番外編・プリウス急加速問題( 105)

さて次にそのような内容の論考を載せるのでご一読願う。

DIAMOND online エコカー大戦争
“電気バス”は日本の公共交通を担えるか?
ついに路上を走り始めた慶大発ベンチャーのEVバス
 
【第98回】 2012年1月11日

藤沢と羽田で「EVバス」の
実証試験がスタート

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電動低床フルフラットバス。全長、全幅は一般的なバスの大型車サイズで、全高は300~400mm低い。車内の床面は地上から270mmだ。定員は49人(運転席含めて座席定員21名、立席28名)。
Photo by Kenji Momota

 電動低床フルフラットバスに、慶應義塾大学藤沢キャンパス(神奈川県藤沢市)周辺で

乗った。ナンバープレートは、「川崎230 す ・・11」。パッと見た目は、ホワイトボディがオ

シャレ。それに、8輪車なのが珍しい。車内に入ると、床が低くてフラットなことが分かる。

 走行前、同バスを運転する神奈川中央交通の方に「(運転していて)普段乗っているバ

スと、どこか違うか?」と聞いてみた。すると「ハンドルのキレが悪い」という。走行開始直

後、乗員数人からは「なんだ、この音?」という声。走行中の乗り心地など、筆者としては

「一般運用として十分満足なレベル」という感想だ。また車内フロアの最高部に少し段差が

あったが、関係者は「家庭用エアコンを搭載したため」と説明した。

 同バスは、慶應義塾大学環境情報学部・清水浩教授が2009年8月に立ち上げたEVベ

ンチャー企業、「SIM-Drive」の「電動低床フルフラットバス」の実験車両だ。その製造につ

いては、いすゞ自動車東芝ブリヂストン等、多方面の企業34社が協力。そして、「平成

23年度環境省チャレンジ25地域づくり事業」の一環として、神奈川中央交通京浜急行

バス、JFEエンジニアリング、三菱総合研究所が一般のバス運行路での実証試験を通じ

て、改良点・課題の把握、事業性・採算性・波及性等を検証する。

 実証試験で走行する場所と期間は、次の通りだ。尚、これら試乗には一般モニターの参

加も可能だ。

①郊外型路線

湘南台駅←→慶應義塾大宅湘南藤沢キャンパス(運行:神奈川中央交通
1往復8kmを、1日3往復。

2011年12月18日、20日、22日、26日。2012年1月24日、26日、28日、合計7日間。  

②都市型路線

蒲田駅東口←→羽田空港国際線ターミナル(運行:京浜急行バス
1往復12kmを、1日2往復。

2012年1月10日、12日、14日、16日、18日、20日、22日、合計7日間。

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SIM-Drive「電動低床フルフラットバス」、神奈川県藤沢市内を走行中。
Photo by Kenji Momota

 そうしたなか、今回の試乗は上記日程とは別枠で、公益社団法人自動車技術会・関東支

部が主催の「電気自動車講演と8輪電気バス試乗会」(参加者60名)として、2011年12月

20日に実施され、筆者も参加した。

 同日配布された資料によると、同バスの仕様は次の通りだ。全長×全幅×全高

=10005mm×2940mm×2730mm。全長、全幅は一般的なバスの大型車サイズ。全高

は、一般的なバスより300~400mm低い。車内の床面は地上から270mmだ。定員は49

人(運転席含めて座席定員21名、立席28名)。重量は空車時が8600kg、定員49人乗車

時の総重量で11800kgとした。

 二次電池は、東芝製リチウムイオン二次電池のSCiBで車体下に配置する。電池容量は

未公開。満充電での航続距離は121km。なお、現在の標準的な路線バスの1日の運行距

離は120km以内だ。また同バスでの最大の特徴は、インホイールモータの採用だ。低床

とフルフラットなフロア
を実現するために、タイヤ・ホイールの8輪それぞれの内側にモー

タを配置した。


大手バスメーカーは、
どうしてEVバスに“コンサバ”なのか?


