番外編・プリウス急加速問題(78)

 対する「リーフ」の場合、筆者が2010年1月の日産ノースアメリカ本社取材時

には「使用条件によって航続距離が変化することを、発売前には消費者に十分

に説明する」としていたが、12月発売直前の現時点で、LAオートショー現地で米

国側のマーケティング関係者、日本側の技術関係者とも明確な説明をしなかった。


「リーフ」試乗中、日産の米国人広報関係者も「航続距離はエアコンをつけると

下がる。市街地でのストップ&ゴーが多いと回生ブレーキ量が増えて航続距離

が伸びる」など、断片的な表現だけで、データとして明確な回答は持ち合わせて

いなかった。


 カーナビと連動した「現在のバッテリー電気残量で走行可能なエリア」の表示

はあるが、回生ブレーキの使用頻度や、ECOモード⇔Dモードの変換で、表示

される走行可能距離の変化量が大きい。本来ならば、使用方法による航続距

離変化を、より詳しく消費者に通知するべきだろう。さもなければ最悪の場合

消費者側が予期していない状況で「リーフ」は止まってしまう



 こうした状況について、ある日系自動車メーカーの北米法人幹部は「日産は

一体、どうするつもりなのか?」と高みの見物を決め込んでいた。


 また「充電方式」についても、本連載で取り上げてきたように、GMは日本の

チャデモ型・直流急速充電方式
真っ向から反対だ。そのため「ボルト」には

現状では、急速充電用のソケットは装備されていない。  


 以上見てきたように、先端技術面、クルマとしての完成度では「リーフ」に軍配

が上がる。だが、「ボルト」は「リーフ」に端的に劣っているワケではない。


「ボルト」には、各賞の受賞に向けた各種の働きかけ、PL(製造者責任)法を配

慮しての航続距離の度重なる変更、生産・販売で無理の出ないような少なめの

台数見積もりなど、したたかな事業戦略が組み込まれている。


 新生GMの期待の星「ボルト」の総合的な実力はかなり高い、と見た。

http://diamond.jp/articles/-/10194

     

完全な電気自動車の場合、「最悪の場合、消費者側が予期していない状況で

(リーフは)止まってしまう」と言う危険があることに、言及されている。これはあ

る意味、車にとっては、致命的な欠陥であろう。だからGMは、1.4Lのガソリン

エンジン
を搭載させたのであろう。そして電気自動車という革新技術を前面に出

したかったために、「エンジンは発電機を回すだけだ」などと言うティーザーキャ

ンペーンを展開したものと、小生は詮索している。


しかもこの「ボルト」は、駆動用のモーターとエンジンと接続した発電用のモータ

ーの2つのモーターを搭載している。この2つのモーターは、トランスアクスル

内にコンパクトに収められている。そしてこのトランスアクスルは1.4Lエンジン

と接続されている。GMでは、このトランスアクスルのことを「ボルテック電気駆

動システム
」と称している。この「ボルテック電気駆動システム」には、ラネタ

リーギア
遊星歯車
があり、エンジンからの動力をこれで分割していると言う。

丁度スプリット方式のハイブリッドビークルに似ているようだが、パテントなどの

関係でトヨタのTHS方式とは異なっているようだ。このトヨタのパテントを回避

するためにも、その制御プログラムの全容を、GMは知りたかったのであろう。

だからオバマを焚き付けて、ありもしない急加速問題を作り上げアメリカ中を沸騰

させて、その制御プログラムを開示させたものであろう。


シボレー・ボルト(Chevrolet Volt)は、Wikipediaによると、5ドアハッチバック

型のレンジエクステンダー(Range extender航続距離延長)式電気自動車シリ

ーズ式
プラグインハイブリッド車)だと言う。そしてこの1.4Lエンジンは当然発

電機を回すのではあるが、直接駆動する方法も模索した結果、プラネタリーギア

で直接動力を車軸に伝える方法を考案した。もちろんプリウスの特許に引っか

からないように考えて、エンジンの出力の最大70%ほどを直接駆動に振り向け

ると言う。残りの30%は、発電機を回してバッテリーの充電に使われる。当然エ

ンジンは発電を旨としているので、小さなものでよいのである。とするとシリーズ

式と言うよりも、スプリット式ハイブリッド型のオートモビルなのであり、プリウス

と同じ範疇
も車なのであろう。だから尚更、トヨタから文句が出ないように、トヨタ

を萎縮させるためのネガティブキャンペーンを、全米で展開したものと思う。トヨ

タもこれだけ叩かれれば、シボレー・ボルトの電子制御スロットルシステムに悶

着は起こせないだろうと、GMは踏んだものと思われる。


そして仕組みとしてはかなり複雑だと言う。だから、この複雑な仕組みを考えた

GMは落ちぶれたりとはいえ、その底力は侮れない、と言った解説もある。

以下のネットを確認するとよい。

http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/impression/20101124_403271.html
インプレッションレポート、シボレー「ボルト」

http://www.carview.co.jp/green/ecoword/9/15/
レンジエクイテンディドEV、レンジエクステンダー式EV

http://www.carview.co.jp/green/report/road_imp/chevrolet_volt/271/
海外試乗レポート

http://kunisawa.txt-nifty.com/kuni/2011/01/post-8c49.html
ボルトのポテンシャルに驚く
(続く)