日韓併合100年(116)

事実、全権委員ウィッテは、随員の一人に「日露友好協定」案の作成を指示し

ている。しかしこれは物になっていない。そしてホテルに帰着後、米国通信社

「AP」
に日本側の条件をこっそりと洩らしている。「AP」通信は親露的であった。

ロシア全権団が7/17、ロシア出発前に記者会見した通信社もAPであった。この

ことは講和談判が決裂した時に、責任を日本側に押し付けるための準備でも

あった。ウィッテは、何事にも目を配り用意周到であった。外交とは斯くあるべき

であり、見習うべき点は多い。今の管直人の比ぶべくもない体たらくに対して

は、ウィッテの爪の垢でも煎じて飲ませたいものである。


8/11
、主要な米国の新聞は、APが伝える日本の講和条件を一斉に報道した。

ウィッテがAPに伝えた条件は次の冒頭にNO.を振った9項目であった。残り

の3項目は抜けていた。ウィッテはこのNO.順にもらしたため、日本がこの順に

重きを置いているが如きの誤解を生むことになる。ウィッテは賠償金を第1番に

持ってくることによって、マスコミをして日本の強欲振りを PRさせて日本を悪者

に仕立て上げると同時に、賠償金の要求を引っ込めさせたかったかも知れない。

ウィッテの洩らした講和条件-NO.はウィッテの順番
 ↓                          ↓ロシア回答内容
(5)  (1)日本の韓国管理
(絶対的条件) 露譲歩可

(4)
  (2)満州撤兵(絶対的条件)  露譲歩可

(抜)
  (3)満州の清国への還付(絶対的条件)  露譲歩可

(抜)
  (4)満州に置ける機会均等(付加条件)  露譲歩可

(2)
  (5)樺太の割譲(比較的必要条件) 露譲歩不可

(3)
  (6)清国に於けるロシア権益の割譲(付加条件)  露譲歩可

(6)
  (7)南満州鉄道および付属権益の譲渡(絶対的条件)  露譲歩可

(抜)
  (8)満州横貫鉄道の非軍事化(付加条件)  露譲歩可

(1)
  (9)日本の戦費の「払い戻し」(比較的必要条件) 露譲歩不可

(7)
(10)中立港逃避のロシア艦の引渡し(比較的必要条件) 露譲歩不可

(8)
(11)ロシアの極東海軍力の制限(比較的必要条件) 露譲歩不可

(9)
(12)ロシア領海・領水の漁業権の許与(付加条件)  露譲歩可

  
このウィッテの付けた順番を見ると、なんとなくウィッテの意図がわかるような気

がする。即ち、金の支払いと領土の割譲がそのトップ2、そしてトップ3に満州

おけるロシア権益となっているので、明らかにロシアが損をすることを嫌っている

のである。


「ロシア側の考え方は、ロシアの「名誉と尊厳」に関する項目は絶対に譲歩しな

いが、それ以外は譲歩し、もし談判決裂した時は日本側に責任を押し付ける、と

言うものであった。」と以前に述べておいたが、将にその通りの優先順位付けで

あった。日本側の要求は、まずは韓国からのロシアの撤退であり、そして韓国

への列強の侵略を排除するための日本の保護であり、そのためにも満州にお

けるロシアの影響の抹殺であった。いわゆる絶対的条件がそれであり、関連事

項を一括りにしたために、12項目は上記のような順番となったものと推察できる。

(続く)