番外編・プリウス急加速問題(69)

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トヨタの品質管理に何か根本的な問題が起きているのだろうか。

 私にも内情は分からない。

 ただ、先ほどリコール自体は珍しいことではないと言ったが、今回のトヨタのケ

ースは数モデルにわたり、しかも何年もの製造年にわたってリコールされるとい

う大掛かりなものである点では、やはり珍しいと言わざるを得ない。

トヨタに限ったことではないが)コストを極力削減しようとして部品を共有したこ

ともひとつの理由だろう。コストは安くすむが、欠陥が出た際には問題は拡大し

てしまう。


 ただ、そうした自動車業界の潮流はさておき、質問に戻れば、今回のリコール

問題以前にも、ここ数年、数モデルでトヨタらしくない欠陥が続いていたことは

事実だ。たとえば、テキサスで製造したピックアップトラックのタンドラでは、発売

後にカムシャフトの不備でエンジン部分にひびが入るという問題が出た。タンド

ラでは他にも小さな欠陥がいくつかあった。また数モデルのエンジンでスレッジ

(金属粉)が大量に発生するという問題も報じられた。


 いずれの場合も、トヨタが静かに処理したので、今回のような騒ぎにはならな

かった。もっとも、トヨタ・ディーラーたちによれば、ここ数年保証期間内の新車の

修理コストが上がっていたらしく、それを考え併せると、トヨタの完璧な品質神話

にかげり
が差していることは事実だ。

―今回のトヨタの対応については、米国の識者の多くが「
Too little Too late(不

十分で遅すぎる)」と指摘している。対応が後手に回ってしまうのはなぜだとみ

るか?


 リコールにはもちろん多大なコストがかかるからだろう。しかし、(ドライバー側

の問題というトヨタの当初の認識に表れているように)、はっきり言えば、問題を

重視していなかった
ということではないか。


 では、なぜ問題を重視できなかったのか。突き詰めれば、その原因は、トヨタ

社内のコミュニケーションの問題
だ。はっきりとはわからないが、事態を分析す

るのは、米国のエンジニアなのか、日本側の人間なのか、決断を下すのは誰な

のか――関係者間のコーディネーションがうまく働かず、その結果、起こってい

る問題にしかるべき手を打てなかったということではないか。


 そもそもアメリカ政府が2人の人間をわざわざ日本に送って、問題の深刻さを

伝えねばならなかったことは、通常では考えられない。殊にトヨタは、いつもアメリ

カの政府機関の調査には協力的だったにも関わらず、だ。

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―アメリカの消費者は、トヨタ車を買うことを躊躇するようになるだろうか。

 こう答えよう。1960年代、70年代に、アメリカの国産自動車産業は(顧客離れ

という)深刻な事態に陥った。ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーター

技術的な欠陥車を出しながら、それを認めず、ドライバーの非難に終始したた

めだ。そのような姿勢がアメリカの車のブランドを殺し、トヨタなどの日本車に入

り込む隙を与えたと私は考えている。


 トヨタも、同じ道を辿らないとは限らない。今やアメリカの車の質は向上した。

また、韓国の車の質も向上した。質という面でも、トヨタ車に代わる
消費者の選

択肢
は多数存在するわけだ。今回のリコール問題でトヨタに不信感を抱いた消

費者が、他のメーカーの車に率先して乗り換えていったとしてもまったく不思議

ではない。


―もう、そうした動きは出ているのか。

 まだだ。市場は混乱していて、トヨタ車のオーナーたちはとにかく修理が早く終

わることを求めている。重要なターニングポイントは、4~5月頃ではないか。お

そらくトヨタはその頃に、ディスカウントを行うなどの大々的なキャンペーンに打っ

て出なければならない事態に追い込まれるだろう。さもなければ、販売を再び活

気づけることはできないのではないか。


―今後起こりうる最悪のシナリオは?

 リコール対象車で修理後に再び問題が浮上することだ。そのようなことがあ

れば、トヨタにとって回復しがたい打撃となるだろう。現在すでに
電気系統に問題

があるのではないかという声があるが、それも含め、まだ第三の問題が潜んで

いたということになれば、消費者は他社の車に殺到する。ただ、仮にそうした事

態が起こらず、人びとが自然とこの問題を忘れていったとしても、トヨタは今後の

ためになぜこれほど対応が遅れたか問題の本質を見つめ直す必要がある。


トヨタに対する集団訴訟は頻発するのか。

 アメリカでは集団訴訟は避けられない。すでに動き回っている弁護士はたくさ

んいるだろう。大半のケースは裁判に至らないだろうが、いくつかは裁判所に持

ち込まれる。裁判の過程で、トヨタが何をして何をしなかったかがきっと明らかに

なるはずだ


(聞き手/ジャーナリスト、瀧口範子

http://diamond.jp/articles/-/5425

       

今ではトヨタのリコールの原因は、フロアマットがアクセルペダルに引っかかった

と言うことだけが主原因だった、と言うことがわかっている。CTSスティキー

なペダル
は付けたし的なものだ。この件はすでに2010/5/10~11,NO.27~28の

ブログで詳しく述べているので、そちらも参照願いたい。しかしレイ・ラフードは矛

先を電子制御系に向けた。全くあてが外れて電子制御系には問題がなかった

訳であるが、トヨタの売り上げはがた落ちしGMが盛り返し、ラフードはそれなり

に目的を果たすことが出来たのである。


ちなみにCTS社は、1896年にイリノイ州シカゴで電話機や交換機などを作る会

社として設立された。Chicago Telephone Supply Companyだ。1960年には

会社名を、CTS Corporationに代えている。その製品は、機械部品から電気・電

子関係部品まで多岐に亘っていると言う。

http://www.ctscorp.com/investor_relations/IR_SummaryInformationReport.pdf


またNHTSAは、National Highway Traffic Safety Administrationで米国運輸

省道路交通安全局 と言い、”nit-suh”と発音するらしい。また米国高速道路交

通安全局とも表記されている。


NASAは、the National Aeronautics and Space Administratinでアメリカ航空

宇宙局と呼ばれている。


まあ当時としては、かの有名なマリアン・ケラー女史が「
それも含め、まだ第三

の問題
が潜んでいたということになれば、
」などと言えば、尚更マスコミや一般ユ

ーザーも含めトヨタ車に対して疑心暗鬼の気持ちを抱かせるに十分であったこ

とであろう。ある意味、まんまとオバマのGM再生のシナリオ通りに話を進ませる

に寄与したものと思う。ここにも書いてあるように、「
質という面でも、トヨタ車に

代わる消費者の選択肢は多数存在
」するようになっているため、トヨタはより打

撃を受けたのであろう。そうでもしなければ、アメリカでは「プリウス」のハイブリッ

ド車の独り舞台になりかねなかった訳だ。オバマとしても、ここは少し時間が欲し

かった処だったのである。まあ、そういう意味では、トヨタは「飛んで火に入る夏

の虫
」状態だった訳だ。

(続く)