だから究極のエコを考慮すると言うならば、太陽電池を搭載して充電するか、風力を利用
して発電する機能なども搭載することを考えないと、電気自動車のブレイクスルーはなかな
か起きないものと考えておく必要がある、と小生は感ずるのであるが。そのため急速充電
スタンドが、ガソリンスタンドに代わって、あちこちにある状態が想像される。
すると「CHAdeMO」などの急速充電の仕組みは必須となろう。日本も国際標準としてチャ
デモを強引にPRしていく必要があろう。早いとこ全米にチャデモのスタンド網を敷いて、
リーフとかi-MiEVを大量に走らせる必要がある、と言うものである。
電気自動車はその走行中にはCO2は排出しないが、その製造過程や充電過程(電気を作
る過程ex火力発電)では大いにCO2を排出している。そのため電気自動車は完全なクリー
ンカーであるなどと思わない方がよい。しかも石炭火力発電が主要な国にであれば尚更で
ある。そんな意味で、電気自動車のCO2の排出に関して「発電電力」を含めたCO2の排出
量比較を行っているデータがあるので紹介しよう。これはLCA(Life Cycle Assessment、
製造・使用~廃棄・再利用の過程を含めて生涯負荷を評価する)での評価では必ずしも
ない?と思われるが、参考となろう。
電気自動車のCO2排出量比較(欧州試験モード基準)
「ゼロ・エミッションビークル」(http://www.cordia.jp/blog/?p=557)
これを見れば、いたずらに早く中国に電気自動車をもっていっても、環境的には効果が薄
いと言うことであろう。プリウスのようなハイブリッド車のほうが環境的にはベターなのである。
それにしてもリーフは2010年12月に発売されているから、かれこれ1年と数ヶ月(今は'12.
4月)は経過しているから、航続距離に関するそこらへんの具体的な事情は日産も把握し
ていることと思われる。いずれにしても走行条件別の航続距離のことを考えると、電気自
動車の普及はまだまだ相当先のこととなろう。などと思っているとどんでん返しがあるかも
しれないので、自動車メーカー各社は疑心暗鬼なのである。
こんなことからトヨタやホンダはEVには消極的なのであろう(と思われているだけかもしれ
ない)。トヨタは、コミューターとか集配車から電気自動車に入ってゆくことを考えている。
トヨタはプラグインハイブリッドEVビークルを出したから、ある意味、着実に電気の道を
辿っているのではなかろうか。
「間違いだらけの“電気自動車”報道!トヨタとホンダが本格参入しない本当の
理由」('09.4.30)(http://diamond.jp/articles/-/5207)には、そのことが述べられているから
一読願いたいが、本格参入しない訳ではなかったが、今まで参入しなかった理由を(古い
記事ではあるが)概略しておく。その理由は電池業界の品質管理上の考え方の違いと電
池事業会社の将来性が全く読めないところにある、と書かれている。要はリチウムイオン
2次電池の性能と価格の問題なのである。
しかしながらトヨタもホンダもEVでの最大の関心事は、日本でなくアメリカである。アメリカ
にはZEV規制と言うものがあるからである。ZEVとは、Zero Emission Vehicle無排気自動
車つまり無公害車を普及させようとするカリフォルニア州の規制である。ホンダは2008
年から量産型燃料電池車「ホンダFCXクラリティ」をリース販売を開始している。
そして2009年2月には、IMAタイプのハイブリッド車「ホンダ・インサイトZE2型(1.3L)」を
発売している。ZE/3型は1.5L・E/G車で'11.11.11発売。インサイトはカルフォルニア州大
気資源局(CARB, Calpfornia Air Resources Board)の定めるAT-PZEV(Advanced
Technology Partial-Credit Zero Emission Vehicle)に類別される。FCXクラリティはいわ
ばホンダのイメージリーダー的存在と思われていたが、加州では最上位のZEVにランクさ
れる車として中心的な役割を担うべき車なのである。('12.4.1,NO.91参照のこと。)
トヨタにも「FCHV-adv」と言う燃料電池車があるが、トヨタは1990年代から燃料電池車の
開発に取り組んでいるが、これは2008.6.30に国土交通省から型式認証を取得したもので
ある。現在各所で実証実験中であり、1回の水素充填で800km前後の航続距離があると
いう。これもFCXクラリティと同様に、最上位のZEVにランクされる車である。現在は(2011
年モーターショー)「FCV-R」と言う次世代燃料電池自動車へと進化している。
また'12.4.2,NO.92でも紹介しているように今年'12年1月30日にプリウスプラグインハイ
ブリッド車を発売している。プリウスPHEVは、EV走行が26.4kmとかなり短いのでCARB
