対する「リーフ」の場合、筆者が2010年1月の日産ノースアメリカ本社取材時
には「使用条件によって航続距離が変化することを、発売前には消費者に十分
に説明する」としていたが、12月発売直前の現時点で、LAオートショー現地で米
国側のマーケティング関係者、日本側の技術関係者とも明確な説明をしなかった。
「リーフ」試乗中、日産の米国人広報関係者も「航続距離はエアコンをつけると
下がる。市街地でのストップ&ゴーが多いと回生ブレーキ量が増えて航続距離
が伸びる」など、断片的な表現だけで、データとして明確な回答は持ち合わせて
いなかった。
カーナビと連動した「現在のバッテリー電気残量で走行可能なエリア」の表示
はあるが、回生ブレーキの使用頻度や、ECOモード⇔Dモードの変換で、表示
される走行可能距離の変化量が大きい。本来ならば、使用方法による航続距
離変化を、より詳しく消費者に通知するべきだろう。さもなければ最悪の場合、
消費者側が予期していない状況で「リーフ」は止まってしまう。
こうした状況について、ある日系自動車メーカーの北米法人幹部は「日産は
一体、どうするつもりなのか?」と高みの見物を決め込んでいた。
また「充電方式」についても、本連載で取り上げてきたように、GMは日本の
チャデモ型・直流急速充電方式に真っ向から反対だ。そのため「ボルト」には
現状では、急速充電用のソケットは装備されていない。
以上見てきたように、先端技術面、クルマとしての完成度では「リーフ」に軍配
が上がる。だが、「ボルト」は「リーフ」に端的に劣っているワケではない。
「ボルト」には、各賞の受賞に向けた各種の働きかけ、PL(製造者責任)法を配
慮しての航続距離の度重なる変更、生産・販売で無理の出ないような少なめの
台数見積もりなど、したたかな事業戦略が組み込まれている。
新生GMの期待の星「ボルト」の総合的な実力はかなり高い、と見た。
http://diamond.jp/articles/-/10194
完全な電気自動車の場合、「最悪の場合、消費者側が予期していない状況で
(リーフは)止まってしまう」と言う危険があることに、言及されている。これはあ
る意味、車にとっては、致命的な欠陥であろう。だからGMは、1.4Lのガソリン
エンジンを搭載させたのであろう。そして電気自動車という革新技術を前面に出
したかったために、「エンジンは発電機を回すだけだ」などと言うティーザーキャ
ンペーンを展開したものと、小生は詮索している。
しかもこの「ボルト」は、駆動用のモーターとエンジンと接続した発電用のモータ
ーの2つのモーターを搭載している。この2つのモーターは、トランスアクスル
内にコンパクトに収められている。そしてこのトランスアクスルは1.4Lエンジン
と接続されている。GMでは、このトランスアクスルのことを「ボルテック電気駆
動システム」と称している。この「ボルテック電気駆動システム」には、プラネタ
リーギア遊星歯車があり、エンジンからの動力をこれで分割していると言う。
丁度スプリット方式のハイブリッドビークルに似ているようだが、パテントなどの
関係でトヨタのTHS方式とは異なっているようだ。このトヨタのパテントを回避
するためにも、その制御プログラムの全容を、GMは知りたかったのであろう。
だからオバマを焚き付けて、ありもしない急加速問題を作り上げアメリカ中を沸騰
させて、その制御プログラムを開示させたものであろう。
シボレー・ボルト(Chevrolet Volt)は、Wikipediaによると、5ドアハッチバック
型のレンジエクステンダー(Range extender航続距離延長)式電気自動車(シリ
ーズ式のプラグインハイブリッド車)だと言う。そしてこの1.4Lエンジンは当然発
電機を回すのではあるが、直接駆動する方法も模索した結果、プラネタリーギア
で直接動力を車軸に伝える方法を考案した。もちろんプリウスの特許に引っか
からないように考えて、エンジンの出力の最大70%ほどを直接駆動に振り向け
ると言う。残りの30%は、発電機を回してバッテリーの充電に使われる。当然エ
ンジンは発電を旨としているので、小さなものでよいのである。とするとシリーズ
式と言うよりも、スプリット式ハイブリッド型のオートモビルなのであり、プリウス
と同じ範疇も車なのであろう。だから尚更、トヨタから文句が出ないように、トヨタ
を萎縮させるためのネガティブキャンペーンを、全米で展開したものと思う。トヨ
タもこれだけ叩かれれば、シボレー・ボルトの電子制御スロットルシステムに悶
着は起こせないだろうと、GMは踏んだものと思われる。
そして仕組みとしてはかなり複雑だと言う。だから、この複雑な仕組みを考えた
GMは落ちぶれたりとはいえ、その底力は侮れない、と言った解説もある。
以下のネットを確認するとよい。
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/impression/20101124_403271.html
インプレッションレポート、シボレー「ボルト」
http://www.carview.co.jp/green/ecoword/9/15/
レンジエクイテンディドEV、レンジエクステンダー式EV
http://www.carview.co.jp/green/report/road_imp/chevrolet_volt/271/
海外試乗レポート
http://kunisawa.txt-nifty.com/kuni/2011/01/post-8c49.html
ボルトのポテンシャルに驚く
(続く)