世の中、何だこれ!(TPP,18)

韓国ウォンは現在極端に安いため、輸出が好調で輸入価格は高くなっている。

当分はいわゆる物品の貿易問題は、深刻な状態にはならないだろう。この点も

日本とは大違いである。何度でも言うが、まことに民主党と日銀の白川総裁の

ボンクラ状態には呆れてしまう。今の円高をなんとするか。

まあ次に、韓国の状況を見てみよう。韓国は11/22に米韓FTAを、大混乱の中

批准しているのだ。

   
7韓米FTAとTPPが抱える共通の課題
何が起こるか分からない――が不安

2011年11月9日 水曜日
趙 章恩

 韓国の李明博大統領が10月11日に訪米して以降、韓米FTAの批准手続きが

韓米両国において急ピッチで進んでいる。


 米上院は10月12日、賛成81票、反対で15票で韓米FTAを批准した。オバマ

大統領が10月21日に韓米FTA履行法案に署名。これで米国における韓米FTA

の手続きは完了した。


 韓国の国会が韓米FTAを批准すれば、FTA履行のための手続きが完了したと

いう書簡を両国間で交換する。その後、両国が別途合意した日から韓米FTA

公式発効する。


FTA批准反対デモが激化


 韓国では10月末から、国会議事堂のあるソウル市ヨイドで韓米FTA批准反対

デモが激化している。デモの中心となっているのは韓米FTA阻止汎国民運動

本部
http://www.nofta.or.kr/)。同本部は2006年3月に発足した団体。100あま

りの市民団体を傘下に持つ。「対米経済従属進め社会の格差を広げる」韓

FTAに反対し、再交渉を求めている。韓米FTA批准反対集会を解散させる

ため、警察が10月28日と11月3日の両日、参加者に対して水鉄砲を撒水。国会

に近づこうとするデモ参加者を連行することもあった。


 野党と韓米FTA阻止汎国民運動本部は「韓米FTAによって、韓国は得るもの

より失うものの方が多い。国民の1%が得するために99%が犠牲となってしま

う」と主張している。6つの保健医療団体が集まって2001年6月結成した「健康

権実現のための保健医療連合」も「1%のための韓米FTAに、99%の国民は反

対する」として韓米FTA反対デモに参加している。宗教団体も連帯し「韓米FTA

反対運動は経済主権を守るための戦いである。小商人の立地を狭くしたり、医

療費や医薬品の価格を高くしたり、貧しい人を苦しめる制度になってはならない」

と声明を発表して、韓米FTA批准に反対している。


 11月3日の夕方、筆者も国会を訪れた。ヨイド駅や国会周辺に集団で集まって

いる人を見ると、韓米FTA反対のプリントを手にした会社帰りに見えるOLや制

服姿の高校生の姿がみられた。韓米FTAは農民や政治家、市民団体といった

一部の人だけの心配事ではない。


 3日の夜は、ろうそく集会が行われた。これを見て筆者は、2008年の光景を思

い出した。当時は、米国産牛肉の輸入に反対する主婦が子供をベビーカーに

乗せてろうそく集会に参加した。中高校生も多かったことが話題になった。


ネット上でも、韓米FTA反対のコメントが絶えない

 驚くのは筆者がよく訪問するアイドルのファンクラブ掲示板、主婦向け料理掲

示板、財テク掲示板、といった政治に関連のない掲示板にまで韓米FTA反対の

書き込みが絶えないことである。「韓米FTA批准反対集会に参加した」「または

参加する」という書き込みも続いている。集会に参加できなくても、Twitterで賛成

または反対意見を表明したり、韓米FTAに関するつぶやきをRT(リツイート)す

る一般ユーザーやソーシャルテイナーをたくさんみかける。Twitterにはハッシュ

タグ#noFTA、#FTAをつけたつぶやきが増えている。本コラムで以前紹介した、

Twitterを使ったソーシャルテイナーの影響もまだ続いている(関連記事「なぜ韓

国に「ソーシャルテイナー」が生まれたのか?」。


 韓国は2011年10月31日時点でスマートフォン加入件数が2000万を突破し

