世の中、何だこれ!(WBC不参加、34)

最大の問題は利益配分
実はつつましい!?日本の要求


 騒動の口火を切ったのは
(2011年)7月14日に行われた12球団オーナー会議だ。過去2

大会の日本への利益配分が少なすぎることが議題に上げられ、大会を主催・運営する米

国の会社「WBCインク(WBCI)」に対して、収益改善を要求する交渉を行うことを明らか

にした。


 これに日本プロ野球選手会も呼応する。オールスター期間中の
(2011年)7月22日に開

かれた臨時大会で、この議題が取り上げられ条件交渉の結果次第では参加をボイコット

することを全会一致で決議したのだ
。('12.1.23のブログ「世の中、何だこれ!」NO.17参照

のこと。)



 この1ヵ月ほど後の8月18日には日本野球機構(NPB)も選手会と共同歩調を取ることを

表明。WBCIに対し、一枚岩になって利益配分改善の交渉を行っていくことを確認した。

だが、WBCIは聞く耳を持たず、「日本が出なくても大会は行う」としている。


 こう書くと、日本球界は世界一の名誉のためではなく、金のためにWBCに参加するのか

と思われるかもしれないが、経緯を冷静に見ていくと文句を言いたくなる気持ちも分かる。


 WBCIはメジャーリーグ機構とメジャーリーグ選手会が共同で設立した会社だ。大会の収

益はこの会社が管理し、自社や参加チームに分配する方式を取っている。第2回大会を例

にとると収益は約15億円。このうちの66%にあたる約10億円をWBCIメジャーリーグ

構とメジャー選手会)が取り、残りの34%が参加チームに分配された。日本の取り分は優

勝賞金を含めて13%。約2億円だったという。


 代表チームを結成し大会に派遣するとなると、事前の強化合宿費や選手の出場給、傷

害保険代などで大きな費用がかかる。日本は優勝賞金を得たからよかったものの、早々

に敗退した場合は赤字になったといわれる。ともあれ運営サイドが収益の7割近くを持っ

て行ってしまうのはあまりに不平等。出場国は赤字覚悟で参加しなければならず、現状の

ままではWBCは盛り上がっていかない。これはおかしいというわけだ。


 もっともWBCI側にも言い分はある。主催・運営にはそれなりに経費がかかる。それに海

のものとも山のものとも分からない野球世界一決定戦WBCをゼロから立ち上げ、失敗し

た場合は赤字をかぶるつもりでいた。そのリスクを考えたら、このぐらい取ってもいいという

理屈だ。


 ただし日本野球界が求めているのは分配率の変更ではない。第2回大会での収益の

うち、約9億円は日本企業が出したものだった。そのスポンサー料の目的は「日本代表

を応援する」ため。だが、代表チームのスポンサー料や代表グッズのライセンス料も現状

ではWBCIが独占するシステムになっている。自分たちが獲得したスポンサーなのだか

ら、せめてその分を得る権利は譲渡して欲しいと要求しているのである。


 他の分野の国際関係でも、日本はお金を出しているのに、それに見合う評価や利益を得

られていない、うまく利用されているだけだという指摘がよく出る。それと同じ構図がWBC

にもあり、そこを正さないと納得して参加できないというわけである。


野球のワールドカップと
WBCの微妙な位置関係


 こうした問題が起きるのは、野球の最強国決定戦WBCの運営をアメリカのメジャーリー

グというスポーツ興行団体が作った会社に任せざるを得ない構造にある。


 サッカーの最強国決定戦であるワールドカップを主催するのが国際サッカー連盟

(FIFA)
であるように、ほとんどの競技の国際大会は世界の競技を統括する国際競技団

体(IF
International Federationsが取り仕切っている。野球にも国際野球連盟IBAF

いう統括団体はあり、1938年からワールドカップを開催してきた。


 本来なら2年おきに行われるこのIBAFワールドカップが世界の注目を集めるようになら

なければならなかったのだが、いかんせん野球が盛んな国や地域は限られている。北米、

中米、アジアの日本、韓国、台湾など人気を得ているのは世界のほんの一部。日本人が

英国系の国で盛んなクリケットを知らないように、野球を見たこともない国が多数を占める。


 そんなこともあってサッカーやバスケットボール、陸上競技のようにインターナショナル

な競技
に成りえず現在まで来た。だから野球のワールドカップはサッカーのように世界の

注目を集められず、地味な大会のままだ。


 そこでメジャーリーグがIBAFに頼らないもうひとつの国際大会WBCを作った。もっとも

