さていま少し自動車の話を続けたいと思う。
電気自動車の核となるものは、バッテリーである。これは誰にでもわかっていることであ
るが、関連メーカーはこのバッテリーに四苦八苦しているのであろう。なんと言っても今の
技術レベルでは量産して量販できるほどのコストにまでは下がっていない。それにバッテリ
ーに充電する技術もイマイチだし、充電されている電気の量も問題だ。この充電できる電
気の量とコストは比例しているし、大量の電気を充電しようとすれば必然的にバッテリーは
高価になり、重たくもなるし嵩張ってしまう。ガソリンタンクと異なり、蓄えられている電気の
量が少なくなればバッテリーが軽くなることもない。その上取り扱いを間違えると、シボレ
ー「ボルト」のように発火しかねない。だから厄介なのであろう。もっともガソリンの方が燃
えやすいので、衝突事故などで車が燃えることは、頻繁でもないが、起こっている。だから
電気自動車の発火事故についても、それほど目くじらを立てる事ではないかもしれない
が、その発火のカラクリが余りはっきりとしていないことに、拒否反応があるのであろう。何
と言ってもガソリンは目に見えているが、電気は目に見えないから厄介なのである。
そのため何やかやで電気自動車は、近距離用のコミューター的な使われ方から普及する
のではないかと、一般的には思われている。そんな折に、1回充電で350kmも走ること
の出来る車が出来上がったと言う。
これはEliica(エリーカElectric Lithium-Ion Car)を製作した慶應義塾大学の清水浩教授
の主宰するSIM-Driveと言うベンチャー企業(と言ってよいと思うが)が、作った「SIM-WIL」
と言う電気自動車だ。これは初代ではない、実用型車としては2代目の車なのだそうだ。
SIM-Drive、電気自動車の先行開発車第2号「SIM-WIL」を発表、351kmの
航続距離と広い室内が特徴
2012/03/28 16:10
鶴原 吉郎=日経Automotive Technology
図1 SIM-WILを発表するSIM-Driveの福武總一郎会長(左)と清水浩社長
図2 リアビュー
図3 インストルメントパネル
電気自動車(EV)開発会社のSIM-Driveは、2011年1月から取り組んできた先行開発車
事業第2号の「SIM-WIL」が完成したと発表した。この事業は2014年ごろの量産化を想定
した先行開発車の試作を目的としたもので、将来、EVビジネスに参入を検討している34の
企業・団体が参加した。
SIM-WILは、先行開発1号車の「SIM-LEI」よりも電池の搭載量を増やし、一充電あたり
の航続距離351kmを実現したほか、全長4150×全幅1715×全高1550mmのBセグメント
の車体に、Eセグメント車に相当する車内スペースを実現したとしている。また0→100km/
hの加速性能は5.4秒と中級レベルのスポーツカーに匹敵する。
車体構造は、鋼板プレス構造のフロアフレーム内部にバッテリを搭載する「コンポーネ
ントビルトイン式フレーム」をSIM-LEIと同様に採用するのに加え、アッパーボディはハイドロ
フォームにより成形した閉断面材でフレームを構成するスペースフレーム構造を採用した。
モータは、アウターロータ・ダイレクトドライブ方式のインホイールモータであること
はSIM-LEIと同じだが、SIM-LEIで課題になっていたトルクリップル(初動時の回転ムラによ
る振動)を減少させる目的で構造を見直し、大幅に低減したとしている。
車両質量は1580 kg、走行エネルギの消費量 (JC08モード)は99.7Wh/km、最高速度
は180km/h、搭載するバッテリは、パナソニック製の18650型で容量は35.1kWh、充電時
間は「CHAdeMO」規格の急速充電器で3時間、家庭用電源(200V)で12時間。
なおSIM-Driveは、2013年3月末までにスマートグリッドやスマートハウスなどの技術を盛
り込んだ高性能EVの試作を目指す先行開発車事業第3号に、26の企業・団体が参加した
ことを併せて発表した。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20120328/210341/
ついでにもう一つ。ここには協賛企業としてP.S.Aが参画している。
30年間の成果、1回充電で350km走るEV
2012年3月28日(水)19:33
(読売新聞)
電気自動車(EV)の技術開発を産学連携で進める新興企業「シムドライブ」は28日、
1回の充電で351キロ・メートルを走れる第2号試作車「シム・ウィル」を発表した。
各車輪にモーターを内蔵して動力の効率を高めたほか、ドアに繊維強化プラスチックを
使って重量も軽くした。1回の充電で走れる航続距離は、昨年発表した1号試作車より3割
程度伸びた。日産自動車のEV「リーフ」の2倍近くにあたり、ガソリンに換算すると1リット
ル当たり60キロ・メートル以上走る計算という。電池など走るための部品をすべて床下に置
く構造で、高級車並みの室内の広さを実現したという。
開発には、東レや旭化成、仏自動車大手プジョー・シトロエン・グループや独自動車部
品大手ボッシュなど内外の34団体が参加した。
シムドライブは試作車の開発のみを行い、生産や販売は他の企業に委ねる。2014年
頃の量産化を目指す。
清水浩社長(慶大教授)は「過去30年間の開発で最高のEVができた」と強調した。
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/business/20120328-567-OYT1T00785.html
P.S.Aとは(Peugeot Société Anonyme英語で言うとPeugeot Corporation)と言う事の様
で、正式にはP.S.A Peugeot Citroën、略称としてはGroupe P.S.Aと言うようです。
http://nagasaki.peugeot-dealer.jp/cgi-bin/WebObjects/111c62c5682.woa/wa/read/pj_11c360a7f1e/
このP.S.Aは、2012.4.4,NO.94で言及したように、GMと提携している。
従ってGMはP.S.A Peugeot Citroënなどから「SIM-Drive」などの知見も手に入れることが
出来るのではなかろうか。
株式会社SIM-Driveの先行開発車事業の募集案内によれば、この第2号の開発事業に参
画している機関は34と言う。その中に明確に自動車企業としてはP.S.A Peugeot Citroën
1社の名前が載っている。公表されている機関の数は27なので、34-27=7機関名は未公
表である。この中に自動車企業はあるかもしれないが、定かではない。
(続く)