た。人口の4割がスマートフォンを使っている計算になる。スマートフォンが普及

すると、リアルタイムでいろんな人とつながることができるソーシャルネットワーク

サイト(SNS)を利用する人が自然と増える。


 Twitterを使って韓米FTAに反対する集会を呼びかけたり、韓米FTA反対の意

見をつぶやいたりする人が増えるに従って、政府の韓米FTA締結担当者である

キム・ジョンフン外交通商部(韓国の外務省)通商交渉本部長も、韓米FTAのメ

リットを伝えるためTwitterを利用するようになった。


若者はソウル市長選で自らの力に目覚めた


 韓国は10月26日にソウル市長の補欠選挙を実施した。小学生の無料給食

政策をめぐって前市長が辞任したのに伴うものだ。市民運動家出身の弁護士

パク・ウォンスン氏が無所属で出馬し53.4%の支持を得て当選した。20~40代

に人気の高いパク氏の勝利は、2012年に予定されている次期大統領選挙に向

けて、政権交代を求める声が高まっていることを象徴する出来事としてとらえら

れている。


 この勢いが韓米FTA反対にもつながっているようだ。このソウル市長選挙の直

後から韓米FTAに関して意見をつぶやく人が増えているように見えるからだ。若

い世代がソウル市長選に興味を持ち、投票行動でその意思を表したことで実際

に社会が動いた。その結果、「自分の手で社会を変えられる」という自信がつ

いた。


 一方、国のより良い未来のために何をするべきか、自分の「社会的役割」につ

いて悩むつぶやきもよくみかけるようになった。


批准の是非をめぐって国会内で乱闘も


 いっぽう国会では、野党の議員らが韓米FTAの再交渉を求めて会議室を占

拠し、韓米FTA 批准に反対している。批准のための本会議が行われる予定

だった11月3日には、国会の周辺を1500人余りの機動隊が囲み、出入証のな

い人は入れないようにした。野党の反対とデモのため本会議は延期された。野

党の民主党は韓米FTA国民投票で決めようと提案している。


 韓米FTA批准を巡る与野党の対立は、韓国のノ・ムヒョン大統領2007年

6月に署名
した日から続いている。外交通商部が2007年9月国会に批准同意案

を提出したが批准されなかった。政権を獲得した李明博大統領が、2008年10月

に改めて批准同意案を国会に提出した。この時、批准に賛成する与党・ハンナ

ラ党議員が会議室の鍵を閉めると、野党議員らが電気のこぎりでドアを切り倒す

という前代未聞の事件が発生した。その後も、批准に賛成するハンナラ党と反

対する野党議員の体当たりの対立が続いたことで批准は同意されないままと

なっている。


米企業の訴訟で、国民健康保険がなくなる?


 韓米FTA批准に反対する人たちが、再交渉を求める理由は大きく2つある。

1つは投資家-国家間訴訟制度ISD:Investor-State Disment)、
もう1つは

韓国の国内法よりも韓米FTAが優先されることである。


 ISDによって最も大きな影響を受けると予想されるのが医療保険である。主

婦の間では、韓米FTAが批准されれば「加入することが義務になっている国民

健康保険がなくなる
」という噂が広がっている。韓米FTAが批准されれば、米

国の投資家が、国民健康保険が適用されない医療サービスを提供する営利病

院を設立できるようになる。さらに、その投資家は、同社が利益を上げることを

妨げる韓国の健康保険制度を廃止するよう訴訟を起こせるからだ。


 健康保険制度がなくなると、医療費がどんどん値上がりし、お金持ちしか病院

に行けなくなるのではないか? 庶民は重病になっても病院に行けなくなる? 

病院は患者の病気を治すところではなく、利益を上げるための場所になる? そ

ういう心配がある。


 主婦コミュニティでの話題はこう続く。「国民健康保険がなくなり、米国のように

民間医療保険だけが残る。患者が負担する医療費が急増して経済的負担が増

すため、よほどの重病でない限り病院に行けなくなるのではないか?」。

(続く)