世の中、何だこれ!(TPP,9)

しかも東アジアは、日中韓と言う一大経済圏を含む地域でありASEANはこれか

ら成長する地域であり、今後政治的にも重要性は確実に増してくる。さらには天

井知らずの軍拡を進めている中国がその中心にいる。ASEANが中国になびい

てしまえば、国際政治や安全保障の上でも危険極まりがないのである。


そしてシンガポールブルネイ、マレーシア、ベトナムは、TPPにも参加してい

る。だから米国はこのTPPに参画したのである。米国は日本市場を狙って、

日本をTPPに引き込んだわけではないのである。話しはそんな簡単なことでは

ない。次の論文を読んで欲しい。

   
田村耕太郎の「経世済民見聞録」 http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20111116/223885/?mlh2
43狙いは中国! TPPに引き込め!
国際政治のパワーバランスから見てみよう


2011年11月17日 木曜日
田村 耕太郎


 日本では、いまだにTPPで騒いでいる。私自身、とても驚いている。


ただ、米国内でもTPPの重要性はここにきて少しずつ上がっている。それは、退

任間近と言われる、ヒラリークリントン国務長官の花道としてである。通常、貿

易は、USTR(米通商代表部)や商務省の所管だ。それが国務省マターになって

いるというのはどういうことか? 米政府内では、今や
TPPは、完全に外交安

全保障政策
として扱われているのだ。


 今回はTPPの背後にある国際政治上のパワーバランスと安全保障上の意味

合い、そして日本の交渉力について書く。結論から言えば、TPPはアメリカの

戦略の一環でもある。そして、日本は、米国に対して史上最大級の交渉力

を持っており、アメリカに大いに物申すチャンスである。


TPPってトイレット・ペーパー・パーティー?


 日本でのTPP騒ぎに驚き、米国に住む日本人の知人に伝えたところ、彼女が

米国人の配偶者に「TPPって何か知っている?」と尋ねた。彼は「トイレット・ペー

パー・パーティーのこと?」と答えたそうだ。このカップルは相当高い教育を受

けた、情報に敏感なアッパークラスである。それでもTPPに対する米国人の認

識はこの程度なのだ。米国人がこれだけ知らない政策に、米政府が力を入れて

いるわけがない。


 報道の優先順位は、政府がそれぞれの政策に与える重要度を暗示している。

海外メディアでは、本社から注目されることの少ない東京支局の記者たちが、

TPP大騒ぎに関する原稿を本社に送り続けている。だが、世界ではもっと大きな

ニュースが連続している。よって、TPPの記事は、国際面の片隅で小さく扱われ

るのがせいぜいだ。国民の関心と認知は、報道の優先順位に影響される。


 日本は「TPPはアメリカの陰謀」とか「日本には交渉力がない」とか被害妄想か

ら来る思い込みから脱する必要がある。ワシントンにいるアメリカ政府関係者や

シンクタンクの連中に聞くと、「日本が被害妄想に陥っていることに驚いている。

日本を狙い打ちなんかするわけないのに」と戸惑いを隠さない。恐怖をあおる

ばかりで、建設的な代替案を何ら持たない悪質評論家に左右されてはならない。


 政府は血税で賄われている。自国の国益のために国際交渉をリードするの

は、どの国でも当然のことだ。その点だけをことさらに強調して、陰謀よばわりす

るのは大人気ないと思う。また、逆提案や撤退が許されない国際交渉などある

はずがない。そんな当たり前過ぎることを、交渉に参加する前から「できる」「でき

ない」と大騒ぎするほうが国益を損ねる。


 外交交渉は、手の内を明かさないのが鉄則だ。逆提案の内容や撤退につい

て、政府の代表が明言できるはずがない。世界で最も常識的で民度の高い

日本人が、少なくともメディアの報道の中では、自国の国益を損ねかねない議

論をしている。これが知れると世界中から驚かれるだろう。不幸中の幸いとい

うか、皮肉なことにTPPは、米国では日本国内ほどにニュースになっていないが。


リー・クワン・ユーの憂鬱と米国の利益

 アメリカにおける数少ないTPP専門家に聞くと「そもそもTPPの発端は、シンガ

ポールのリー・クワン・ユー前顧問相である」と漏らしてくれた。

 敬愛するリー氏とは毎年1回、直接お会いして話を伺う機会を頂いている。彼

は会うたびに「日本がもっとしっかりしてくれないと、アジアは中国に席巻されて

しまう。頼むよ」と冗談まじりに繰り返す。


 リー氏は中国でも絶大な人気だ。中国国内にいくつもの“シンガポール”をつく

ろうとしている中国政府や地方政府の関係者に呼ばれて、中国で政策の講義を

している。リー氏によれば、行くたびにその真摯な姿勢と改革のスピードに驚嘆

するという。同氏は「このままでは中国が共産党支配体制の下で進める国家

資本主義
が、アジアのスタンダードになりかねない」と思っている


 アジアの貿易のハブとして継続した発展を目指すシンガポールは、アジア全

体のバランス
を常に考えている。ある1国がルールや基準を独占することを極

端に恐れる。さらに、中国の国家資本主義的なルール国営企業の腐敗、知

的所有権の無視など)がアジアを席巻するようでは都合が悪い。


 リー氏は最近、お会いするたびに「中国の継続的な発展は重要で不可欠だ。

しかし、中国に対するカウンターバランスが必要だ。中国の経済や企業をもっ

とオープンでフェアな方向に導く力がアジア太平洋に今こそ必要だ」と声高に叫

んでいる、


 アメリカ政府関係者によると、ブッシュ政権が着手したTPPの元々のアイデ

アは、リー氏の「アメリカが、中国に対するカウンターバランスになれる唯一の存

在だ。貿易のルールづくりを一緒にやろう」との提言から始まったという。「中国

囲い込み」というより、「流れをつくって中国も引き込んでいこう」と考えている


 今回のAPECにおいて、カナダメキシコもTPP交渉への参加を決定した。

日本も加えれば、これで世界経済の4割(GDP換算)が参加する枠組みになる。

輸出金額がGDPの25%に達するほどの貿易立国・中国は、TPPに加わらない

と交易条件が悪化して、厳しい立場に陥る。実際、中国政府は「TPPには入ら

ない」と公式に宣言しているわけではない。


 アメリカにとって今後、中東、中南米にも増してアジアの重要性が高まっていく

のは間違いない。その中で経済面でも、政治・安全保障面でもカギを握るのが

中国だ。対中国政策はアメリカ政府にとってトップ3に入る懸案事項だ。サイバ

ーテロ
台湾海峡北朝鮮などの安全保障事案に加えて、人民元為替管理

知的所有権保護国営企業の商慣行などの経済問題もアジェンダに入って

いる。これら中国独自の経済慣行をよりフェアでオープンなものに改めさせる

場をアジア太平洋につくろうというのがTPPの戦略的意図である。


 リー氏の懸念と提言が、アメリカの利害に一致して、マイナーながらも始まった

のがTPPだ。自由貿易に懐疑的だったオバマ大統領は、ブッシュ政権で始まっ

たこの政策を事実上放置してきた。ここにきて、政策の一環として腰を上

げつつあるというのが事実に近いところだろう。


 GDPに対するアメリカの輸出額の割合はわずか7%である。シンガポール

の220%、韓国の50%、中国の25%、日本の11%に比べてはるかに低い。

喫緊の課題である雇用を押し上げる効果も限定的だ。しかしながら「国際政治

安全保障政策が背景にある通商政策です」なんて、たとえ相手が日米政府

であっても、米政府が公式に言える話ではない。

(続く)