のEnhanced AT-PZEVに属さないかもしれないが、一応単なるHVよりZEVとしては高い
ランクに位置している筈である。
それに「iQ EV」と言う電気自動車を今年の秋に発売すると言う。'12.3.29,NO.88で紹介し
ているのでご承知のことと思う。
トヨタのこれらの動きもカリフォルニア州のZEV規制が多分に影響しているものと思われ
る。ついては加州のZEV規制に触れてみたいと思う。これなくして電気自動車などは語れ
ないのである。
そうすればトヨタが降って沸いたように一介のベンチャー企業の「テスラ」と提携した意味も
なんとなくわかると言うものである。
カリフォルニア州のZEV(Zero Emission Vehicle)規制についてはこんなものであろ
う。ただし我流の解釈なので、間違っているかもしれないので、その点は責任は負いかねる。
(1) 加州で6万台以上の車を販売するメーカーは一定量以上のZEVを販売しなければなら
ない。
このメーカーは、トヨタ・日産・ホンダ、GM・Ford・Chryslerの6社である。マツダやVWが
入って7社とする記事もあるが、合計で次のZEV車を販売しなければならない。
各社は当然シェア相当の割合のZEVの販売が必須となる。
(現時点では台数条件などは変わっているかもしれない。)
2009~2011年 11%のZEVを販売すること。
2012~2014年 12% 〃
2015~2017年 14% 〃
2018~ 16% 〃
(2) ZEV車は、次のようなランクに分類される。
ZEV車 FCV(Fuel Cell Vehicle) , BEV(Battery Electric Vehicle)
Enhanced AT-PZEV Plug in HEV , 水素エンジン車
AT-PZEV ※ Hybrid車 , CNG(Compressed natural gas天然ガス)車,
メタノール型燃料電池車
PZEV (極限まで)排気がクリーン普通車
※Advanced Technology Partial Zero Emission (Allowance) Vehicleとも。
(3) 2012~2014年 12% の車種構成
12%が総てZEVで満たすことは出来ないと想定されるので、それ以外のLEVで代替し
てもよい。その比率は次の通りである。
ZEV 0.79%
Enhanced ATPZEV 2.21%
ATPZEV 3.0%
PZEV 6.0%
合計 12.0%
例えば、加州の年間の市場規模が100万台で、10%のシェアを持つ会社があるとする。
その100万台の10%の10万台の12%の12,000台は最低でも上記の比率での車種を販売
しなければならないことになる。即ち、12,000台×0.79/12%=790台は電気自動車(燃料
電池車はまだ実用化されていないと想定すると)でなければならないことになる。
そして12,000台×2.21/12%=2,210台のPlug in HEVを販売する必要がある。又はこ
の3,000台総てを電気自動車で売ることも出来る。ただし売れればの話だが。だから燃料
電池車の実用化はまだ相当先の話となるため、自動車各社はどうしても顧客に買ってもら
える価格で電気自動車を売らなければならなくなるのである。
現実的な話として、
もちろんZEVからATPZEVまでの6%(6,000台)を総て電気自動車でも構わない。だから
日産は確かリーフを5万台販売するとしていたから、電気自動車だけで6,000台をカルフォ
ルニア州にもって行けば事足りる。まあ日産は加州のZEV規制については、左団扇である。
トヨタはそのために、何とか電気自動車を物にしようともがいている?様である。その表
れがテスラとの提携話だと見ることも出来る。しかし2012年後半に「iQ EV」と言う電気自
動車を発売すると言う。'12.3.29,NO.88で紹介しているがこのZEV規制のため、航続距
離80kmの「iQ EV」をサイオン系列で販売する計画なのである。そしてAT-PZEVに分類さ
れるPlug in HEVを'12年1月30日にプリウスプラグインハイブリッド車として発売したの
である。このためトヨタは何とかこの加州の「ZEV規制」には対応出来そうなのである。
問題はホンダである。「FCXクラリティ」と言う燃料電池車で対応する気だったようだが、
間に合わない。そのため慌てて?フィットEV(タイプ1.5)を発表している。'12.4.1,NO.91参
照のこと。しかしEVはZEVにランクされるが次のタイプの Enhanced ATPZEVにランクさ
れるPHEV(プラグイン)がない。そのためこの分野もフィットEVでカバーすることになる。
それだけ売れるのかが問題である。3%分がどれ程の台数になるかは小生とってはつまび
らかではないが、果たして造れて売れるであろうか。それが問題である。
(続く)