日韓併合100年(123)

(1)樺太を二分して北緯五十度以北をロシアに還付し、以南を日本が領有する。

(2)
日露両国は、宗谷および間宮海峡自由航行を阻害しないことを約束する。

(3)
樺太の北緯五十度以北の還付の報酬として、ロシアは日本に12億円を支

払う。

(4)
以上の協定が成立すれば、日本は、捕虜休養費などを除いて、軍備賠償

関する要求を撤回する。


しかしこの秘密合意は、両委員の「個人的合意」であるので、両政府の正式な

決定を待たなければならない。そのため次回の談判は8/22(火)とすることにした。


8/18(金)、午後の会議。(12)ロシア領海・領水の漁業権の許与(付加条件)が

合意され、8/22(火)は午後からの開催とし、散会となる。

 
対立項目は次の4項目てあった。'11/7/29,NO.120を参照のこと。

(5)樺太の割譲問題(9)日本の戦費の「払い戻し」(10)中立港逃避のロシ

ア艦の引渡し
(11)ロシアの極東海軍力の制限の4項目である。(10)と(11)

項目は先に日本が撤回している。8/1のNO.121を参照のこと。(12)ロシア領

海・領水の漁業権の許与
、は8/18に合意している。


従って残る対立項目は、(5)樺太の割譲問題、(9)日本の戦費の「払い戻し」

だけである。この解決策がこの「秘密合意」である。後はニコライ2世の承諾待ち

だけである。


その頃元法相の金子堅太郎は、オイスターベイの大統領ルーズベルトの別荘

を訪問していた。8/17に小村委員から「ロシア説得」を大統領に依頼するよう頼

まれた金子は、まだこの「秘密合意」は知らない。金子はこの2点の項目は両国

とも譲ろうとせず、妥協の見込みが無いので大統領に「ロシア皇帝への親電

を発して、説得をしてもらう依頼したものである。


大統領は、まずウィッテ宛の譲歩勧告の電文を口述して発信させた。この電報

はその日の夜、「ウェントワース」ホテルに届いた。しかし国務次官補のパース

は深夜までホテルには戻ってきていない。


大統領は、談判が不調となっても決裂させずに48時間の猶予を取るよう小村

委員に伝えるよう依頼した。ロシア説得の時間をとるためであった。

 
8/19、ローゼンは日が変わってから酔っ払って帰ってきた。しかし電報を読むや

否や「ウィッテ」の部屋に疾走しウィッテをたたき起こして、電報の内容を伝えた。


「最重要のメッセージを伝えるので、委員ローゼンをオイスター・ベイに派遣され

たし」との内容であった。ウィッテも委員ローゼンの部屋へ急ぎ、大統領との会見

を指示した。そして国務次官補パースに聞いた最も早い方法で、ローゼンは翌

日早朝オイスター・ベイに向けて出立した。

(続く)