目的は野球の普及・振興というよりメジャーリーグの市場を拡大するため。ビジネスとし

て野球
を広めようとしたわけだ。営利が目的一企業が運営するのだから、こうした問

題は起こるべくして起こったともいえる(もっともトップ選手の年俸が10億を超えるメジャー

リーグの感覚では、一大会の収益15億円などささいな額だろうが)。


アメリカでは
注目されていないWBC


 滑稽なのは、その勧進元本国アメリカではWBCはほとんど注目されていないこと

だ。第2回大会の全米での平均視聴率は2%。日本vs韓国の決勝戦は1.4%。メジャーリー

グのチャンピオン決定戦を「ワールドシリーズ」と呼ぶように、米国人たちは野球が世界一

強い国はアメリカだと信じて疑わない。米国の野球ファンの多くはWBCをシーズン開幕前

オープン戦のひとつ
だと思っているともいう。選手も同様でリーグ戦が第一。故障でもし

たら大変と、WBCの代表に選ばれても辞退する選手が続出する。


 WBCでのアメリカの成績は第1回大会は第2ラウンド敗退(ベスト8)、第2回大会は3位

だが、それは「本気を出していない」から。本気を出してベストメンバーで大会に臨めば世

界一になるのは決まっている。だが、メジャーリーグのシーズンの方が大事だからそれ

はできない、という認識なのだ。


 WBCは肝心の本国の野球ファンの支持を得られていないのである。大会を重ねるうちに

こうした空気は参加国にも伝わっていく。本気で臨むべき大会なのか、懐疑的になる国も

出てくるだろう。


 ここで困るのは本気度100%の国だ。日本や韓国、数少ない自国アピールの機会である

キューバなどだ。なかでも大きなジレンマを抱えているのが日本だろう。現状の運営方式

では、うまく利用されているようで納得がいかない。といってWBCが開催されなくなった

り、日本が参加しないことになると一番困るのも自分たちなのだ。


プロ野球人気回復のために
国際大会をどうしていくか


 ひと昔前のプロ野球は日本人の大半が注目していたが、今は一部のコアなファンが支持

するスポーツになりつつある。その流れで地上波のプロ野球中継は激減し、一般人とプロ

野球(ひいては他のカテゴリーの野球も)の距離は遠ざかる一方だ。


 一般人の人気を得るのに不可欠なのは国際大会での活躍である。なでしこジャパン

ワールドカップに優勝したことで女子サッカーが一躍注目されたように。


 プロ野球にとって一般人からの注目をつなぎとめる場が、世界に挑戦するWBC。「現状

では参加できない」と強硬姿勢は取っているものの、参加しないわけにはいかないという

矛盾を抱えているのだ。日本野球界は交渉を重ねるとしているが、WBCIが出場の意向

を決定する期限としているのは9月30日。結局は問題は先送りされ出場することになる

のではないだろうか。


 もちろん利益配分をめぐる条件闘争をするのは無駄ではないし、今後も続けるべきだろ

う。スポーツは名誉だけで成り立つものではない。現状の不平等な収益配分システムを改

善しなければ、大会の価値も損なわれてしまう。


 だが、日本球界としては同時に考えていくべきことがある。どうしたら野球を世界に普及

させ、インターナショナルなスポーツに育てられるかということだ。WBC参加国とも話し合

いの場を設け、その方法を模索する。そしていずれはWBCIという会社ではなくIBAFが

主催する大会
に持っていく。野球の世界王者として、そのイニシアチブを取るぐらいのこ

とをしてもいいのではないだろうか。

http://diamond.jp/articles/-/13661

 
 
明日の8月1日にはNPB選手会の話し合いが行われるのであるが、(読売新聞が牛耳

っているので
選手会もそこそこの線で折り合いをつけることになっている、と言う話もある

ようだ。そしてWBCへの参加を、そのうちに認めることになるようだ、と言った筋書きと言

う。大山鳴動、鼠一匹。

20120731_gym_k51
http://photo.sankei.jp.msn.com/essay/data/2012/07/0731gymnastics/

それにしても体操男子の立花監督の抗議は素敵でした。(日本にとって)理にかなったこと

であれば毅然と抗議して修正させる。これこそが今の日本に欠けている事ではないかな。


柔道のジュリー制度も理にかなっている。さすが五輪も成長している、と感じられる。しかし

内股返しを知らない審判がいるようでは、世界の柔道は未だ未だ未熟。


日本選手団の活躍を祈る。!

(終り)