 日本でEVバスは近年、早稲田大学による非接触給電対応の小型バスなどがある。

だが、大型EVバスは今回の電動低床フルフラットバスが久々の登場だ。

 ではどうして、日本でEVバスが普及しなかったのか。そのカギを握るのが、1973年に名

古屋市交通局でモニター運用した日野自動車製のEVバスだ。筆者は以前、著書「エコカ

世界大戦争の勝者は誰だ」の取材で同社関係者から当時の模様を聞いた。それによ

ると、満充電での航続距離は40~50km。それに対して当時、路線バスの1日あたりの

運行距離は100km
ほど。そのため、鉛バッテリーの交換設備を作った。

 だが実際に運用してみると、様々な課題が噴出する。運転手が電欠を気にして運転に集

中できない、バッテリー交換の手間が予想以上に大きい、さらにバス車内にバッテリー内

の硫酸の匂いが漏れてしまう、などなど。結局、EVバスは実運用されずにお蔵入り。こうし

たEVバスの苦い経験が現在、横浜市営バスなどで運用されているハイブリッドバスの基

本技術を生むことになった。ハイブリッドバスが進化し、さらにはディーゼルエンジンの高

出力・低燃費・低公害化が進むなか、EVバスの出番がなくなってしまったのだ。

 さらに近年、日米欧の都市内交通として新世代路面電車LRT(ライト・レール・トラン

ジット)
が台頭したことも、EVバスの普及を阻害した。本連載でも富山市の事例を紹介し

たが、結局、LRTとEVバスが「環境向けキャラ」としてカブってしまうのだ。


世界最大のEVバス市場
中国が大型EV開発に与える影響

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三菱ふそう「キャンター E-CELL」。第42回東京モーターショーにて。
Photo by Kenji Momota

  また、バス、トラック業界の大手、三菱ふそうでは、先日の第42回東京モーターショー

で、「キャンター E-CELL」を初公開した。全長×全幅×全高

=5490mm×2100mm×3000mm、重量が3500kg。定格出力は70kw、リチウムイオン二

次電池の電池容量は40kwhとした。同電池は米国ブランドで、電池セルの製造は中国だ。

同社の開発部門幹部に直接、話を聞いたが「あくまでも参考出展。量産化の可能性は極

めて低い。航続距離の問題と製造コスト面で、このクラスのトラックのEV化は相当難し

」という。

 筆者はEVの中型トラック製造企業「Smith Electric」(カンザスカンザスシティ)や、英国

のEVパネルトラックなど、商用の中大型EVについて様々な取材をしてきた。こうした各社

のビジネスは、政府の補助金による後押しの下、技術面で見ると、かなり「思い切った発

想」をしている。こうした実情を見て、大手メーカー側は「ウチではちょっと…」と言う場合が

多い。逆に言えば、ベンチャーにビジネスチャンスがある。とはいえ、欧米での中大型EVト

ラック事業は、普及の創世記にやっと足を踏み入れたに過ぎない。

 そして、世界最大のEVバス市場が中国だ。本連載でも度々紹介したように、国家経済

戦略の第12次5ヵ年計画のなか、「十城千輌」がある。これは、北京、上海、広州など中国

各地の25の中・大都市での次世代車普及計画だ。

 その柱がEVバスだ。中央政府地方自治体からの補助金に群がるように、中国地場

の様々な電池メーカー、商用車メーカーがEVバス市場に参入した。そうしたなか、日米欧

韓などの自動車メーカー、自動車部品メーカー関係者数人から筆者は「様々な事例が発生

しているようだが、詳しい内容が伝わってこない」という声を聞いている。

 Evバス参入企業間での技術競争が激化し、当然、技術的にネガティブな事象も起こる。

例えば、発火だ。だが良くも悪くも、中国での実証試験は様々な状況で、外部に情報を漏ら

さず、徹底して行われるため、結果的には「最良の実証試験」になってしまう。さらに中国

のEVバスは、日本メーカーでは想定出来ないような安価な原価が設定されているという。

そうした様々な現実を前に、日本のバス、トラックの大手メーカー関係者たちは「大型の

EVで、中国には敵わない
」と、表現する。

(続く)