尖閣諸島問題その2(18)

領有権めぐり南シナ海に再び波風
2011年9月5日16時59分

南シナ海の中国や沿岸諸国との領有権問題は、日本も参加した7月の東南アジア諸国

連合ASEAN)地域フォーラム
などで沈静化したが、再び波風が立っている。東シナ海

でも
(2011年)8月末尖閣諸島付近中国船による領海侵犯が起きるなど緊張が高

まる。東アジア・西太平洋の海洋安全保障は、日本にとっても対中国戦略が絡む、重要

で難しい外交課題となっている。


■フィリピンの施設建設に人民日報「領土侵略だ」


 「この(中国の領有権)問題で誤った戦略的判断をする国は、必ず高い代償を払うことに

なる」

 8月2日付の中国の人民日報に、激しい調子の論評が載った。

 矛先はフィリピン。中国も領有権を主張する南沙諸島に新たな軍事施設を建築しつつあ

ることを取り上げ、「中国領土の侵略だ」と非難した。さらに、フィリピンが7月22日にイン

ドネシアで開かれたASEAN外相会議で「南シナ海を平和、自由、友好、協力の地域へ」と

提起したことも「欺瞞(ぎまん)だ」と切り捨てた。


 中国が強硬姿勢に転じたと受けとめられ、関係各国に波紋が広がった。

 他方、中国が5月に完成させた深海用の新型掘削プラットホーム「海洋石油981」が、

南シナ海に移動しつつあることには、ベトナムが神経をとがらせる。同国では反中デモ

続いている。


 ASEAN諸国と中国との間では、2002年南シナ海問題の「平和的解決」を確認した

行動宣言」が合意されている。今年7月のASEANと中国との外相会談では、宣言の実

施に向けた「ガイドライン」が新たに合意され「重要な第一歩」(米国政府)と受けとめられた。

 しかし早くも雲行きが怪しくなったことで、米国とASEAN議長国のインドネシアが求め

た「早急な次の動き」の見通しは立たなくなった。

南シナ海をめぐる動き・図A参照のこと。

■日米も含め対中包囲網

 当面の焦点は、中国が南シナ海管轄権の根拠として主張する「9点破線」(中国語で

は「九段線」)あるいは「牛の舌」といわれる境界線だ。領有権が争われる南沙、西沙両諸

島がすっぽりその中に入る。


 フィリピンやベトナムはこの境界線を「国連海洋法条約と整合しない」などとして認め

ない。

 もともとは国民政府当時の1947年に作られた。2009年に中国が地図とともに国連

に提出した文書
は「中国は、南シナ海の諸島とその周辺海域に対する争う余地のない領

有権を持つ」と説明している。しかし名称の由来である九つの点線内の海域すべてを領海

と主張しているのか、あるいは島しょ部だけについて領土だと言っているのか、中身はあ

いまいだ
。中国の研究者の間でも解釈が割れる。


 
(2011年)7月ASEAN関連の一連の会議を通じ、フィリピン、ベトナムなど係争当事

国に、米国、日本など南シナ海の「利用国」も加わって、中国をこの点でただす事実上の

外交的包囲網」ができた形になった。


■日本、尖閣への波及懸念


 南シナ海問題をめぐる日本政府の公式見解は、「アジア太平洋地域の平和と安定に影

響を及ぼし得る。海上輸送路の安全確保にもかかわることから重大な関心を持ってい

る」(松本剛明外相の国会答弁)というものだ。


 日本にとっての具体的な懸念は、(1)南シナ海で「変なルール」(政府関係者)ができて東

シナ海に波及する(2)紛争に巻き込まれる(3)沿岸各国が「中国の軍門に下る」――など

だという。


 その根底にあるのは、東アジア・西太平洋で影響力を拡大しつつある中国とどう向き合

うかと
いう「対中戦略」だ。


 8月24日、米国防総省が発表した中国の軍事力に関する年次報告書では、中国が

黄海東シナ海南シナ海を含めたいわゆる「近海」全体を、外敵から本土を守る「戦略

的緩衝地域
」と位置づけ、石油、天然ガスなどの埋蔵資源に注目もしていることを指摘

した。


 同じ
(2011.8.)24日には、尖閣諸島付近で中国農業省の漁業管理組織「漁政」監視

船2隻
が日本の領海を侵す事件が起きた。この海域での中国公船による領海侵犯

2008年に国土資源省に所属する「海監」の2隻が起こして以来のことだ。東シナ海も南

シナ海と同様、中国の活動強化が進んでいることが明らかになった。


 こうした中国「近海」での一連の動きには、西の隣国インドも「自国の国境地帯で起きるこ

との兆候」として注目する。「中国は今、大国としての地位を模索しており、陸上と海洋

国境線再定義しようとしている」(ジャミアミリア大のドゥッタ教授の論文)という見方が出

ている。

 当面は、次の節目である11月の東アジアサミットに向けて「9点破線」に関する国際会

議が関係各国で相次ぐ。南シナ海、さらにはアジア太平洋全体の秩序づくりをめぐり、緊迫

した外交戦
が展開されている。(編集委員・加藤洋一)

http://www.asahi.com/international/update/0905/TKY201109050273.html

 
  
 

だからこのような方法で、中国は尖閣諸島へも侵略を企ててくるものと思われる。日本は

しっかりとふんどしを締めて、かからなければそれこそ簡単に尖閣諸島は取られてしまう。

いくら頓馬とはいえ民主党の日本政府はこのような事例があるわけであるから、十分に準備

をしておかなければならないのである
(2011.8.)24日の中国監視船の領海侵犯事件

ついては、次の記事を参照願う。

  
 
  
【領海侵犯】尖閣周辺に中国漁業監視船 警告に「中国固有の領土」と応答

産経新聞(2011.8.24 11:37)

24日午前6時15分ごろ、沖縄・尖閣諸島久場島の北北東約30キロの日本の接続水域

(領海の外側約22キロ)内で中国の漁業監視船「漁政31001」「漁政201」が航行して

いるのを第11管区海上保安本部(那覇市)の巡視船が確認。2隻は一時、日本の領海内

に侵入
し、午前10時15分現在、接続水域内を南向きに航行しており、領海内に侵入しな

いよう無線などで警告している。


海上保安庁によると、昨年9月の中国漁船衝突事件発生以降、中国の漁業監視船が尖

閣諸島の接続水域内で確認されたのは12回目で領海内に侵入するのは初めて

海保によると、両船は巡視船の警告に対し、「魚釣島その他周辺諸島は中国の固有の

領土
である」「法に則り中国管轄海域において正当な公務を行っている」などと応答。船上

に応答と同じ内容の中国語を表示した電光表示盤を掲示しているという。

これに対して巡視船は「尖閣諸島日本の領土であり、漁政の主張は受け入れられな

い。ただちに日本の領海外へ退去せよ」などと警告している。

中国公船が領海内に入ったケースは、
平成20年(2008年)12月海洋調査船海監」が

9時間にわたり領海内に留まって以来という。
(この件は当ブログ2009.3.18~,尖閣諸島問題(2)~

を参照のこと。)

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110824/crm11082411380009-n1.htm
(続く)