などの大きな政策は、いずれも優

先順位の高い問題とはならなかった。

 しかし、オバマの不人気には、更に深刻な背景があると中山氏は言う。それ

は、オバマが歴史的な使命感を持って推進した数々の政策が、結果的に多くの

アメリカ人が持つ伝統的な価値感情を逆なでする結果となったことだ。アメリカ

の「原風景」とも言うべき「大草原の小さな家」的な保守思想は、自助精神が非

常に旺盛で、政府、特に連邦政府が自分たちの生活に介入してくることを極端

に嫌い、それに不安を感じる。その不安がティーパーティーなどの社会運動につ

ながったと中山氏は見る。

 例えば、オバマが推進した医療保険制度改革法では、国民皆保険によって無

保険者が救済される一方で、保険に入りたくない人や医療を受けたくない人の

権利が侵害されると感じる人がいる。それは自分の生活圏に連邦政府が介入

することであると同時に、保険に税金が投入され、「大きな政府」になるのではな

いかという保守派の不安を刺激するというのだ。税金を投入してGMや金融機関

を救済する判断も、大量の財政出動による景気刺激策も、いずれも「大きな政

府」の文脈で受け止められた。

 大統領選でオバマは「保守のアメリカもリベラルのアメリカもない。あるのはアメ

リカ合衆国、それだけだ」という大きなメッセージを掲げ、共和党の穏健派保守

の取り込みに成功した。保守とリベラルの対立が深まるアメリカで、オバマ自身

は自分が両者の「橋渡し」役を担えると自負していたかもしれない。しかし、いざ

政権の座につくと、7870億ドルの大型景気刺激策やGMの国有化医療保険

制度改革など、「大きな政府」を彷彿とさせる法案を、上下両院を支配する民主

党の数の論理で次々と通していった。そうした「大きな政府へ邁進」する政策に

対する保守派の反感と不安が、オバマの予想を遙かに上回るほど大きかったと

いうのが、中山氏の見立てだ。中山氏はまた、アメリカに染みついた「国が生活

領域に入ってくることへの反感や不安」に対して、オバマは自身の言葉による説

得の力を過信していたのかもしれないと指摘する。

 しかし、実際には他の誰が大統領になったとしても、雇用状況を改善できるか

どうかは疑問だ。しかし、オバマが推進した政策が、保守派の不安を刺激するも

のだったために、本来は同床異夢の保守陣営が、反オバマの一点で結集するこ

とが可能となった。それが今回の共和党の大躍進、民主党の大敗につながった

と中山氏は話す。

 人気絶頂からわずか2年でアメリカの凋落の象徴へと転落したオバマ政権

失敗とは何だったかを検証し、2年後の大統領選挙への課題を中山氏とともに

考えた。また、この選挙結果がアメリカの国内外の政策、とりわけ対日政策に与

える影響も議論した。

http://www.videonews.com/on-demand/491500/001593.php

  

オバマトヨタ叩きの結果は、2010年の米国新車販売結果に如実に現れてい

る。先に示した2011年2月10日(木)08:00の産経新聞にも掲載されていたが、

ある意味トヨタの一人負け状態なのである。それを次に示す。


 トヨタの昨年の米国での新車販売台数は0・4%減と、市場全体が11・1%増

と急回復し他社が軒並みプラスとなる中、“独り負け”の惨敗。シェアもフォード・

モーターに抜かれ4年ぶりに3位に転落した。

 これに対し、瀕死(ひんし)の状態にあったGMは公的支援で息を吹き返し、トヨ

タ車からの買い替え客を優遇するなどで販売も急回復。昨年11月には破綻か

らわずか1年で再上場
しスピード再生を果たした。

  
オバマのGMは、トヨタを叩きトヨタ車からGM車への買い替えを大々的に図った

のである。恥も外聞もないやり方だったわけで、破綻したGMを一年で復活させ

たのである。トヨタを叩いていなければ、これほどうまくGMは立ち上がれなかっ

たであろう。しかも米国民に疑惑を拡大させるような演出で、電子制御系に問

題あり、と思わせたのである。そのためGMが再上場を果たしても、トヨタに問

題がない
ことがわかっていても、すぐにはそれを発表させなかった。(と小生は

確信しているのであるが。)2010年のトヨタの販売実績を確認して、そしてGM

の販売状況を確認してから、漸くトヨタの電子制御システムに問題がなかったと

公表させたのである。2011年2月8日である。あくまでもトヨタ憎しである。

2010年の米国新車販売では、トヨタは一人負けだったのである。

(続く)