さてもう一度中国の「米国打倒・日本殲滅」と言う考え方の依って立つ所の原則をおさらい
してみよう。これは2012.10.4のNO.58でも述べたものであるが、中国共産党政府の基本
的な思想を次に述べる。
先ずは1980年代の初めに、鄧小平が対米国防衛ラインとして「第一列島線」「第二列
島線」の概念を提唱した。
第一列島線とは、九州・沖縄南西諸島・台湾・フィリピン・ボルネオ島に至るラインであり、
この内側をあたかも自国の領土・領海と看做したものである。
中国はこの海域を(Wikipediaによれば)「海洋領土」と呼んでおり、台湾有事の際にはこ
の海域に米海軍の空母や原潜の侵入を阻止しなければならない国防上の作戦地域とし
ている。そのためこの海域の「制空権」「制海権」の確保が至上命題であり、そのため
1980年代から海洋調査船を派遣して綿密な海洋調査を行っている。
そしてこの考えに則り、中国海軍や空軍の戦力整備を行ってきた。しかし現在はそれも完
了したために、第二列島線の国防方針に移っている。艦艇建造は2010年までに完成計画
であったが2015年頃までとなりそうである、とは言われている。
ついでに言っておくが、このような戦力整備や国防方針であるから、野田内閣の尖閣諸島
の国有化などが無くても、早々に尖閣諸島の乗っ取りに乗り出してきたであろう。たまたま
民主党政権の無策の国有化があったため、これ幸いと尖閣諸島を取りに来ているだけで
ある。
第二列島線とは、伊豆諸島、小笠原諸島、マリアナ諸島(サイパン、グアムなど)、カロリ
ン諸島、パプアニューギニアに至るラインである。中国は現在は第二列島線内へ進出し
て、台湾有事の際にはこの海域で米海軍の増援を阻止・妨害することを目指している。
その完成時期は2020年までとしており、そのための空母「遼寧」なのである。即ち沿岸海軍
から「外洋海軍」への変革なのである。米軍を第一列島線内に入れないことを絶対的条件
とし、そのために第二列島線内で米海軍の行動を阻止する作戦を遂行できる中国海軍
の戦力整備計画なのである。
中国海軍建設のタイムスケジュールは(Wikipediaによると)次の通りである。
「躍進前期」 2000~2010年 第一列島線内(近海)の制海権の確保。(2015年に延び
そう。)
「躍進後期」 2010~2020年 第二列島線内の制海権の確保。航空母艦の建造。
「完成期」 2020~2040年 米海軍による太平洋、インド洋の独占的支配の阻止
「覇権国家期」 2040年~ 米海軍と対等又はそれ以上の海軍の建設
2007/5月の中国海軍高官の「太平洋分割管理」の提案は、この海軍発展戦略の「完成
期」の姿を想定した提案なのである。
そして1994年の李鵬の「日本などは20年も経てば地球上から消えてなくなる」との発
言(2012.9.25,NO.51などを参照)は、丁度海軍発展戦略の「躍進後期」の真ん中の時期
に該当する。だから中国は本気でこの第二列島線内の制海権の確保を実行してくる、と
いうよりも既に実行に移しているのである。そのための尖閣諸島の奪取作戦なのである。
アメリカも中国のこの作戦行動に対して、2つの空母打撃群を西太平洋に展開したので
ある。アメリカのこの対応からして、中国の本気度が判るというものである。のほほんとし
ているのは、日本人だけである。どうするつもりか、日本人よ。
米空母、西太平洋に展開 中国軍抑止へ2個部隊
2012.10.3 06:57
米第7艦隊は2日までに、海軍横須賀基地(神奈川県)を拠点とする空母「ジョージ・ワ
シントン」と(米西海岸のシアトルの対岸 ブレマートンを拠点におく)「ジョン・C・ステニス」を中心とし
た2個の空母打撃群(空母部隊)を西太平洋上に展開し、警戒監視に当たっていることを
明らかにした。アジア太平洋地域で遠洋作戦能力の拡張を図り、動きを活発化させている
中国軍の戦略を牽制(けんせい)、抑止する狙いがあるとみられる。
米太平洋艦隊によると、ワシントン空母部隊は9月11日から19日までグアム近海で実施
した統合軍事演習「バリアントシールド2012」に参加。中東に戦力展開するため母港の米
西海岸を出港したステニス空母部隊と西太平洋上で合流し、引き続き警戒監視に当たっ
ているもようだ。
米海軍の西太平洋上での任務は、アジア太平洋地域での抑止力強化を進める米軍の
戦略の一環とみられる。紛争地域などに派遣される空母部隊の数は、脅威のレベルの高
さに応じて増加するとされており、アジア太平洋地域で、2個以上の空母部隊が合同で任
務に当たるケースは珍しい。
海上自衛隊幹部は「米国は尖閣諸島(沖縄県)など同盟国の領有権問題に深く関与しな
いというが、何らかの政治的メッセージが含まれているはずだ」と指摘する。
日本政府による尖閣諸島の国有化をめぐり、中国は公船による領海侵犯に加え、同諸
島北方海域に海軍のフリゲート艦2隻を展開。9月25日には「遼寧」と命名した同国初の
空母を正式に就役させ、内外に大きくアピールしたばかり。
米軍は1996年の台湾総統選の際にも、中国軍が台湾海峡で軍事演習により威嚇した
のに対し、空母「インディペンデンス」と「ニミッツ」の2隻を現地に急派、中国軍を牽制した。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/121003/amr12100306580000-n1.htm
中国はこれらの「海洋領土」の奪取作戦を実行に移すための法整備が1992年の「領海
法」なのである。そしてそのベースとなるものが、1985年頃の「戦略的国境概念」の創出
であり現在はこれらのストーリーに従って中国は行動をしているだけなのである。西沙諸島
や南沙諸島の軍事行動による強行奪取を見れば、このことは明らかである。
(2012.7.18,NO.12~7.20,NO.14、2012.8.6,NO.15~8.8,NO.18辺りを参照のこと。)
そしてそのための行動指針が、昭和47年に世に出た中国共産党「日本開放第二期工
作要綱」なのである。これら、即ち中国の地理的国境を戦略的国境として拡大させること
を実行出来るように日本のすべてをそれに奉仕させるために中国共産党工作員が動くた
めの要綱である。これらの中国共産党の行動様式を中国政府が公式に認めていたと思
われるものが、元中国国防大臣で退役軍人の遅浩田が2005/4に中国共産党中央軍事
委員会拡大会議で講演した「戦争が正に我々に向ってやって来る」なのである。その目
的は「米国打倒・日本殲滅」なのである。
何と恐ろしいことか。ボンクラな日本人はこのことを判っているのであろうか。
(続く)