それに、これには罰則があり不足ZEV1台につき5,000ドルのペナルティとなる。そして単
に電気自動車と言っても、その航続可能距離により持ち点が異なっている。
電気としての航続距離が50マイル未満を1台とカウントする事になっており、それ以上の航
続距離を持つ電気自動車は持ち点が増加している。これをクレジットと称している。
(4) 電気自動車の航続可能距離別クレジット点数について
(「加州のゼロエミッション車」http://www.yasuienv.net/ZEV-CA.htm '09.830による。)
(タイプ) (航続距離など) (クレジット点数)
Type 0 ~50マイル走行EV 1
Type 1 50~ 70マイル走行EV 2
Type 1.5 75~100 〃 2.5 三菱・iMiEV、iQ EV、フッィトEV
Type 2 100~200 〃 3 日産・リーフなど
Type 3 200 or 100 〃で急速充電や水素補給可 4
Type 4 200 〃 5 テスラ・ロードスター
Type 5 300 〃 7 燃料電池車
(5) ハイブリッド車の分類
Type C モーター10kw以上、駆動電圧60V以下 0.2
Type D モーター10kw以上、駆動電圧60V以上 0.4 ホンダ・インサイトなど
Type E モーター50kw以上、駆動電圧60v以上 0.5 トヨタ・プリウスなど
トヨタのPHEV・プリウスはEnhanced AT-PZEVとして電気走行距離が10~20マイルの
ため、0.9クレジットとなるようだ。シボレー「ボルト」は40マイルなのだが、1.35クレジットと
言う。
(6) クレジットの計算方法
先に2012~2014年 12%のZEVを所定の構成で販売しなければならないことを述べ
た。この時は簡単に台数として説明したが、実際はクレジット換算で計算される。性能の
よい電気自動車はより多いクレジットを持たなければ不公平となるからである。
即ち10万台販売するメーカーはその12%の12,000(台)クレジットポイントのZEV車を
販売しなければならないのである。
この12,000クレジットポイントを先に説明した夫々の車種のクレジットで消化しなければ
ならない事になる。
12,000×0.79%/12%= 790クレジットは、電気自動車で、Type1.5(2.5crdt)なら790÷2.5=316台
12,000×2.21%/12%=2,210クレジットは、PHEVで1.35crとすると、2,210÷1.35=1,637台
12,000×3.0 %12%=3,000クレジットは、通常のHEVで販売しなければならない。HVで0.5crとすると3000÷0.5=6,000台となる。
12,000×6.0%/12%=6,000クレジットは、普通の低燃費車でよいことになる。仮に0.2cr/台と仮定すると3000÷0.2=15,000台の低燃費車となる。
一般的に残りの88%も低燃費車となる筈なので、
10万台-(316+1,637+6,000+15,000=22,953台)=77.047台の普通燃費車となる。トヨタ
であればこれらも総てHEVで済ます事も出来る。
と言うことで、少なくとも(このケースでは)316台の電気自動車を売らなければならない。
これがなければこの会社は加州で10万台の車を売れなくなるので、電気自動車の導入
は死活問題となる。
だからトヨタも、ホンダも電気自動車を慌てて出してきたのである。慌ててと言っても本当
に慌てて出せるものでもないので、ずっと前から開発はやっていたものと思われる。各社
が言う2012年導入と言うことには、このような意味があったのである。
(以上は我流による試算なので間違いがあるかもしれないが、その点は悪しからず。)
このZEV規制の2009~2011年は11%である。そして2012年にもあるようにPureZEVを一
定数販売することも義務付けられている。トヨタもホンダも90年代からEVのリース販売を
行っていたが、トヨタはリース終了後それらのEVを売り渡したようだ。然るにホンダはリー
ス終了後それらのEV車を総て引上げてしまったようだ。そのためこのZEV規制になんの
効力も持たなくなってしまった。トヨタはテスラと提携して、RAV4EVを再度発売している
ので、ZEV規制はクリア出来ているようだ。
しかし、ホンダは引上げたEVをスクラップにしてしまったので、ホンダは1台もPZEV車を
加州では売っていないことになってしまった。ペナルティを払うか、さもなくば他社から余っ
ているクレジットを購入する必要に迫られることになる。そこでホンダはテスラから「ZEV
クレジット」を購入したのである。しかも悪いことに、テスラにトヨタが出資してしまったので
ある。ホンダともあろう会社がなぜ「そんなことをしたのか」などとの批判的な意見もあるよ
うだが、これは致し方ないことであった。
'70年代にいち早くCVCCを物にしたホンダではあるが、一瞬の経営判断の誤り?が会社
の行く末に大きな影響を与えるものである。トヨタも一時期リコール問題の対応を間違え
て、偉い目にあっている。だからトヨタも慎重にならざるを得ない。
トヨタがテスラと提携したのは2010.5.21(2010.5.31,NO.42を参照のこと)で、ホンダがテス
ラから「ZEVクレジット」を購入したのが判明したのが、2010.6.2のテスラの新規株式公開
の登録届出書であった。ホンダとしても購入交渉の時点ではテスラがトヨタと提携するなん
ぞと言う情報は、入っていなかったことであろう。ちなみに三菱自動車や日産にもクレジット
の余剰分の購入オファーがきていると言う。これからはますます環境対策・電気自動車
への注目が高まると言うものである。
米電気自動車テスラ:ホンダへの環境ポイント売却で本業の損失穴埋め
2010/06/04 07:51 JST Bloomberg.co.jp
6月3日(ブルームバーグ):トヨタ自動車と独ダイムラーが出資する米国の新興電気自
動車メーカー、テスラ・モーターズは、映画俳優のブラッド・ピットやジョージ・クルーニーが
運転するスポーツカー「ロードスター」の事業で赤字が続いている。損失の一部を穴埋めし
ているのは、排ガスを出さないゼロエミッション車(ZEV)の販売実績に応じてカリフォルニ
ア州が付与する環境ポイントをホンダに売却するという地味な事業だ。
同社が2日、米証券取引委員会(SEC)に提出した新規株式公開(IPO)の登録届出書に
よると、テスラは2008年以降、カリフォルニア州の厳格な排ガス規制を満たすために大手
自動車メーカーが必要とする「ZEVクレジット」を売却し、計1380万ドル(約12億8000万
円)の利益を上げた。唯一の売却先として社名が挙げられたホンダは、ZEV368台分に
相当するクレジットを購入したほか、287台分を追加購入する契約を結んだ。
テスラは08年以降、映画スターやミュージシャン、電気自動車推進者に計約1000台のロー
ドスターを1台10万9000ドル(約1000万円)で販売した。エロン・マスク最高経営責任者
(CEO)は12年にトヨタの旧合弁工場で1台5万7000ドルのセダン「モデルS」を生産する
計画だ。
テスラは計画中のIPOで少なくとも1億ドルを調達する可能性がある。SECへの届出書
では、03年の創業以降、毎年赤字を計上していたことを明らかにした。
ホンダの環境・エネルギー戦略担当米上級マネジャー、ロバート・ビーネンフェルド氏は「ZE
Vクレジットを持つことで、当社の将来の柔軟性が高まる」と説明。「追加購入するかどう
かは、話せない」と語った。ホンダは米消費者向けに販売する自動車メーカーで燃費効率
最上位にランクされている。
テスラの複数の幹部は、ホンダがクレジットを購入したかどうかについてのコメントを控え
た。テスラの届け出によると、ホンダ以外の少なくとも1社にクレジットを売却したが、社名
は明らかにされていない。
-- Editors: Steve Geimann, Romaine Bostick
記事に関する記者への問い合わせ先:Alan Ohnsman in Los Angeles at aohnsman@bloomberg.net
記事に関するエディターへの問い合わせ先:Kae Inoue at kinoue@bloomberg.net;Larry Liebert at lliebert@bloomberg.net
更新日時: 2010/06/04 07:51 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-L3GL9A0YHQ0X01.html
なおテスラとトヨタとの関係は、このブログの2010.5.28,NO.41から2010.6.10,NO.50に詳し
く書かれているので参照願えれば幸いである。
(続く)